植物への愛 (2)
サクラの話をしたが、この植物は花ばかりでなく、葉も幹も私たち人間に恵みを与えてくれる。新緑の頃の葉は、桜餅の重要な一部である。餅を包んだ葉は、餅との色のコントラスも美しいが、あの香りと歯ごたえは欠かせない。また、秋になるとサクラの葉の色の変化は、実に多様である。普通、サクラの葉は黄色から紅くなるのだが、黄色のまま落葉して紅くならないものもあり、赤と黄の混合や、黄色から赤へのグラデーション、さらにはそれに緑も加わったカラフルなものまで落ちている。私は、職場近くの公園に散り敷いたサクラの落ち葉の中から、そういう美しいものを思わず拾い集めて、持ち帰ったりする。が、その日のうちに絵に描いておかないと、朝になればもう変色しているのだ。
サクラの木は堅くて緻密だから、狂いがなく、昔から版木や額縁などに使われてきた。色は普通は褐色だが、赤っぽいものや黄緑っぽいもの、さらに白っぽいものなどもあり、バラツキがある。私の家のダイニングテーブルはサクラ材だ。赤味をおびた滑らかな木肌が好きで、もう何十年も愛用している。
日本は森林国であり、日本の家屋は基本的に木造だったから、日本人の生活は木と共にあった。しかし、戦後の高度経済成長で鉄骨や鉄筋コンクリート、「新建材」と称する石油系、化学系の建材の大量普及によって、いつのまにか私たちの生活から木材が遠ざかってしまった。燃料も、私が幼いころは、風呂を薪で焚いていたし、炭の火鉢が使われていたが、今は灯油やガス、電気である。つまり、化石燃料と原子力の利用へと変わった。その結果の地球温暖化だから、生活の場が“森”へ移転したら、私はもっと木と本格的につき合いたい。木を多用することは一見、自然破壊のような印象を受けるが、木を利用し、木の恩恵を実感することで、木を大切にしようという気持が高まる。森を豊かにすれば、木はそれに応えて良材を提供してくれる。人間は当然、感謝の気持を起こすから自然破壊から遠ざかっていく。
そういう人と植物との本来の関係を、取りもどしたいと思う。
●人と植物の生かし合いを思う祈り
神さまはすべてのすべてですから、神さまの“外”にあるものはありません。神さまの内にあって、私は植物を愛(め)で、植物に生かされ、植物に与えるとともに、植物は神さまの命を私に与えてくれます。私の体を動かすもととなる酸素は、植物がつくり出しています。私が吐き出す二酸化炭素は、植物を育てています。野菜や木の実や果物は、私の体に必要な栄養を豊かに与えてくれます。そして私は、植物を大切に育て、多くの種類がいっしょに生きる美しさの中で、神さまの愛を感じます。ありがとうございます。
谷口 雅宣
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コメント
合掌 ありがとうございます。
植物への愛
”人と植物の生かし合いを思う祈り”を拝読、優しい祈りが発表されていると、ずっとまとめ読み・・・申し訳ありません・・・させていただきました。
純子先生のみみずの漢字が読めず、久々に書き込みさせて頂き、わがやの生垣のネズミモチの木の剪定を控えようかと・・思っていたところです。ベストタイミングのお祈りのお言葉に感謝申し上げます。
投稿: 諌山綾子 | 2013年5月12日 (日) 16時02分
合掌 総裁先生ありがとうございます。 心温まる 植物を愛でる お優しいお言葉は、現在の地球の危機に心痛める良心ある人々は、きっと明るい希望がわき出で 癒しとなっております。、総裁先生の あまりにも 全てに対する慈愛の御心に浄められ拝読しておりますとジンと熱くなってまいります。 車椅子の夫と春の花見に「今年もこんなに綺麗に桜が咲いてくれましたね。しっかり見ておきましょうね」と声をかけました。 現象に心を捉われては 良くないのですが、私たち人間が行ってきた過ちを、 ━、総裁先生の慈愛深いご文章と祈り に活る力をいただき感謝しております。 再拝
島根教区 足立冨代
投稿: 足立冨代 | 2013年5月13日 (月) 01時51分