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2013年12月 6日 (金)

運転免許証を更新する

 休日の木曜日に、自動車運転免許証の更新手続きをした。
 私たちが、東京から山梨県北杜市の八ヶ岳南麓に引っ越したのは9月の終わりだが、運転免許証の住所が東京のままだったので、何となく中途半端な気持が続いていた。「片足を東京に突っ込んだまま……」と言ったらいいだろうか、“森の中”へ入ったはずなのに、「本当はまだ大都会が根拠地だ」という囁き声がときどき聞こえてくる……そんな気分である。それに、地元の郵便局で“仲間”として扱ってもらえなかった経験があり、それが少し悔しかった。
 
 半年前の6月の終わり頃に、ここ大泉町の郵便局に口座開設を申し込んだら、住所を表示した本人確認の文書を示せと言われ、運転免許証を出したのである。すると、住所は東京だったので、「こちらの住所では口座は開設できません」と言われてしまった。「こちら」とは、北杜市大泉町の意味である。実は私は、住民票を昨年の12月に東京から北杜市に移していた。だから、1月以降の地方税は東京都にではなく、山梨県に支払っていたのである。だから当然、この地では“仲間”と見なしてくれるだろうと考えていた。が、当地の郵便局員は、「手続き上の規則だからできない」と言って、ガンとして私の大泉町の住所を認めてくれないのである。奇妙キテレツな規則だが、ゴネル時間とエネルギーがもったいないので、私は結局、東京の人間として大泉町の郵便局に口座を開設したのだった。
 
 そんな経緯があるので、運転免許証の更新にともない住所変更が行われれば、これで私は晴れて山梨県民、北杜市民になれると期待していた。
 
 北杜市の大泉支所で住民票を取ったあと、更新手続きをする南アルプス市の交通センターに向かい、午前10時すぎにそこへ着いた。広くてきれいな新しい建物で、その1階フロアーで流れ作業のように更新手続きをすませる。そして、10時半から1時間の「講習」なるものを受け、12時前にやっと「山梨県公安委員会」発行の免許証を受け取ることができた。これでもう一歩、私は山梨県に近づいたと同時に、もう一歩、東京から離れることができたと感じた。
 今の人間は普通、この地上に80年ほど生き、そしてどこかへ去る。その間、いろいろな場所に住むことになるが、その場所場所での社会関係、気候や風土、食習慣、文化などを自分の中に取り入れながら人格を形成していく。一般に、人の人格形成に最も深い影響を与えるのは、生まれ育った土地ということになっている。それは「故郷」とも呼ばれるが、私の場合、それは東京である。そこから離れたがっている自分がいる一方で、東京を懐かしく思い、その魅力に惹かれる自分もいる。そんな分裂した心境は、しかし大泉町に“山荘”をもち、東京とそこを往復していた間は、自分の中であまり違和感を生まなかった。どちらの自分も、それなりに満足していたからだ。ところが、大泉町への移住を決め、同時に都会生活から離れようと決めてからは、「東京を懐かしむ自分」を捨てる作業が必要になったようだ。
 
 私は今「東京を懐かしむ自分」と書いたが、それは本当は「都会を懐かしむ自分」なのかもしれない。というのは、私は東京に最も長く住んでいたが、若いころは横浜に3年弱、アメリカに3年住んだことがある。後者での生活は、1年間をサンフランシスコ対岸のオークランドで過ごし、2年はニューヨークのマンハッタンだったから、いずれも大都会である。思い返せばこれらの町のいずれも懐かしく、機会があればまた訪れたいと感じる。だから今、私は「都会を懐かしむ自分」と対面し、それに別れを告げようとしているのかもしれない。
 「一方を捨てるならば、もう一方には受け入れてほしい」と感じるのは、普通の人情だろう。しかし、その「もう一方」のほうにも事情があるから、どんな人間でも即時、無条件には受け入れられない。“新参者”の側の努力と時間が必要であることは充分理解できる。運転免許証の更新が、そんな努力の一助となることを私は願っている。
 
 谷口 雅宣

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コメント

限られた家系の方達が住む田舎。全く血縁関係のないものが入り込むのは容易ではありません。10年たっても15年たっても、よそ者です。
私もそんな山の中に越してきて、最初は「仲間」になりたい、「ここの住人」と思いました。それはとんでもない甘い考えでした。でも、よそ者であっても楽しく仲良く生活はできます。住民が私を見る目は何年経とうが、おそらく「よそ者」です。だけどみんなと仲良くやってます。
新参者と受け入れ側。その土地に昔から住んでいる方達と同じ仲間になど、なれなくて当たり前だと思いました。そんなお互い同士が平和で仲良く生活できたら、それでいいかな、と。いいんじゃないかな、と。
雅宣様も、きっと住民たちと溶け込んで楽しく生活されることと思います。
すてきな生活になりますように。

投稿: 水野奈美 | 2013年12月 7日 (土) 13時43分

総裁先生、ありがとうございます。

自動車運転免許の更新手続き、おつかれさまでした。
そして、山梨県公安委員会発行免許のご取得、おめでとうございます。
また、先生の「1時間の更新時講習を受けた」とのお言葉に少し驚きました。
かく言う私も、1時間より短い講習は一度も受けたことはありませんが。。。汗
それでも次回更新までの有効期限が、5年であるのは有難いですね。

ちなみに運転免許証にある12桁の番号のうち、上2桁は一番最初に免許の交付を受けた都道府県を表しているそうです。(以前、警察官になった友人から聞いたことがあります。)

それでは、今年の冬は例年よりも寒いようですので、風邪などひかぬよう健やかにお過ごしくださりませ。

感謝礼拝

投稿: 阿部裕一 | 2013年12月14日 (土) 18時27分

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