「自然の恵みフェスタ 2014」で行われたイベントは、自転車競技だけではない。フェスタの趣旨は「自然の恵みに感謝する」ことだが、自然界では無数の事物が生起するから、感謝すべきことは無数にあるといってよい。しかし、個人個人がそれぞれの考えで自然界の無数の事物から1つを選んで感謝の意を表現するのでは、あまりに煩雑である。そこで、職員がいくつかのグループを作って、グループのメンバーが協力し合って感謝の気持を1つにまとめ、それを“舞台”や“出店”の形で表現するという方式を採った。フェスタには文化祭的な要素があるから、この方式の方が相応しいと考えたのだろう。それが音楽会であり、地元の食材を使った手作り料理、そして自然素材によるフラワーアレンジメントなどのグループである。これに加えて、一種ゲリラ的なグループも登場した。それは「SNIクラフト倶楽部」で、手作り品を趣味とする同好会のようなものだ。「ゲリラ的」と表現したのは、このグループができたのはフェスタの直前だったからだ。突然の出現で、オフィスの職員の中にも、そんなグループが展示をするなど、フェスタ当日まで知らなかった人もいただろう。
本シリーズの最初に、私は人間も自然の一部だと考えれば、人間の中にある「神の創造のエネルギー」も自然の一部と捉えられるとして、音楽会も“自然の恵み”への感謝の表明であると書いた。それと同様に、手作り品の製作や展示も、創造のエネルギーの発露の一つだから、自然の恵みへの感謝の表明と考えることができる。しかし、これだけでは足りない。なぜなら、この考えをどんどん延長していくと、人間の創造物や製作物の中には、自然界にとって有害なものも含まれるからだ。また、「何でもどんどん製造する」ことが無条件で許されると、資源のムダ遣いや、森林や生物多様性の破壊も「自然の恵みへの感謝」だという奇妙な論理に行きついてしまう。そこで、前回の本欄でも紹介した「自然と調和した生き方」の4条件が重要になってくるのである。それを再びここに掲げよう:
①自然調和的な動機や目的により
②自然度の高い場所で
③自然状態に近い(自然度の高い)材料を使い、
④自然破壊的でない方法や手続きを用いた活動をする。
手作り品を製作する場合も、この4条件にできるだけ合致することが望ましいだろう。もっと具体的に言うと、①の条件を満たすためには、製作のために稀少種の動植物を犠牲にすることは許されないし、製作物の大量生産は疑問である。その動機として「自然との調和」ではなく、「利潤の追求」が疑われるからである。また、②の条件を考えると、クラフト製作をオフィスと職員寮周辺でやる場合は問題ないが、製作過程の一部を都会の人や会社に委託するという方法は、疑問である。私は今回、インターネットが発達した現代では、製作を個人が海外に委託することも可能なことを知って驚いた。

次の③の条件は、製作者にとってはなかなか悩ましい。クラフト製品は、人間の手によって加工された製品だから、当然ながら「自然状態」ではない。だから、③では製品そのものではなく、それに使う「材料」の自然度が問題にされているのだ。が、加工に適した素材は、必ずしも自然度が高いとは言えない。例えば、木工製品を作る場合、近所のホームセンターへ行けば、寸法がそろったきれいな板や柱が簡単に手に入る。それは多くの場合、輸入材であったり、国産材でも遠くから運ばれてきたものである。これに対して、できるだけ自然度の高い木材とは、森に生えている木そのものである。これを個人が伐採して製材し、家具製作の材料にすることは現実的ではないし、だいたい素人には無理だ。というわけで、森の生木とホームセンターで売られている材木の“中間”に当たるような自然度の材木はないか、と考えてみる。すると、家を建てたあとに出る「廃材」のことが思い浮かぶのである。
幸いにも、オフィスの職員寮は建築後1年を経ておらず、また冬場の暖をとるための一助として、寮を建てた後の廃材が各所にまだ残っていた。SNIクラフト倶楽部では、そういう廃材を使って椅子や薪用の木箱、鳥の巣箱、コースターなどを製作し、フェスタに出品することができた。その他の木工品では、スマートフォンや経本を卓上に立てるスタンドとか、小型の仏像、大型のものでは薪収容のログラック、そしてブランコも出品された。木工品以外のものでは、ヘンプブレスレット、ネックレス、石鹸デコパージュ、ポーチ、キーホルダー、オーナメント、お手玉セットなどの手工芸品が出品され、どれも買い手がつく人気だった。

私もこのグループに所属し、木材を使ったマグネットを出品した。冷蔵庫の側面などにくっつけて、メモなどを固定するための磁石だ。これを「木工品」と呼ぶことには異論があるかもしれない。なぜなら、磁石自体は木製でないからだ。木工で作るのは、その磁石をカバーして手で持つ部分である。その木の部分に、私は絵柄のデザインを使おうと思った。選んだ絵柄は、昔の切手と自作の絵である。切手は最近の通常切手ではつまらないので、昔の年賀切手を使った。自作の絵は、これまで描いてきたものの中からデジタル媒体によるものに限定した。その方が、用意がしやすく印刷が簡単だからだ。しかし、こういう方法を使うと、木工品でありながら、③の条件に合致する割合はどうしても低くなる。なぜなら、製作過程でパソコンやプリンターを使うからだ。また、プリンター用の“紙”も石油系の材料が混じった特殊なものを利用した。その方が、見栄えと耐用度が増すからだ。さらに、塗装はアクリル系の水性塗料とニスを使った。作業が容易だからだ。
この2種類の木工マグネットに加えて、木の代わりにシカの角を使ったものも製作した。シカは毎年、角が生え替わるので、自然に抜け落ちたものが地元の店で売られていた。それを前に買ってあったのである。それを何に使おうかと思案していたところ、ちょうどよい機会が来たと考えた。角を薄く輪切りにして、整形後に磁石を付け、表面に絵を貼って仕上げた。これら3種類のマグネットを合計77個製作し、全部買ってもらえたので大変満足している。シカ角に加え、古切手と廃材が活用され、私の自己表現もでき、たぶん買い手にも喜んでもらえたと思う。自然への感謝とともに、都会から森の生活へと大転換してくださった人、またそんな私たちを支援してくださった人々への感謝の表現が、こんな形でできるとは思わなかった。
谷口 雅宣