太陽光で生活する (3)
前回、この題で本欄を書いたときは、小型の太陽光パネルを入手して、それをPC以外の生活に必要な電力にも使おうとしていることを報告した。このパネルの最大出力は30.5Wだから、その際のテストでは、フル充電状態で72Wの液晶テレビが使えた時間は「約20分」と報告した。もちろん、これでは実用的とは言えない。また、私が昼間使っている扇風機--エアコンはもう何年も使っていない--は40W台だから、「長くて1時間か」と予測した。実際に使ってみると、45分から50分だったので、これも夏期の実用には適さない。
そして東京ではいよいよ電力制限が始まる7月に入ったので、省エネ型の扇風機を購入して、来るべき猛暑に備えることにした。ところが、扇風機が入手できないという報告を受けた。渋谷や新宿周辺の家電量販店やデパートは軒並みに品切れ状態で、「札幌店にはある」という話だった。しかし、そんな遠方から取り寄せるのでは“炭素ゼロ”の運動が泣く。というので、秋葉原を探してもらったら、やっと1軒に省エネ型は1種だけが9台ほどあるというのだ。名前を聞いたことのないメーカーのものだったので、少しためらった。が、間近に梅雨明けが予想される現在、扇風機なしの執務は問題だ。ということで、その“新メーカー”に賭けることにした。
このメーカーは「ツインバード」(Twinbird)といい、扇風機の製品名は「コアンダエア EF-D945W」である。電源はAC100Vから使えるが、12V用のアダプターを経由するという点で抵抗があった。なぜなら、私の使っている蓄電池のアウトプットが12Vだからだ。これを100Vに変換した後に再び12Vに変換すれば、ロスが生じる。が、これを購入後に解決する手段がないわけではなかろうと考え、思い切って買った。本機の消費電力は、カタログには「3~20W」とあるから、晴天時には太陽光パネルの発電で連続運転が十分可能なはずだ。ついでに本機の仕様について付言すれば、首振り角度は約60度、電源コードの長さは約1.8m、重量は約4.9kg,外寸は 約W 330 × D 325 × H 925mm である。気になるのは、コードがやや短いこと、高さの調節が2段階だけのこと、また、首振り角度が小さいことだ。リモコンはないが、私の用途では不要なので気にならない。価格は約2万円だった。
こうして私の執務室には省エネ扇風機が入り、今日、太陽光による試運転をした。好天だったこともあり、問題なく動いてくれた。運転時間は昼休みの1時間と、夕方の1時間半ぐらいだ。あとの時間は会議で別の部屋にいたため本機は使用せず、その間、太陽光による充電が行われていたことになる。雨天時に問題が起こる可能性はあるが、とにかく使い続けてみようと思っている。「誰からも奪わない風だ……」と思うと、前の扇風機よりも何か涼しい気持がし、風もピュアだと感じる。もちろんこれは、心理的な印象だ。でも、心理的なものが重要であることは、言をまたない。
谷口 雅宣