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2002年7月14日 (日)

アメリカの菜食主義?

 アメリカの時事週刊誌『タイム』が7月15日号(アジア版)で「菜食主義」の特集を組んだので、少し驚いた。アメリカほど肉食が盛んな国はあまりないと考えていたからだが、最近のこの国の傾向はそうでないことを、この記事は教えてくれるいるようだ。題して「我々は菜食主義者になるべきか?」

 記事中には、いろいろと面白い情報が含まれている−−「多くの人にとって肉は不愉快な食べ物である。それは、牛肉消費に関わる添加物や病気のせいというのではなく、次第に多くのアメリカ人−−特に若者たちが、昔だったらその親が衝撃を受けるような行動をとりはじめているからである。つまり、彼らは野菜や穀物、それに植物の新芽を食べているのだ。」同誌が今年4月に行った1万人調査から推計すると、今や「自分は菜食主義を実行している」と考えるアメリカ人は1千万人に及び、かつてそうだったと考える人は2千万人に達しているという。

 菜食主義が流行する理由はいくつもあるが、その一つは「汝、殺すなかれ」の教えの復権である。といっても、アメリカ人が急に信仰的になったのではなく、『ベイブ』とか『Chicken Run』(走れニワトリ!)という動物を主人公とした映画の影響も大きいらしい。記事によると、「菜食主義は、食においても善行する機会を提供することで、良心的な人の内的矛盾を解決してくれる。肉食をやめ、命を救おう、というわけだ」。そして、その“尖兵”は、大人というよりは子供たちらしい。

 今のアメリカのティーンエージャーの四分の一は、菜食主義を「カッコイイ」と感じているそうだ。また、アリゾナ州立大学の心理学教授らが行った調査では、学生たちは「サラダ好きの人」は「ステーキ好き」の人よりも倫理的で、徳が高く、親切な人間だと考えているという。ペンシルバニア大学の教授の話では、「今の子供たちは、菜食が普通に行われ、それが健康上、エコロジー上の理由で公に推奨される文化の中で生きる、最初の世代である」そうだ。また、興味あることに、今日のアメリカ人の子供たちは、親に教えられて菜食になるだけでなく、多くの場合、早い時期に自分の意志でそれを選ぶという。記事によると、「それ(菜食主義の選択)は、しばしば彼らの最初の親への反抗である」らしい。

 さて、私自身は“四つ足”(哺乳動物)の肉を食べないが、魚貝類や乳製品、卵、それに鶏肉までは食べる。だから「菜食主義」とは呼べないだろう。菜食主義にもいろいろな段階があるらしく、厳格なものから順番に挙げると:

  「新芽食主義 sproutarianism」
  「果実食主義 fruitarianism」
  「生食主義 raw foodims」
  「野菜・果実・穀物食主義 veganism」
  「卵・菜食食主義 ovo-vegetarianism」
  「乳製品・菜食主義 lacto-vegetarianism」
  「卵・乳製品菜食食主義 ovo-lacto-vegitarianism」
  「魚貝・鶏肉・準菜食主義 pesco-, pollo-, and semi-vegetarianism」

 という8段階があるらしい。最後の分類が、私の場合に該当する。これだけ種類があると、どれにすべきか迷ってしまうが、『タイム』誌の推薦は、栄養の問題を考えると、乳製品・菜食主義以降が健康の面で比較的“安全”であるという。

 私は以前、“四つ足”の肉を食べない理由の一つは「環境への悪影響を避ける」ためだとどこかに書いたが、それについてこの記事は、コーネル大学の生態学者、デビッド・ピメンテル博士がはじき出した次のような数字を挙げている:「カロリーの面から言うと、アメリカ国内の家畜に与る穀物を人に回せば、8億人が養えるし、これを輸出すれば、年間800億ドルの収入となる」「穀物を食べる家畜や家禽は、その肉1キロ当たり10万リットルの水を消費するが、大豆1キロの生産に必要な水の消費量はわずか2000リットルである」「家畜や家禽を育てて動物性蛋白質を得るのに必要な化石エネルギーは、同じ量の植物性蛋白質を得るのに必要な化石エネルギーの8倍である」。また、「アメリカ国内の家畜や家禽の消費する穀物の量は、アメリカ人全体の穀物消費量の5倍である」そして、きわめつけは「アメリカ国内の家畜と家禽の数は、アメリカの人口の25倍である」。

 ところで、最初に挙げたアメリカの菜食主義者の数の「1千万」とか「2千万」という数字は、その正確さは保証できない。というのは、その数字の元となった1万人調査では、回答者の4%が自分を菜食主義者と見なしたのに対し、そのうちの57%の人は自分のことを「準菜食主義者」と規定したからだ。また、自分を菜食主義と見なした人の36%は、卵・乳製品・菜食主義であると回答した。だから、卵、乳製品、魚貝、鶏肉も食べない純粋な菜食主義者は残りの7%(つまり、人口全体の0.28%)になる。2000年のアメリカ合衆国の国勢調査ではアメリカの人口は2億8142万人だから、純粋な菜食主義者の推定値は「79万人」ほどになる。この程度の数字だったら、私の当初の印象はそれほどズレていなかったことになる。   (谷口 雅宣)

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