ミカンが割れる
今年の夏は第1級の“異常気象”であったことが報告されていることは、読者もご存じだろう。本欄では8月20日や9月5日にこの件に触れたが、9月に入って、新聞各社はそれらをまとめて報道している。
9月2日『日本経済新聞』--気象庁はこの夏(6~8月)の日本の平均気温が、平年より1.64℃高く、1898年の統計開始以来、過去最高を記録したと発表。
9月4日『福島民報』--今夏の高温の原因について、気象庁の「異常気象分析検討会」が3日、見解をまとめ、今回の高温を30年に1度程度しか発生しないと定義される「異常気象」と位置付けた。
同日『日経』--気象庁は3日、異常気象分析検討会を開き、春に終息したエルニーニョ現象と夏に発生したラニーニャ現象の相乗作用が一因とする検討結果を発表した。今後1週間は35℃以上の“猛暑日”となる地域がまだある見込み。
9月10日『日経』--気象庁は9日、8月の日本周辺海域の平均海面水温が、平年を1.2℃上回る27.5℃となり、85年に統計を始めてから最も高かったと発表した。
というわけで、世界各地でも通常では起こらない気象と、それに伴う被害が起こっていることはすでに報告ずみだ。日本では、熱中症による高齢者の死亡数が問題にされたが、4日付の『福島民報』には、家畜の死亡数まで掲げてあったのが印象に残った。それによると、農林水産省のまとめでは、7月初めから8月15日までで、全国で熱射病などで死んだり、廃棄された家畜は、乳牛が959頭、肉牛は235頭、ブタ657頭、ブロイラー28万9千羽、採卵用ニワトリ13万6千羽だったという。これに、口蹄疫による殺処分の頭数を加えて考えると、今年は家畜にとっても大変な年であることが分かる。
私の家の庭でも被害が生じている。といっても、これはミカンの話だ。高温が続き降雨量が少ないため、春に実を結んだミカンが割れて、地に落ちる現象が起こっている。こんなことは初めての経験だ。私はブルーベリーの木の根が深くなく、水分を必要とすることは知っていたから、東京にいる間はほとんど毎朝、バケツ2杯の水を与えていたが、ミカンは盲点だった。色づく途中の直径3~4cmのものの皮がパックリと破れ、やがて地に落ちる。その様子は何とも痛ましい。ところが、隣に立っているユズの方は、どうやら無事のようだ。全国のミカン農家の人たちは、きっと水やりに苦労されているのだ--そんなことを考えながら、皮の破れたミカンを描いた。
谷口 雅宣