森はカラマツ色
休日を利用して大泉町の山荘へやってきた。町の中心部は紅葉・黄葉が美しい盛りだが、標高のあるわが山荘付近は、木々はだいぶ葉を落としてしまっている。それでも庭で育っているメグスリの木やカエデ類は、黄緑から黄色、橙、赤へと続く美しいグラデーションを見せている。カラマツの黄葉を期待していたが、山荘近くでは大半がすでに地に落ちていた。しかし、カラマツの葉のいいところは、地に落ちても変色が少ないことだ。だから、黄葉が地面を染めることになる。
「黄葉」と書いてはみたが、カラマツの黄葉は決して普通の「黄色」ではない。光が当たれば黄金色に輝くが、地に散り敷いたときの色はサーモンピンクに近く見える。1枚の葉は長さ数センチの太めの糸状だから、それが大量に落ちると、辺り一面をサーモンピンクに染めてしまう。そんな森の中をのんびりと散策していると、ほのかな芳香をかぐことができる。以前にも書いたことがあるが、私はカラマツが放つ微かな香りが好きで、散り敷いた葉を 集めて東京の家に持って帰ったこともある。今日も朝食前の時間に付近を散歩した。曇り空だったため、赤や黄色の鮮やかな色は後退し、サーモンピンクの山道がまっすぐに続く景色が目に飛び込んできた。顔に当たる山の空気は冷たく、手袋なしの手はやがてかじかんでくる。しかし、その清冽な冷気が、私の心を内側から昂揚させてくれるのがわかる。歩いて3~4分のところに隣家の別荘があるが、人気はない。その黒い屋根がサーモンピンクの砂糖をまぶしたように見えるのがいい。黒くなった古い切り株の上に積もった葉も、趣がある。表面を指でこすってみると、切り株が柔らかになっている。苔が生えているのだ。
朝食後に、山荘西側のデッキの前に伸びていた細めのクリの木を1本、切り倒すことにした。眺望を妨げていたし、一部が枯れて枝が腐ってきていた。また、枝振りにも難があったからだ。もちろん、これらの理由は皆、人間の勝手な都合だ。寒風の中、ここまで一所懸命に生きてきたクリの木の身になれば、とんでもない話だ。が、込みすぎて生えている木は、互いに栄養分を取り合ってひょろひょろになる。実は、クリよりも山荘に近接して立っていたヤマザクラの木は、先に枯れてしまった。春には白い花をつけて私たちを楽しませてくれたし、幹に鳥の巣箱をゆわえておいたので、ヒガラなどが出入りする様子が観察できた。しかし、理由がわからないまま枯れて、幹の表面にあまり美しくない苔が一面に生えてきたので、管理会社の人に伐採してもらった。が、クリの木は、それより細く、自分で切り倒せると思ったのだ。
チェーンソーで切り倒す作業は、簡単だった。が、その後が案外、大変だった。枝を払い、焚きつけにできる長さに切り、幹も約1メートルの長さに切って、一箇所に集めておく。この作業に小一時間かかった。この過程で、クリはカラマツよりも硬く、重いことを知った。木の内側の色も、前者は黄色っぽいのに対し、後者は赤っぽい。いずれの木も、伐採後は薪にして燃やしてしまうというのでは、いかにも勿体ない。用途をゆっくり考えてみようと思う。
谷口 雅宣
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コメント
伐採された木は、炭にするのも一つの方法と思います。
投稿: 志村 宗春 | 2011年11月11日 (金) 09時50分
志村さん、
そうですねぇ…考えてみます。
私が考えているのは、シイタケのホダ木にすること。また、一部は木工にも使えますね。
投稿: 谷口 | 2011年11月11日 (金) 15時29分
カラマツの紅葉・落葉はほんとにきれいですよね
私達の地方ではホダ木にするのは
ナラの木ばかりなので
栗の木もホダ木になるとは知りませんでした。
投稿: 小田 知伸 | 2011年11月11日 (金) 18時58分
栗の木でしたら、やはり家具でしょうか?
硬いので、小さな細工は難しいでしょうから。
でも、こうやって、人が山に入ると、手入れが行きとどくから、いいですね。自然な形で間伐ができますし。私は薪にしてしまうことが、さほどもったいないと思いません。わりと最近まで人が山に入って、薪をこしらえていたのですから。また、そうすることによって、自然な形で山の手入れができて、山が元気な姿を保っていることができたのだから。
今は間伐すら、するのがやっとで、切ったなり、山にそのままほったらかしです。
薪になって、よかったです。
投稿: 水野奈美 | 2011年11月12日 (土) 18時23分
小田さん、
ナラの木がないので、やむを得ずというところです。
クリからはクリタケが出るので、もしかしたら……と思いました。
水野さん、
そうですか、硬い木は細工はダメですか。
家具にするというのは、思いつきませんでした。考えてみます。
投稿: 谷口 | 2011年11月12日 (土) 21時44分
合掌ありがとうございます。谷口先生の別荘がある所は紅葉も黄葉もきれいな場所にあるのですか。私は今運転免許取得に挑戦していますが免許を手にしたらドライブを兼ねて行ってみたいですね。今年は間に合わないでしょうから来年行けたらと思います。前にこのコメントで紹介しました私の実家の近くにある揖斐峡も紅葉や黄葉のきれいな場所です。春は桜で山一面淡いピンク色に染まります。一年に二回花見が出来ますよ。来年の春はドライブを兼ねて行くつもりです。再拝
投稿: 横山啓子 | 2011年11月14日 (月) 20時19分