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2014年8月 3日 (日)

なぜ肉食から遠ざかるべきか? (2)

Compbrus  ところで、この教修会にはアメリカ合衆国からも多くの人が来ているので、参考のために私が調べたアメリカの数字を並べてみます。2008年に『ベジタリアン・タイムズ』が行った調査によると、アメリカには730万人のベジタリアンがおり、その他の2,280万人が、菜食主体の食事を摂っているといいます。この数字を人口比で表すと、ベジタリアンは全人口の3.2%、菜食主体派は10%です。ここでいうベジタリアンとは、肉、魚、鶏を食べない人でいわゆるビーガンも含みます。ということは、アメリカのベジタリアンは、人口比ではブラジルの8%に劣りますが、菜食主体派をベジタリアンの“予備軍”と考えると、約1割という相当の割合のアメリカ人が、肉食の弊害に気づき、食生活の改善に努力していることが分かります。また、アメリカには『ベジタリアン・タイムズ』の数字以外にも、非営利組織「ベジタリアン・リソース・グループ」がまとめた2012年の数字があり、これによると、ベジタリアンの人口比は「4%」です。2008年の数字より増えているのです。つまり、アメリカでも、ベジタリアンの数は増えつつあると考えることができます。
 
 このように、ブラジルやアメリカの人々は食生活を菜食重視の方向に切り替えることによって世界平和に貢献することができますが、伝統的に多くの人々が菜食を当たり前に行っている台湾は、これまでに蓄積された数多くの種類の素食を世界に広めることによって、別の面から世界平和に貢献できるでしょう。私は、1995年に台湾を訪れた時、初めて素食というものを知りました。それがノーミートであるにもかかわらず、驚くほど種類があり、また美味しいことに感動しました。日本の伝統料理である和食にも、精進料理と呼ばれるものを初めとしたノーミートの料理は数多くありますが、台湾の素食は、それらとは違い、中国料理の伝統を継いだボリュームのあるものです。これらに加え、日本から南北アメリカに渡ったマクロビオテックと呼ばれるノーミート料理も、今では世界的に人気を呼びつつあります。それらが美味であるということは、「禁欲生活は無味乾燥だ」という一般常識を覆すものです。そうです、私たち生長の家は禁欲生活に切り替えようという運動をしているのではありません。
 
 このことは、今回の教修会のテキストである『大自然讃歌』の中に書かれている通りです。この讃歌の終わりに近いところに、人間に欲望が備わっていることの意義が説かれています。この本をお持ちの方は、該当箇所を開けてください。日本語版では40ページになります。
 欲望は
 肉体維持発展のための動力にして、
 生物共通の"炎"なり、
 "生命の炎"なり。
 これなくして生物
 地上にて生活すること能わず。
 これなくして
 人間も肉体の維持・発達為すこと能わず。
 
 ここには、人間が現象生活を送るためには欲望は必要だと書かれています。ですから、生長の家は禁欲主義ではないのです。しかし、欲望至上主義でもありません。そのことが、次に説かれています--
 
 されど汝ら、
 人間の真の目的は肉体の維持・発達に非ず、
 地上に神の栄光現すことなり。
 肉体は神性表現の道具に過ぎず、
 欲望もまた神性表現の目的にかなう限り、
 神の栄光支える"生命の炎"なり。
 
 ここに書いてあることは、欲望は肉体に奉仕するものだから、肉体を「神性表現」という正しい目的に使うならば、欲望も「神の栄光支える"生命の炎"」として評価されるということです。別の表現を使えば、本来、私たちに備わっている「神性」を地上に表現するために欲望を利用することは正しい、ということです。逆に言えば、私たちの「神性」が表現できないような欲望の使い方は間違っている、ということです。食欲も欲望の1つです。ということは、人間の神性がくらまされるような食欲の使い方--食材の選び方や食事の仕方--は、間違っているということです。ここに、私たちが肉食から遠ざかろうとしている信仰上の理由があります。
 
 肉食はまず、心をもった動物たちの生きる意思をふみにじり、過酷な奴隷生活を強いる残虐な行為です。また肉食は、地球資源の浪費であり、その結果、貧しい国の人々から食糧を奪うことになります。さらに肉食は、環境汚染や森林破壊、水不足を助長することにより、人類のみならず、すべての生物の生活に悪影響を及ぼします。そして肉食は、地球温暖化を加速させることで極端な気象現象を頻発させ、旱魃、洪水、海面上昇を激化し、大量の環境難民を生み出し、領土問題を深刻化させます。近年になって頻発している異常気象については、皆さんはもうよくご存じです。
 皆さん、地球環境や人類の生活がこのような方向に進むことは、「神の栄光が現れる」ことなのでしょうか? それとも、「神の栄光がくらまされる」ことなのでしょうか? 答えは、火を見るより明らかです。人類の肉食が増えることによって、神の栄光はくらまされるのです。それは即ち、人間の神性がくらまされることを意味します。難民が増え、社会不安が拡大し、暴力やテロリズムに訴える人の数が増えるからです。ですから、そういう方向に私たちの欲望を使うことは間違いなのです。
 
 では、私たちの食欲をどのような方向に使えばいいのでしょうか? これについても、『大自然讃歌』は答えを与えています。日本語の43ページへ飛びます。
 
 されば汝らよ、
 欲望の正しき制御を忘るべからず。
 欲望を
 神性表現の目的に従属させよ。
 欲望を自己の本心と錯覚すべからず。
 
 世界中で観察される統計的な事実として、こういうことがあります。人間は経済的に豊かになるにつれて、穀物や野菜食から肉食へと切り替える傾向がある。この事実は、昨日のウインクラーさんの発表の中でも取り上げられました。ブラジルでは、2001年からの10年間で、鶏肉を含む肉の消費量が1.5倍になっています。しかし、これは私たち人間の"本心"や"本質"を表しているのでしょうか? それとも、欲望の膨張を表しているのでしょうか? この疑問への正しい答えは、私は後者だと思います。もし人間が本質的に肉食を好む生物であるならば、経済が豊かになるに伴って、ブラジルやアメリカなどの自由な国々でベジタリアンの数が増えていることの説明ができません。特に、両国とも、経済的に余裕のある人々がベジタリアンに転換するケースが多く、また、そういう人々が多く住む地域でベジタリアンが増えているのです。しかし、その反面、中国などの発展途上国では、肉の消費が確実に増えています。これは「欲望を自己の本心と錯覚」しているからではないでしょうか。人間は一度そういう欲望満足の段階を通過した後に、自己の神性に目覚め、「これではいけない!」と菜食重視の方向へと食生活を転換するのではないでしょうか。
 谷口 雅宣

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