「第1回ノンロック・リレー」が終わる
今日は4月17日から始まった「ノンロック・リレー」最終日なので、予定していた通り最終走者として目的地である生長の家福島・西郷ソーラー発電所まで自転車で約7.6kmを走った。当初の計画では、リレーのバトンである“観音棒”は私一人が携帯し、妻は伴走者になると思っていたが、彼女のアイディアで、コースの前半を妻がバトンをかつぎ、後半を私がかついで目的地入りをすることにした。事前の調査では、このコースは緩やかな上り坂で始点から終点までの獲得標高は192m、平均勾配は2.5%、最大勾配は8.1%だと分かっていたので、緊張せずに走ることができた。私が地元の北杜市でよく上る天女山(標高1529m)の場合、平均勾配は8%、最大勾配は12%あるからだ。走ったあとの機械による計測では、走行距離は7.42km、それに要した時間は33分14秒だった。ただし、この時間は、中間地点でのバトンの受け渡しを含めたものだ。
到着地点付近には、地元・福島の信徒の皆さんを含め、栃木県からも信徒の方々が集まってくださっており、旗を振って迎えてくださったことに感動した。ひと息入れた後、発電所の敷地内で「第1回ノンロック・リレー帰着式」という簡単な行事を行った。私はその行事の最後に概略、以下のようなスピーチをした:
皆さん、今日は生長の家が始まって以来の自転車による広域リレー「ノンロック・リレー」の帰着式に、この場において、またオンラインによって参加くださったこと、心から感謝申し上げます。
私は、このリレーの初日の「出発式」で、ここにある「観音棒」の宗教的意義について少しお話ししました。出発式の日はあいにくの雨で、本来だったら“森の中のオフィス”の敷地内にできた「ムスビの庭」で式を行うことになっていましたが、イベント・ホールを使うことになりました。私はその時、「観世音菩薩を称うる祈り」の一節を引用して、観音さまの重要な働きの1つはムスビであるという話をしました。女子競泳の池江璃花子さんの例を引いて、困難を克服することで人間は魂の飛躍を遂げるという話もしました。
で、今日はそれらの話も受けて、この観音棒の額にある三角形のことを話します。分かりますね。この観音さまの額のところには、大きな三角形が彫られています。そして、私は過去に何回も、「ムスビの働きを形で表せばそれは三角形になる」と申し上げました。私たちは、その三角形を額に刻んだ観音さまをバトンとして、山梨県の大泉町から福島県の西郷村まで何キロですか? ずいぶんの距離をリレーでつないできました。正確に言えば、79人のリレーにより、約691kmの距離を走りました。このイベントの象徴的意味を皆さんには考えほしいのです。
これは多くの信仰者が同じ信仰を受け取り、次に渡しながら「ムスビの働き」を広げていく活動を進めていく、ということです。今、全世界で、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって神社や教会、モスクでの行事やお祭りが制限されていて、生長の家も例外ではありません。しかし、信仰の受け渡し、真理の拡大は、ある方法が制限されたならば、別の方法で遂行することができるのです。それを今回、私たちは実際に証明しました。とても変則的な方法でしたが、現代のテクノロジーは、私たちがインターネットを利用したように、これまでになかった様々な方法を提供してくれていることに、私たちは感謝しましょう。
宗教だけでなく、ビジネスも学校も、今回のピンチに遭遇して、ネットを使ったテクノロジーを利用した様々な方法で、仕事や教育を進めていることは皆さんもご存じの通りです。これは、「ムスビの働き」と言えるのです。ムスビとは「本来同一の基盤をもつ2つのものが、互いに寄り合って、2つとは異なる新しい価値が創造されること」でした。ウイルスと人間は、生命体として同一の基盤をもちます。私たち人間の中には、ウイルス由来の遺伝子がいっぱい存在します。ウイルスは人間を侵して殺すだけでなく、生かし、発展させてもいるのです。ただ、新型のものは人間との相性がうまくいかないものがあり、それが人間に被害を与えるのです。これは、ウイルスに責任があるというよりも、人間の側が急激な生活の変化や自然への大きな介入を仕掛けているためです。しかし、免疫系がその被害を克服すると、人間とウイルスは共存することになります。それも「ムスビの働き」の一つです。
これは遺伝子レベルの話ですが、もっと広いレベルの共存の働きもすでに生じています。最近出版されたアメリカの時事週刊誌『タイム』に興味ある記事が載っています。主題は「Climate is Everything.」といい、副題にこうありますーー「How The Pandemic Can Lead Us To A Better, Greener World」です。翻訳すれば、「この世界規模の感染症拡大は、どのようにして世界をより良い世界、より環境に配慮した世界に導いていけるか」ということです。この副題の中のキーワードは「can」という助動詞です。この語は可能性を表すのですが、未来の必然を表す「will」ではないので、「そうならないかもしれない」ことを言外に表現しています。
で、ここで言われている感染症拡大と環境問題解決への取り組みの関係は、こういうものです。新型コロナの犠牲となって大勢の人々がなくなりました。それを恐れて世界中で、社会経済活動の停止と制限が行われ、今も続いています。この制限の影響をマトモに食ったのは、社会の中で不利な立場にいる人々、貧しい人々、そして貧しい国々です。この大問題を解決するためには、国家や大企業は、これまでのような姑息な手段に訴えても間に合いません。今後の中・長期的展望に立てば、地球環境問題、特に気候変動に対応した政策を中心にすえ、それに必要な技術や製品、サービスをどんどん開発していかねばならない。ということで、いろいろな国や企業が、今や電気自動車、水素エネルギー、洋上風力発電、そしてCO2などを排出しない技術開発に本腰を入れ始めました。これが、パンデミックを克服した後に作られるべき“新しい価値”です。しかしその反面、このような動きに反対する勢力も少なからずあります。アメリカの場合、トランプさんの時代にそういう勢力が国政を担当した。今、バイデンさんに替わって急速に方向転換をしています。しかし、現状維持を望む人たちも半数いる。
日本では、アメリカのマネをするのが得意な自民党政権ですから、今、急に、「カーボン・ニュートラル」などと言い始めた。生長の家が10年以上前から言っていることを、「今更なにを」と申し上げたい。遅すぎるし、やり方が小さいです。私たちはもう、その段階は通り越して、実際のライフスタイルの転換へと舵を切っていることは、皆さんもご承知の通りです。このノンロック・リレーをやった「プロジェクト型組織」が今、それをやっています。
宗教における伝道は、真理を他の人にどんどんリレーしていくことです。これは「ムスビの働き」であり、新しい価値の創造です。どうか皆さん、今回のリレーを、実生活における“真理の伝達”の分野に拡大して、「神・自然・人間は本来一体」の真理を多くの人々に伝え、“自然と共に伸びる”という新しい価値の実現に邁進していきましょう。
それではこれで、私の話を終わります。ご清聴、ありがとうございました。
谷口 雅宣