「青々舎通信」 (1)
「青々舎」とは、今から22年前の1993年、冷夏の影響で深刻なコメ不足が起こった時、個人輸入のルートを使って海外産米の入手を手助けした“団体”の名称である。団体とは書いたが、私一人が「代表」という立場で、輸入希望者の注文を海外の輸出業者に取り次いだだけで、団体のメンバーが何人もいたわけではない。そんな“団体”の名前が今、なぜ登場したかというと、今年の2月ごろから、私がクラフト(手工芸品)を製作した際に、完成品に付けるブランド名としてこの名称を採用したからだ。
「青々」は「あおあお」ではなく、「せいせい」と読む。日本語の「青」は通常は「ブルー」を意味するが、古典的には「緑」--とりわけ「草の葉の緑」を意味していて、私が現在居を構える北杜市大泉町の環境を象徴する色と考え、使うことにした。
生長の家の“森の中のオフィス”には、「こもれび」という名前の小さな売店がある。主として生長の家の書籍類、CDなどを販売するが、職員の有志が製作したクラフトも置いてあり、継続的に買われている。職員の間の需要もあり、またオフィスの見学者が来場して買ってくださる。私も時々ここに手製のマグネットなどを出品している。私がなぜクラフト製作などをしているかという理由については、昨年11月9日や、今年1月22日の本欄にすでに書いたので、詳しいことは省略する。が、簡単に言えば、手を使う“もの作り”は人間のごく自然な営みであり、これによって人間は太古から自然を感じ、自然の中から道具を作り、それを使って厳しい自然環境で生き抜き、かつ自己表現をしてきたからである。
私が作るものがマグネットである理由は、定かでない。たぶん「手軽だから」という要素が大きい。また、表現の幅が案外ある。私は普段、講演旅行をしたり、原稿を書いたり、会議をしたりで、時間的余裕は少ないから、ちょっと空いた時間を使って作れるものの種類は、自ずから限定される。掌に載る大きさのもので、工程も道具もそれほど複雑でなく、比較的短時間にできる……となると、マグネットは適当なのだろう。昨年秋にオフィスで初めて行われた「自然の恵みフェスタ」に出品して以来、月1回くらいのペースで出品している。
最近、テントウムシをあしらった円形のマグネットを製作した。(=写真)なぜテントウムシか? テントウムシは、バラなどにつくアブラムシを食べてくれる“益虫”である。また私は、あの赤地に黒の斑点が7つついたナナホシテントウのデザインが好きである。色の組み合わせだけでなく、斑点の数が7つと少ないのがいい。ニジュウヤホシテントウという、斑点が28個もある黄色いテントウムシもいるが、デザインが煩雑すぎて親しみがあまり湧かない。ずいぶん勝手な言い草かもしれないが、好みは理屈ではなかなか説明できない。
テントウムシは、英語では「ladybird」とか「ladybug」などというエレガントな呼ばれ方をする。その場合、大抵は赤地に黒の斑点がついたナナホシテントウのことを指す。こっちの方が「かわいらしいから」だ、と私は勝手に解釈している。そんなこんなで、私はワイシャツを誂える際には、腕に付けるイニシャルのデザインとしてテントウムシを使うことにしている。その場合、テントウムシのデザインには七星の赤地に黒のものしか用意されていない。ワイシャツメーカーのデザイナーも、私と同じ感覚であるに違いない。
こう考えるのは、人間の悪いクセかもしれない。人間は、自然界のおびただしい数の生物の中から、自分勝手の好みや嗜好にもとづき、ごく少数の種類を選んで偏愛するのである。これははたして“自然な”感覚なのか、それとも“人工の”感覚なのか……。
谷口 雅宣
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コメント
合掌、ありがとうございます。
青々舎、懐かしいですね!総裁ご夫妻からのメンバーに向けてのファックスは、大切にとっております。22年経つのですね。ファックスのインクが、薄れるはずです。その名が、復活したのを知り、うれしやら、なつかしいやら!いつの日か、実際、森の中のオフィスで、クラフトを見させて頂きたいと願っております。 再拝。
投稿: 小森 絹子 | 2015年9月19日 (土) 09時56分