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2016年6月 9日 (木)

『日本会議の研究』について (2)

 表題の著書を本欄で私が推薦した理由は、もう一つある。それは、7月の参院選に臨んで、現在の安倍晋三首相が率いる強権政治の裏に、何が隠されているかを読者に知ってほしいからだ。もっと端的に言えば、私の伝えたいメッセージは「今回の参院選では、与党に投票しないでほしい」ということである。その理由は、すでに生長の家の公式サイトに掲載された声明文にやや詳しく書かれているから、読者はそれを読んでほしい。 
 
 が、ここでごく簡単に言えば、これまでの安倍晋三氏の言動から判断すると、彼は私たちの運命を左右する絶大な権力を委託されている一国の長として、信用できないからだ。さらに、表題の書が警鐘を鳴らすように、安倍氏の言動の淵源が日本会議を牛耳る元生長の家の政治運動家の思想にあるとしたならば、安倍氏の個人的資質に加えて、彼の政治基盤そのものが信用できないからだ。 
 
 私は、安倍晋三氏個人に対して恨みや敵対心などもっていない。だから、彼が日本国の首相ではなく、大臣でもなく、何の役職もない自民党の一政治家であったり、政治評論家であったり、ジャーナリストである場合には、このような文章を公表することはなかっただろう。しかし、現在の安倍氏は、日本国最大の権力者として、国会における単独過半数の議席の勢いを得て、あってはならない憲法の“解釈改憲”を実際に行い、政治の監視役であるジャーナリズムに圧力を加え、日本の将来を担う青少年の価値観を左右する教科書の選定に介入してきた。このような言動の原因が、冷戦時代に生長の家が掲げた政治思想に頑なにしがみつく元幹部の“功績”にあるとしたならば、私は現在の生長の家の責任者として、「その道は、宗教的にも政治的にも間違っている」と声を大にして訴える責任を感じるのである。 
 
 日本は自由主義、民主主義の政体を選んで1世紀以上たち、その間には多少の紆余曲折はあったにせよ、これらの価値観と理想から退くのではなく、その実現に向かって前進する方向に歩み続け、今日にいたっている。この現代史の歩みの中では、わが国のみならず、世界中の多くの人々が、政治権力による弾圧や拷問、自由の剥奪、民族浄化、そして戦争などの犠牲になって死んでいった。また、自由主義・民主主義を採用していない一部の国家や地域では、現在も政治権力による弾圧や拷問、自由の剥奪、民族浄化などが行われている。人類全体が、多大な犠牲を払い、痛恨の念とともに歩んできたこの歴史の道程を軽視し、表面は美辞麗句を並べて国民を欺きながら、本心では自分たちの都合に合わせて歴史逆転を図る種類の人物がもし存在し、その人物が今の政権中枢に存在するというならば、私はこれまでの“政治への寡黙”を排して、言うべきことは言おうと思う。 
 
 読者に改めて問いかけよう。安倍首相とその側近の人々は、まず「誠実」であるだろうか? 政治家が「誠実」と言われるためには、言行一致が必要である。民主主義の制度下では、政治は議会(国会)を通じて行われる。議会は、様々な考えの人々が国民の代表として集まり、「言葉」を使って議論を戦わせる。だから、政治家の誠実さの指標としては、まず彼らの口から出る言葉が、事実を述べ、隠し立てがなく、論理的に整合しているかを見る必要がある。 
 
 この点について、6月3日の『朝日新聞』の投書欄から引用する-- 
 
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 「新しい判断」? 言葉軽すぎる 
 
 安倍晋三首相は、消費増税の再延期を発表しました。延期の是非は別として、“新しい判断”を理由に以前の約束をほごにすることなど、子どもでもしないでしょう。一国の首相の言葉がこんなに軽くていいのでしょうか。 
 ここ数年、安倍首相の言葉を聞くたびに不信感が募ります。 
  例えば、2013年の五輪招致のプレゼンテーションでは、福島第一原発の汚染水について「アンダー・コントロール」と言い切りました。しかし、コントロールにはほど遠い現状です。 
  14年11月には、消費増税について「再び延期することはないと断言する。確実に引き上げていく」と述べていました。 
 一方、安倍首相は昨年の国会で、テロ対策に関連して「国民の命、安全を守ることは政府の責任であり、その最高責任者は私だ」と語りました。私は自分の命と安全を預けることはできません。 
  間もなく参院選。私たちは、政治家の言葉に、より一層、耳を傾けます。首相の言葉の空しさを反面教師として、真実が語られているのか、ごまかされていないか、国民のための言葉なのかを聞き分けていきたいと思います。 
                     主婦 清水芳枝 (神奈川県、65) 
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 世の中には、「政治家は必ずしも誠実でなくていい」という考えの人も少なくないことを、私は知っている。現在の中国や北朝鮮には、誠実でない政治家はいくらでもいるだろう。また、戦前の日本にもそんな政治家は沢山いたであろう。しかし、民主主義という政治の仕組みを真面目に考えるならば、政治家の基本的資質として「誠実さ」が求められることは、当然である。逆に言えば、国民の代表として選挙で選ばれた政治家がウソつきであった場合、彼または彼女はどうやって「民主」を実現するのだろうか? もちろん、選挙前の公約が、選挙後に守られないことは珍しくない。しかしそれは、政治家が初めからやる気がないことを公約したというよりは、実行困難なことを知りながらも、自分の政治家としての目標や、実現したい政策を述べたと考えるべきだろう。だから、選挙で議員となった政治家は、選挙前の公約と逆方向の政策を自ら推進することはできないはずだ。(もちろん、例外的な人もいるが、その人は「政治家」の名に値しない。) 
 
 しかし、安倍首相には、そういう民主主義下の政治家としてのあるべき資質が、欠けているように見受けられる。自らの権力維持と政策実現のためには、国家の財政破綻や社会保障費の不足はやむを得ないと考えているフシがある。消費増税の延期をいとも簡単に、しかも薄弱な根拠のもとに宣言してしまった。10%への消費増税は、政党間の正式合意であり、法律にも定められた政策である。これを、「リーマンショック並の経済危機が来ないかぎり実施する」と言っていたかと思うと、G7の首脳会議で賛同を得たという口実を使って「リーマンショック並の経済危機が来ないように延期する」と、あっさり掌を返してしまったのである。この2つの言葉をよく読み比べてほしい。後者では、「前者の条件にならないように増税しない」と言っているのだから、今現在は、日本経済は前者の条件が満たされていないことを自ら認めているのである。これが安倍首相の言う“新しい判断”であるから、その内実はウソでなければ、いったい何をウソと言うべきだろうか? 
 
 このように簡単に国民を欺く人物が、わが国の首相であることを私は容認することができない。この人物が、日本の陸・海・空の自衛隊の最高司令官であることを思い起こすとき、戦前・戦中の軍部の独走の結果が脳裏をよぎり、日本国の将来――いや、今現在の日本の外交・防衛政策の危機が来ていると考えざるをえないのである。 
 
 谷口 雅宣

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コメント

合掌

 谷口雅宣先生及び教団幹部が、今回、与党及びその候補者を支持しない旨を機関決定し、公表されたことを、私は心から歓迎し、強く支持させていただきます。
 先日、私は生長の家の大阪教区講習会に参加し、初めて雅宣先生をまじかに見て、握手させていただく機会に恵まれました。そこで雅宣先生が『日本会議の研究』を紹介されたことには驚きましたが、安倍政権の立場は本来の保守思想ではなく、谷口雅春先生の立場とは真逆であること、谷口雅宣先生こそが雅春先生の正統な後継者であること、を訴えてきた私としましては、私の主張が少なくとも大筋では誤りではなかったことが分かり、とてもうれしく思いました。雅宣先生のユーモアも交えたわかりやすい解説を聞いて、笑っておられた多くの信徒の皆様も同じ気持ちであると思います。

 谷口雅春先生は、憲法問題をあくまで「日本国実相顕現」の手段としてとらえておられました。そして、谷口雅宣先生が『神を演じる前に』や『今こそ自然から学ぼう』で繰り返し触れておられる地球環境問題や生命倫理問題こそが、今の日本では、「日本国実相顕現」という目標の実現のためにも重要であること、言うまでもありません。
 なぜならば、雅春先生は『大日本神国観』において、大自然への感謝の言葉を天皇陛下への感謝よりも先にもってきており、確かに雅春先生の生きておられた当時は憲法問題が重要な課題であったでしょうが、地球環境を破壊しておいて日本国の実相顕現などありえないこと、雅春先生の御文章からも明らかだからです。
 生命倫理問題に至っては、雅春先生のライフワークでもありました。そもそも、生政連が結成された最大の理由は、憲法問題ではなく、生命倫理問題であったはずです。その点を、分派の人間は誤解されていると思います。
 現在、安倍政権は人間と動物の境界をあいまいにする動物性集合胚の作製を容認し、また、子宮頸がん予防接種を定期接種として多くの若い女性が副反応に苦しんでいる結果を招きました。こうした問題については、例えば動物性集合胚については、雅宣先生が『神を演じる人々』で描いた世界がそのまま表れてきているように感じます。

 ネット上では、国際平和信仰運動と日本国実相顕現は両立しない、といった文章であふれています。彼らは「平和運動=共産主義運動」であると、いまだに私が生まれる前の、冷戦の頃の立場に立っておられるそうですが、現在の日本では、生長の家に限らず、立正佼成会をはじめ、多くの保守系宗教団体が、安倍政権への懸念を表明しています。また、欧米では「保守」の代表格であるカトリック教会が、環境問題に取り組み、国際平和を求めた活動をされるようになっています。
 今回の生長の家の決定も、こうした世界の潮流を踏まえたものであると思います。

 私は、今は大学生ですが、高校時代に雅宣先生の『観世音菩薩賛歌』を読んで救われたものです。
 今回の生長の家の決定が、人類光明化運動・国際平和信仰運動・自然とともに伸びる運動の、新局面を切り拓くものであることを、私は確信しております。

 ありがとうございます。

投稿: 日野智貴 | 2016年6月10日 (金) 04時20分

 先生、有り難うございます。生長の家の安倍政権への立ち位置をはっきりさせて下さって本当に有り難い限りです。
 私は今まで先生は何故余りに安倍政権を批判されないのだろう?と不思議に思っておりました。特定秘密保護法、安保法案、原発再稼働及び積極的海外セールス。東京オリンピックのアンダーコントロール発言等々
 
 これ以上ないひどい状況だと思いました。でもあんまり批判されない。おかしいなと正直思っていました。

 でも今回、はっきりと批判して頂き有り難く存じます。それもこれも「日本会議の研究」ですよね。本当にびっくりしました。その内容に。要するに生長の家の中心帰一が出来なかった原理主義者達に安倍政権が操られていたという事ですね。これが驚愕でなくて何でありましょう。

 私は迷いは必ず自壊すると思っております。

投稿: 堀 浩二 | 2016年6月10日 (金) 10時23分

至極まともなご意見に感服いたしました。

投稿: 坂本 哲 | 2016年6月10日 (金) 12時52分

「安倍政権に反対」の声明を出していただき、誠に感謝しております。
 私の立場は、母が古くからの(雅春先生時代)信者で、私は母の「部落なんていうのは左翼がでっちあげたデタラメで存在しない」という発言から疑念を抱き、教団を離れた者です。
 また、自身は幼少より性別違和を抱いておりましたが、母の「女性はこうあるべき」論が大変苦痛でもありました。
 悲しい事に、母は、未だに安倍政権支持、原発推進論者です。
 今の生長の家を離れていなくても、古い信者の方々には、このような方が少なからずいると思いますが、現在の「生長の家」の立場をはっきりと宣言していただいたおかげで、そういう方々にも、影響力は大きいと思います。
 本当にありがとうございました。

投稿: 齋藤惠一 | 2016年6月10日 (金) 19時15分

この度の「生長の家」の英断に感激しました。
声明で主張されていることは至極まともで理路整然としていますね。宗教人としてのプライドはこうあるべきだと教えられました。私は栃木県宇都宮市在住の創価学会(壮年部)に所属しています。といっても宗教活動や政治活動は嫌いで、誘われても参加しない非力な、純粋に信仰を求めたいとの願いで入信した一会員に過ぎません。選挙のたびに公明党への投票を半ば強要する学会同士には辟易しています。「日本会議」に関しては以前から関心があり、生長の家本体が主導しているのだと、誤った情報を信じていましたが、そうではなかったとの真実を知り、大変嬉しく思いメールを差し上げるご無礼をお許し下さい。今後のご発展ご活躍を願っております。
貴教団の教えと実践を興味をもって見詰めていきたいと思います。(66歳、男)

投稿: 匿名希望 | 2016年6月11日 (土) 11時49分

総裁先生、今の政権に対する明確なご教示をありがとうございます。私は1~2年前から強烈に、安倍政権への不信感を感じています。国民の意思とは関係なく、数の力にものを言わせて全てが押しきられていくように感じています。言動もめちゃくちゃで、全く納得できません。それでも世論調査を見ると安倍政権の支持率が大して下がらないのが不思議でなりません。「日本人よ、これでいいのか?」と強く思います。

でも、この政権が誕生したのは私達国民が選んでしまったからなんですよね。

日本会議の中に元生長の家の幹部や信者がいることは、大変ショックでしたが、これから行われる参院選を始め、私達一人一人が真剣に日本のことを考え、政治家を選んでいくことがまず第一歩だと思っています。

ただ、安倍政権にはもちろん投票する気はないのですが、他にどこに投票したらよいのかわからないのです。シールズに肩入れし、また、共産党と協力している民進党しかないのかな?と思うと躊躇してしまいます。

先生のご教示を賜りたく存じます。

投稿: 川合 祐子 | 2016年6月25日 (土) 08時12分

川合さん、

 参院選はすでに公示されています。ここで私が特定政党を名指しで推薦すると、公職選挙法に触れる可能性があります。今回は、「この政党がいい」ではなく、「この政策が悪い」という点で、貴方の熟慮によって投票してください。

投稿: 谷口「 | 2016年6月25日 (土) 10時51分

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