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2011年12月12日 (月)

難産だった「ダーバン合意」

 南アフリカのダーバンで行われていた国連の気候変動枠組み条約締約国会議(COP17)が、難航のすえようやく終った。来年末に期限が切れる京都議定書の後継条約を検討する重要な会議だったが、例のごとく先進国と途上国の意見が激しく対立し、当初の終了予定を36時間も延長して条約の“大枠”だけを決め、実質的な内容の合意は次回以降に伸ばされた。「ダーバン合意」と名付けられたその“大枠”は、以下の通りである--

 ①京都議定書を5年もしくは8年間延長する。
 ②米中を含むすべての主要排出国が参加する新しい「ダーバン枠組み」(Durban Platform)を2015年までに採択、2020年に発効する。
 ③途上国の温暖化対策支援のために「緑の気候基金」を設立・運用する。
 
 京都議定書の延長について日本は、世界一の排出国・中国に削減義務がなく、2位のアメリカが離脱したため、カナダ、ロシアとともに交渉の初めから一貫して反対した。その代わり、新枠組みができるまで各国が自主目標でつなぐ案を提案した。それが見事に無視された恰好だ。日本は、延長議定書での削減目標を提出することを拒否したから、13年以降の削減努力から実質的に撤退したと言える。実に残念な決断である。これにより、「京都」の名を冠した国際条約に背を向けた国として日本のイメージは低下し、今後の温暖化交渉における発言力は大きく失われるだろう。ただし、鳩山内閣時代に宣言した「2020年までに25%削減する」という目標は国際公約としてまだ残っているから、これに向かって真剣に取り組んでもらいたい。

 日本に比べ、同じように現行議定書での削減義務をもつEUは、今回の交渉で主導権を発揮し、重要な合意への大きな流れをつくった。EU代表団は開幕前の記者会見で、「京都議定書は(温暖化対策の)シンボルであり重要な道具だ。我々には『京都』が必要だ」と述べ、日本案については「自主的な行動に任せていては十分な対策は取れない」と否定的な態度を示した。そして、中国、アメリカを含む「すべての主要国が将来新たに削減義務を負うと約束する」ことを条件に、議定書の延長に賛成した。この「将来」についても、新条約を「2015年までに採択し、2020年までに発効させる」と具体的に提案した。これに対してブラジルやアフリカ諸国が早々と同意したことで、交渉の流れは決まった。

 交渉が難航した原因は、新条約の発効の時期だ。今日(12日)の『日経』夕刊の記事によると、削減義務の履行を遅らせたい米・中・インドなどの意向をくんだ議長案は、発効を「20年以降」として提出されたが、温暖化の被害が深刻な島嶼国やEUが反発。その後、昨年の議長国・メキシコが間に入って打ち出された最終案には、「以前」も「以降」もない「20年発効」が明記されたという。

 いろいろ紆余曲折はあったが、これでとにかく世界の温暖化抑制努力に「空白期間」ができるのが避けられたのは、よかった。また9年後からではあるが、世界の主要排出国すべてが温室効果ガス削減の義務を負う合意にこぎ着けたことは、評価すべきだろう。ただし、「9年後の世界」が喜んでいられるような状態であるかどうか、私はかなり疑問をもっている。私たちは今から、“炭素ゼロ”に向かってできることはどんどん実行していこう。
 
 谷口 雅宣

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コメント

合掌ありがとうございます。私もCOP17 の中で日本が取った態度に疑問を持ちました。こういう事に関して意見の交換が出来る人がいないので、久しぶりに先生のブログを覗いてみました。“炭素ゼロ運動”は生長の家で最近耳にするようになった言葉ですね。私の住んでいる地域は浜岡原発の運転停止に伴い、この夏節電を余儀なくされました。身近で出来る事はやはり節電だろうなと思います。極力車には乗らないようにしたりとか。あと宇治の練成に参加した時に勉強したのは暖房するのでなく厚着をすればいいという事でした。この冬は雪が降らない限り凍死しない程度に節電を心掛けようと思います。再拝

投稿: 横山啓子 | 2011年12月13日 (火) 09時11分

横山さん、

>>この冬は雪が降らない限り凍死しない程度に節電を心掛けようと思います。<<

 これは何か“決死”の節電ですね。気の毒な感じがします。それよりも、…薪ストーブなんか使われません? これは“炭素ゼロ”ということになってますから。

投稿: 谷口 | 2011年12月13日 (火) 13時08分

合掌有り難うございます。
薪ストーブなら炭素0というのは、何故なのでしょうか?実際、薪を燃やすとCO2が出ますし‥。

薪を燃やしたあとの灰は土に還すことができ、自然のサイクルにのっとっているという点ではエコだと思いますが。不勉強で申し訳ありません。無い知恵を絞っていろいろ考えてみましたが、よく分かりません。

但し、いつか自宅に薪ストーブを入れるのは夢見ています。

投稿: 前川 淳子 | 2011年12月13日 (火) 21時43分

合掌有り難うございます。

何故薪ストーブが炭素0につながるか?の理由は、あるサイト(http://www.e-stove.net)の中で、「薪ストーブが人や地球に優しいわけ」として、納得のいく説明がありました。

薪ストーブ一台で、ハイブリッド車5台分の二酸化炭素削減効果があるという試算もあるようです。

ただ、例えば全ての日本の家庭で薪ストーブを使うことになったとして、それがまかなえるだけの薪が今の日本で充分確保できるのだろうか?と思いました。

投稿: 前川 淳子 | 2011年12月13日 (火) 23時08分

谷口雅宣先生
合掌、ありがとうございます。
フェイスブック慣れしてきているせいで、『いいね!』ボタンがないので、コメントしました。
最後の呼びかけに、「はい。」と答えようと・・・
生長の家で炭素ゼロ運動を明確に打ち出しているので、行動の指針ができて、ありがたいです。改めて、炭素ゼロを念頭においた行動をとっていきたいです。
再拝
藤原 宏之

投稿: 藤原 宏之 | 2011年12月14日 (水) 09時44分

前川さん、

>>ただ、例えば全ての日本の家庭で薪ストーブを使うことになったとして、それがまかなえるだけの薪が今の日本で充分確保できるのだろうか?と思いました<<

 それは、そうですね。でも、日本の家庭すべて……という仮定は現実的でないです。自分で薪を都合できる人はともかく、そうでない場合、薪の値段はガスや電気より髙いので、まず「家庭すべて…」とはなりません。しかし、山を持っていたり、安価な薪を入手できる人にとっては、この選択肢は魅力的です。また、中・長期的には、多くの人々が薪を使うようになれば、林業が復活し、コストも安くなるでしょう。

投稿: 谷口 | 2011年12月14日 (水) 16時20分

合掌ありがとうございます。総裁先生から薪ストーブの事でコメントを頂いた事で少し考えていました。返事に困りました。でも前川さんや藤原さんが代返して下さったのでうんその通りと相槌を打っていました。薪ストーブの実現はちょっと難しいですが、“炭素ゼロ運動”を心掛けて生活して行ければと思います。再拝

投稿: 横山啓子 | 2011年12月14日 (水) 20時46分

合掌有り難うございます。

何だか恥ずかしい素朴な疑問に丁寧にお答え頂きまして、大変恐れ入ります。そして、有り難うございました。

薪ストーブが普及することは、うちの事業(自然食品店経営)の目的にも少し似ている、と思いました。

もともと「自然食品」という言葉すら、戦前は存在しなかったことで、うちのような店が出現せざるを得なくなるほどに「不自然な食品」が出回るような世の中になってしまったということだと思っています。ですので、一日も早く全ての食品店が「自然食品店」になるようにするということが最終目的だといえるかもしれません。
‥ただ、それこそ現実的ではない話で、まずは意識のある方にお伝えすることから‥というのが今やれる精一杯のことです。多くの人が本来の自然な食事のしかたを望み、そういう食材、食品を求めるようになれば、コストが下がり求めやすくなる日がきっとやってくる‥‥そう信じて頑張っていきたいと思います。

個人的には林業にも興味があり(雅宣先生のブログの影響大です)、おばあさんになる頃には山仕事(亡き父から譲り受け、今は放置している土地が近くの山に少しばかりあります)に明け暮れる生活ができたら‥と夢見ています。(主人には笑い飛ばされていますが。)

投稿: 前川 淳子 | 2011年12月14日 (水) 22時03分

今回の会議をみても、普段まわりをみても、大きな組織になると、上手くまとめるのが難しいなと、つくづく思いました。きっと、個人的にはもっと環境の意識が高い(そう信じたい)であろうに、はがゆいです。

皆様がコメントされている薪ストーブですが、都会ならば「ペレットストーブ」が使いやすいです。燃料になる木質ペレットは、生産が増えてきていますし、京都の小学校で灯油とペレットと、燃料費を比べる実験をしましたら、ペレットの方が若干安い、と言う結果がでています。ストーブそのものが、高いのですが、補助金制度もありますので、前よりは購入しやすくなってきています。

投稿: 水野奈美 | 2011年12月15日 (木) 07時03分

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