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2011年6月14日

イタリアが“脱原発”を決定

 本欄のために割く時間が少なくなっている。7月にドイツで行われる国際教修会や新刊書の仕事が増えているからだ。しかし、うれしいことはきちんと「うれしい」と表現するのが日時計主義だから、これについては書かせてほしい。ドイツとスイスに次いで、イタリアが国民投票によって原発からの撤退を決めた。東日本大震災による福島第一発電所の大事故が人類に何かを与えるとしたら、それはこの種の“反面教師”としての教えなのかもしれない。このイタリアからの朗報については、『朝日新聞』と『日本経済新聞』の報道姿勢の違いが面白い。
 
 脱原発の姿勢が明らかな『朝日』は、こう伝える--
 
「原発再開の是非を問うイタリアの国民投票は、投票最終日の13日、投票率が50%を超えて成立した。開票が始まり原発反対派が9割を超えて圧勝し、新規建設や再稼働が凍結される見通しとなった。投票不成立を目指したベルルスコーニ政権への大きな打撃となった」。

 これに対し、原発に同情的な『日経』では、記事はこうなる--
 
「イタリアで12~13日に実施された原子力発電の再開の是非を問う国民投票が成立し、政府の原発再開の計画を否決した。内務省の発表によると、投票率は約57%に達し、成立の条件である50%を上回った。福島第1原発の事故後、主要国で原発政策に関する国民投票は初めて。他国からの電力購入や再生可能エネルギーの利用拡大など戦略の練り直しは必至だ」。

 読者は「あれーっ」という感じをもたないだろうか。『朝日』を読むと、国民の9割が原発反対であるかのような印象を受けるが、『日経』では“僅少差”で原発の運転再開が否決されたと読める。しかし、注意深く読み直してみると、国民投票が成立するためには、2日間で有権者の半数が投票しなければならず、その投票者の9割(正確には 94.5%)が“脱原発”を選択したのだと分かる。『朝日』は、この9割を「圧勝」と評価して記事の頭に書いているが、『日経』はそうとらえず、引用した記事の最初の段落には「57%」という投票率の数字だけを書いている。事実を冷静に考えれば、投票した人のうちの94.5%は全体の53.6%だから、「圧勝」という『朝日』の表現は明らかに言い過ぎであり、「否決」としか言わない『日経』は言わなすぎだと私は思う。もちろん両紙とも、記事の後の方ではすべての情報を開示しているが、忙しい読者は記事を最後まで読まないだろうから、受け取る印象はずいぶん違ったものになる。両紙の編集デスクは、もちろんそのことを十分心得ていて「記事づくり」をしている。新聞報道とはそんなものだ。
 
 ところで、この国民投票が行われる前に、ローマ教皇が原子力発電に否定的見解を述べたという事実を読者はご存じだろうか。私は、これが今回の結果に少なからぬ影響を与えたのではないかと考える。6月9日付でカトリック・ニュース・エージェンシーが流したニュースによると、ベネディクト16世はこの日、駐バチカン大使が集まった会合で「世界はもっとクリーン・エネルギーの開発を進めるべきだ」と発言したという。この日はちょうど、スイスが“脱原発”を決めた日だったから、教皇がいう「クリーン・エネルギー」に原子力発電は含まれていない。
 
 この集まりは、シリアなど7カ国の新任バチカン大使との謁見の場で、教皇は「今年前半は、自然や科学技術、人々に影響を与えた多くの悲劇に見舞われた」として、東日本大震災とその影響による福島第一原発の事故に言及した。と同時に、教皇は「人間は、自然を守る仕事を神に任されているのだから、科学技術に支配されたり、その対象になってはならない」と述べたという。また、「人類は心を入れ替えて、環境を敬うライフスタイルを採用し、クリーン・エネルギーの研究と開発を支援しなければならない。神の創造の遺産を尊重し、人類に害を及ぼさないことーーこれが政治と経済の優先課題とならなければならない」と述べたという。

 ローマ教皇庁は、これまで原子力エネルギーについて肯定的な態度を示してきたが、福島第一原発の事故を契機として、否定的な見解に変わったと見られる。教皇の発言は「原子力」を直接名指ししていないが、今回の発言の中で「無限に強力で、究極的に制御不能のテクノロジー」に過度の信頼を置くことは、人間から人間性を奪うと述べていることから、原発への過度の依存を批判していると解釈できる。この発言はまた、教皇の母国であるドイツが“脱原発”の決定をしたことと無関係ではあるまい。
 
 谷口 雅宣

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コメント

谷口雅宣先生

 とても有り難い事ですね。ドイツに続いてイタリアも。でも日本の震災を契機にドイツ、イタリアって国名が出るって偶然ですがかつての枢軸国が揃いました。(余談です。)
 それにしても日本では相変わらず原発推進派が根を張っていて、キャンペーンをしてるのが残念です。先日は経済同友会が「原発は必要」との声明を出しました。マスコミはただこれを垂れ流しにするのではなくて、原発など無くても自然エネルギーに本気で移行して行けば十分、やっていけるという識者の意見もきちんと合わせて報道して欲しいです。

投稿: 堀 浩二 | 2011年6月16日 10:00

コスタリカという小さな中米の国でJICAシニアボランティアとして2年間夫とともに活動しております。コスタリカ大学の高齢者のためのコースの活性化が任務です。

コスタリカは非武装で、エコツーリズムの発祥地で、1月には秋篠宮殿下夫妻もお見えになりました。
3月に日本支援のDIA DE  ARIGATOという、大きなチャリティイベントも開かれ、1万人以上が来場しました・
この6月に日本への素敵な応援ソングができました。

以前総裁先生が 雨にも負けずを香港の方たちが作ってくださり、私も授業で使わせていただきました。そのことを思い出し、ご紹介させていただきたいと思います。
歌詞が素敵です。いろいろあるさ、失う時、苦しい時、でも光は来る、最後に必ず、
苦しみが終わり、愛がやってくる、灰色が過ぎ去り、再び色づく、愛の海、コスタリカからの心からの愛、愛の海、・・以下のブログでご覧になれます。

http://www.youtube.com/watch?v=Uw96n19k9HE

投稿: 武山久恵 | 2011年6月17日 22:07

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