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2018年9月

2018年9月 9日 (日)

北海道大地震で考える

 「震度7」という最大規模の地震が北海道の中心部を襲った。震源地は胆振(いぶり)地方で、マグニチュードは6.7。揺れの強さを示す震度は厚真町で7、むかわ町と安平町が震度6強、200万都市の札幌も震度5強という揺れで、多くの被害が出ている。亡くなられた方々、被災者の方々には心からお悔やみと、お見舞いを申し上げます。 
 
 妻と私は、9月9日に札幌と小樽の両教区での生長の家講習会を予定していたが、被災地の人々の様子や希望、会場の状況などを考えたすえ、この行事を中止することにした。この日まで、講習会の推進活動や伝道に熱心に取り組んできてくださった両教区の幹部・信徒の皆さまには、誠に残念な決定かもしれない。しかし今は、無理を強いて行事を開くよりは、地域の人たちとの一致協力のもと、被災者の救済と救援、破壊された住宅や施設、インフラの復興に全力を尽くすべきと考えた。 
 
 「震度7」の大地震は、最近では阪神淡路大震災(1995年)、新潟県中越地震(2004年)、東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)だから、頻度が増していると言わねばならない。また、9月7日付の『日本経済新聞』は、政府の地震調査委員会が、今回の地震は国内の地震で広く見られる「逆断層型」だと結論したことを報じている。そのような地震も、予知がまったくできなかったことを考えると、私たちは国内のどこにいても、大地震に突然遭遇する可能性があることを忘れてはいけないだろう。私が住む山梨県北杜市でも、すぐ近くに釜無川断層帯が走っている。だから、大きな自然災害が起こるたびに、私はとても他人事ではないとの感を強くするのである。 
 
 しかし今回の大地震は、その前に続いた自然災害と考え合わせると、私にとってとりわけ“自然界の大転換”を実感させる出来事である。ご存じのように、9月4日には台風21号が猛スピードで西日本を縦断した。その際、関西国際空港は水に浸かり、強風で錨が役に立たなかったタンカーが連絡橋に激突、橋が半壊したため、数千人が一時、空港島に取り残されたばかり。空港の機能がまだ正常に回復していない矢先に、この大地震が発生したのである。それに、6月末から7月の初めにかけては、台風7号と梅雨前線が「西日本豪雨」をもたらして、各地で大規模な河川の氾濫や浸水、土砂崩れが発生して200人以上の犠牲者が出たばかりなのだ。 
 
 上掲の『日経』には、連続する自然災害への対応を続けている政府機関は「短い期間に連続して起きる複合災害に、限られた人員で立ち向かう」ことの難しさが書かれている。例えば、災害派遣が続く自衛隊の場合は、こうある-- 
 
「北海道地震で人命救助や給水などに従事する自衛隊は6日午後に約4,900人で、7日に2万4千人、9日に2万5千人まで増やす。 
 自衛隊は今年に入り2月の北陸地方の記録的な大雪、4月の大分県の山崩れ、6月の大阪北部地震と相次ぎ災害派遣にあたった。7月の西日本豪雨では最大3万3千人の態勢を組み、8月18日に派遣を終えたばかりだ。」 
 
 ご存じの方もいられるだろうが、このような大規模な自然災害や異常気象の連続は、日本だけで起こっているのではない。世界各地で今、一斉に起こっているのだ。だから、この事実が何を示しているかを、私たちは正しく学び、個人のレベルに留まらず、地域社会や国家、地球全体のレベルに於いても、今後の人類の生き方や文明のあり方を再検討し、変えるべきものは変えていかねばならない、と私は思う。 
 
 アメリカのカリフォルニア州は今夏、同州の歴史上かつてない山火事に見舞われた。『ニューヨークタイムズ』によると、8月7日現在の数字でいえば、17箇所の60万エーカーの山林が焼け、1万3千人の消防士が出動し、2,300人の州兵が消火活動に動員された。同州だけでは消防士の数は足りずに、東部のメイン、ニュージャージー、ミシガン、南ダコダなど、同州外の17州から装備や人員が補充されただけでなく、陸軍からは1歩兵大隊が動員された。さらにオーストラリアやニュージランドなどの外国からも“援軍”が派遣された。この8月初めの時点での焼失面積は454平方マイルで昨年の3倍に近い。何万人もが、住む場所を失って焼け出された。北カリフォルニアの有名なヨセミテ国立公園やサクラメント渓谷なども観光不能となり、多くのワイナリーが大損害を被った。 
 
 同紙はこの熱波の原因について、「科学者たちは、カリフォルニア上空の大気の成分を変化させ、山火事を極端に危険な状態にした中心的な原因は、気候変動だという」と明確に述べている。同州では旱魃と熱波が拡大しているため、山火事が起こる時期が早まり、終るのが長引いているのだ。 
 
 イギリスの科学誌『New Scientist』が7月14日号で伝えたヨーロッパと中東の状況は、こんなだ--「スコットランドは6月28日に33.2℃となり、2003年8月に達成した32.9℃という過去の記録が破られた。中東のオマーンでは、6月26日に42.6℃という最高気温に達し、この高温が夜まで続いた」という。南半球も例外ではない。同誌が伝える最大の異常高温は「南極」の気温だ。北半球の“夏”は南極の“冬”だが、南極では平年より暖かい日が続いているという。ここで同誌が言いたいのは、南半球は北半球に比べて陸地面積がずっと少ないのに、それでも大気の温度が上昇していることの理由である。陸地は温まりやすく、海は温まりにくい。地球のあらゆる地点では、それぞれの地域的特徴から気温のばらつきがあることは当然だ。しかし、地球上のいずれの地域でも共通して気温上昇が見られることの原因は、地球温暖化以外には考えられないということである。 
 
 同じ『New Scientist』誌は、8月4日号では「深部からの混乱」という表題で4ページの特集記事を載せ、「我々は大西洋の攪拌機を混乱させてしまい、このままだと将来の気象はさらに極端になる」と伝えている。この“攪拌機”とは、通称「大西洋ベルトコンベイヤー」と呼ばれるもので、正式には「Atlantic Meridional Overturning Circulation (大西洋での南北方向の撹拌循環、AMOC)」という地球を南北方向に走る巨大な海流システムのことだ。 
 

Oceancurrentsj_20180908  図の中で大西洋に描かれた赤い曲線は、北方向に海洋の浅い部分を流れる海流を示す。ラブラドル海盆(L)と北極圏内のノルウェー海(N)にあるオレンジ色の楕円は、海面近くを進む海流が冷却されて密度が濃くなったことを示している。こうなると海水は大西洋の海底方向へ沈んでいく。この過程は「水塊の変化」とか「深海の形成(deep water formation)」などと呼ばれていて、この時、海水の熱は大気中へ発散される。このオレンジ色の楕円と接する水色の曲線は、南方向への海流を示す。つまり、大西洋では、暖かい水は海の比較的浅い部分を北上して北極近くまで行き、そこで冷やされて深海へ潜り、今度は海の深部を南方向に流れて南極付近まで行くのである。この巨大な海流を「AMOC」と呼ぶ。そして、AMOCは、大西洋の南端までいくと、南極の周囲を巡る円環状の海流(ACC)に連結する。 
 
 地球温暖化が進むと、北極の氷やグリーンランドの氷床が溶け出すため、海水の塩分が薄まることでAMOCが深海へ進む速度が減少する。巨大海流の一端の流れが遅くなれば、全体の流れが緩慢になると考えられている。ここで注目されるのは、AMOCの一部であるメキシコ湾流の動向である。この海流は赤道近くの温暖な海水をヨーロッパの西側まで運ぶことで、アメリカ東海岸やヨーロッパの諸都市を緯度の割には暖かにしている。北海道の北端にある稚内市は「北緯45度」付近にあるが、イタリアのミラノ、フランスのパリやリヨン、ドイツのボン、ハンブルク、イギリスのロンドン、スコットランドなどは皆、それより北に位置していることを思えば、メキシコ湾流の影響は大きいことが分かるだろう。 
 
 北極付近でのAMOCの停滞が世界各地にどんな影響をもたらすかは、複雑で予測が難しい。上述した『New Scientist』の記事は、こう書いている--「アメリカ東海岸に沿って極端に速く海面上昇がもたらされる。ある推定では、ニューヨーク市の海岸では、2100年までに15~21センチの海面上昇があると予測する。そうなった場合、ハリケーンなどの嵐が来たときには洪水の規模が拡大するだろう」。これに対して、温暖なメキシコ湾流の北上速度が弱まれば、ヨーロッパの温暖化の程度も緩和されるという議論もあるらしい。 
 
 しかし、大量の氷の融解によって、太陽からの熱を地球が吸収する量は増えているのだから、吸収された熱はヨーロッパに向かわなくとも、地球のどこかへ向かうことになる。だから、温暖化の問題は解決しない。また、ヨーロッパが涼しくなっても、それは地上の水の蒸発を弱めることになるから、雲が形成されにくくなり、乾燥が進んで農作物の生育に悪影響を与えるかもしれない。また、冬季には嵐が激化し、洪水が増えるという予測もあり、実際にそのような傾向が観察されている。さらに、海水温の変化や海流の変化は、漁業に影響を与えることは明白だ。 
 
 この「AMOCの減衰」の可能性については、イギリスの科学誌『ネイチャー』も今年4月12日付で、これについての2編の研究論文を掲載し、その重要性について、「AMOCの減衰によって北半球全体で気候パターンと降水パターンがかなり変わってしまう可能性があるからである」と述べている。 
 
 これらの科学者の分析と、最近の異常気象の頻発を目撃して、私はこう考えるのである--人類は際限なくエネルギーや資源の消費を続けてきたために、地球の大気の構成が激変しつつあり、それに伴い温暖化、海水の成分の変化、海水温の上昇、AMOCを含む地球規模の海流システムの変化、生物界の変化が大規模に進行している。だから、これからの広域にわたる気象は、従来のデータを基にして想定する気象予報が、ほとんど役に立たなくなる可能性を排除すべきではない。これを言い直すと、「従来は“想定外”だった気象現象も、今後は想定しなければならない」ということだ。 
 
 これはもちろん、「過去の経験は参考にならないから、将来に向かって勝手放題をすればいい」ということではない。私たち人類は“地球生命の一部”だから、地球環境を破壊することは自己破壊であるとの認識を明確にもち、環境破壊をやめ、環境と共生することに幸福を見出す生き方の創造と実践を、従来の習慣に引きずられることなく、強固な決意のもとに進めていく以外に選択肢はないのである。 
 
谷口 雅宣

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