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2012年12月 3日 (月)

運動の変化について (2)

 前回の本欄では私たちの運動の歩みに簡単に触れたが、今回は、さらに視野を広げて、第二次世界大戦以降の人類の歩みを大づかみに眺めてみよう。それによって、歴史上、私たちが今いる位置が鳥瞰図を見るように鮮明になってくるはずだ。この大戦が、広島、長崎への原爆投下によって終結したという事実は、きわめて象徴的だ。そこから、人間の自然破壊が本格化したからである。当時の人類にとって、自然界は、そして地球は、無限の資源とエネルギーに溢れ、どんな大規模な人間の活動によっても破壊されず、かえって人間を束縛し、人間から奪い、人間の脅威として対峙する存在だった。ところが、その状況は、戦後半世紀を迎えるころから変わってきた。“人口爆発”とも呼ばれる人類の急激な増加と、その生活と経済活動による“公害”の頻発と自然破壊、とりわけ温室効果ガスの大気圏への大量排出によって、地球環境は恒久的に変化していくことが、夥しい数の科学的研究と実証データーの蓄積によって明らかになってきたのである。今や“自然は無限”“地球は無限”という考えが誤りであることは、明確になっている。
 
 この半世紀の世界の変化を数字で見ると、どうなるか? 戦後5年たった1950年の世界の人口は、約25億3千万人だった。これは、昨年時点の人口(約70億人)の約3分の1にすぎない。つまり、世界人口は3倍に増えたのである。当然、資源やエネルギー消費は拡大した。石油の使用量は1950年が4億7千トンだったが、2006年には39億トンへと8倍強に拡大した。同じ時期、天然ガスの使用量は14.5倍、石炭は2.7倍に膨張した。そして、原子力発電所の増設による原子力発電容量は、1956年の10万kWから、2009年には実にその3700倍に当たる3億7090万kWにまで拡大している。また、地球の生物資源を人間の食糧とする量も大いに増えている。具体的には、世界の穀物生産量は、1961年から45年間で2.5倍となり、食肉生産は同じ期間に3.9倍に拡大した。水産物生産量は、1950年が1,984万トンだったのに対し、2008年はその8倍の1億5,910万トンに達した。

 ご存じのように、生物界を含めた自然界は資源循環型である。個々の生物種には、それぞれいわゆる“天敵”がいるから、ある生物種だけが繁栄して地球上を覆い尽くすことなどない。かつて大型爬虫類である恐竜が地上を覆うほど繁栄した時代にも、哺乳動物は恐竜の影で生き続けてきた。だから、恐竜の絶滅の後に、哺乳類は繁栄の時代を迎えたのだ。同じことは、生命をもたない鉱物についても言える。例えば、二酸化炭素の循環について、ワールドウォッチ研究所は次のように描く--
 
「地球の大気中の二酸化炭素は、数億年というようなスパンで考えると、地殻直下のマントル対流によって地表に供給された炭酸塩が起源となり、一方で海の中に溶けた二酸化炭素が生物の働きによって、たとえば珊瑚礁や貝殻、骨などの炭酸塩として固定され、それがプレート運動により再びマントルに戻るという循環を続けている。もし、この固定の働きとマントルに戻す力が弱ければ、大気中の二酸化炭素分圧の上昇が続き、温室効果が効きすぎて海洋は蒸発してしまったかも知れない。あるいは逆に、少しばかり強すぎた場合には、雪や氷は太陽光の反射能(アルベド)が高いので、地表面がこれらに覆われ始めると地表温度がいっそう下がり、全海洋が凍結するまで温度低下が続いていたかも知れない」。(同研究所編『地球環境データブック 2011-12』、pp.173-174)

 そういう微妙なバランスの上に生物は繁栄して生態系を築き、延々と安定を保ってきた中で、人類がある時期から、科学技術と欲望を組み合わせて“自己中心的増殖”を始めたのである。その時期は、産業革命開始のときであるかもしれないし、20世紀末の公害の時代かもしれない。生態系を破壊して自己増殖の道具とし、鉱物資源を掘り出し加熱して大量の二酸化炭素を大気中に排出し、森林を切り倒し、鉄道を敷き、自動車を走らせ、コンクリートと鉄で都市を構築していった。その勢いは、上の数字が示す通りだ。これらは皆、非循環型の資源利用だから、地球の鉱物資源は減少を続け、生物多様性はどんどん失われていったのである。こうして世界人口の半分は、今や都市生活者となった。そして、この世界的な“都市化”の大潮流は、今後も続くと予想される。

 今、日本が直面しているエネルギー利用の選択について、多くの人はこのような“文明的潮流”のことまで語らない。「環境破壊を続ける人類史」という鳥瞰図の中で、今後の人類がエネルギーをどこから得、どう使うかの議論はほとんどない。単なる原子力発電所の安全性の問題ではないのである。日本は、この大潮流の中の一部にしかすぎない。日本が自然から離れる“都市化”の道をさらに進めば、後から続く中国、インド、インドネシアなどの大人口を抱える国々も、同じ道を進むであろうことは十分に予想できる。日本の重電メーカーは今、それらの国々に原発の技術を輸出しようとしている。それによって、世界はより安全になる、と言えるだろうか? その答えは、「否」である。福島第一原発の“事故”の原因は、技術の問題ではなく、制度や人間の問題だったことを忘れてはいけない。
 
 谷口 雅宣
 

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コメント

総裁先生,ありがとうございます。
『福島第一原発の“事故”の原因は、技術の問題ではなく、制度や人間の問題だった』
それに気づかせてくださったのは,「観世音菩薩」の教えだと思います。今こそ私たちはその教えを真摯に受け止め,実践しなければならないと思います。「観世音菩薩」となられた多くの人々に報いるためにも。

投稿: 佐々木(宮城教区生教会) | 2012年12月 4日 (火) 21時48分

合掌 総裁 谷口雅宣先生 いつも素晴らしいご指導をありがとうございます。太宗の教えの宗教的視点から、宇宙、地球・自然の規模と生物・人類のレベル等あらゆる視点からの考察の下にご教示いただきますことに、心から感謝しております。各方面の知識に乏しい私には、生長の家で学ぶ教え・知識は、生活に生かされるものであり、受けたご恩は筆舌に尽くせないほどのものです。その上に、特に総裁先生の著書やブログには第三者に、現在の運動をお伝えするに当たって必要な科学的知見に基づいたものや科学的データがあり、本当にありがたい存在です。
 ワールドウォッチ研究所による「二酸化炭素の循環」の話は、宇宙の神秘、神様に生かされているということを実感させていただく情報の一つになりました。ご教示頂くマクロの視点、ミクロの視点に、「大調和の世界に生かされている」ということの確信が深まるばかりです。今回の2回にわたる「運動の変化について」のブログの中で、私は、①宗教的視点が不可欠であること、②大きな視点の大切さ、③歴史の流れの中での視点の大切さ を再認識させていただきました。そして、このブログで、生長の家の目指しているところ、運動の方向が間違っていないということを再認識させていただきました。学識が乏しいのに読書のあまり好きでない私には、読むべき書籍の絞込みができ(総裁先生の著述を中心として、生長の家関係のものを読んでいれば間違いないということ)、必要な知識・知見(私にとって、現象的・科学的側面から宗教的視点を拡充できる知識・知見)が知得できるだけでも本当にありがたいことです。勿論、一番大切な宗教的視点がベースになっており、それとの関連性もお示しいただきながらのご教示ですので、こんなに嬉しい有難いことはありません。総裁先生が引用なさいます谷口雅春先生や谷口清超先生のご文章に、生長の家の運動(総裁先生が目指していらっしゃること)にブレがないことを教えていただけることがどんなに嬉しいことか!
 生長の家の運動を、歴史の流れ・地球・自然界全体の視点の中でとらえてご教示くださり、来年、生長の家国際本部が、山梨県北杜市の八ヶ岳山麓に移るということについて、私は、生長の家の運動の流れに大きな変化が起こると考えてはいましたが、恥ずかしながら第三者的で、今回ご教示いただいたような“強い意識”がなかったのではないかと反省しております。今回のブログでのご教示により、来年の本部移転は、強い変革の意識・意図の中で進められていることについて、私たち信徒ももっと強固な一人称の意識を持たなければならないのだとの認識を強くさせていただきました。
 現在建設が進んでいる“森の中のオフィス”は、建設業界では「日本初のZEB(炭素排出ゼロ建築物)」として注目されているということも嬉しいことですが、地元の木材を多用した大型木造建築物としても類例がないこと、建築方法そのものが、既にあった優れた建築技術動員の需要喚起となり、「新しい文明」の先駆けとなっているのだということがわかり、更に嬉しくなりました。
机上の空論ではない本物の「新しい文明」が、それに相応しい地 山梨県北杜市に生れ、“森の中のオフィス”を発信源として広がっていくことを、しかもできるだけ早く拡がって行くことを祈らせていただきます。科学技術と欲望を組み合わせて“自己中心的増殖”を始めた人間による自然破壊からの脱却、地下資源エネルギーから地上資源エネルギーに早く方向転換が進み、「自然回帰の持続可能な生活の仕組み」、人類の欲望に振り回されない、「足るを知る感謝の生活の仕組み」に早くなることを・・・。
 そのようなことの理解が進んでみると、その「新しい文明」発信拠点の完成、移転は本当に喜ばしく、祝うべきものでもあると思います。私は、今後“奉祝”の気持をもって三正行に励み、「大海に投ぜられる一石」の波紋をできるだけ大きくできる1人となれるように、総裁先生に中心帰一して、精進させていただきたいとの気持を新たにさせていただきました。
 再合掌 島根教区 石田 盛喜代

投稿: 石田盛喜代 | 2012年12月11日 (火) 13時50分

素晴らしいご教示ありがとうございます。

第2段落の石油消費量等の数字のデータ元はどちらでしょうか?

投稿: 加藤裕之 | 2013年4月12日 (金) 21時48分

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