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2011年6月28日

“緑の教皇”は語る

 前回の本欄では、原子力利用についてのカトリック教会の態度の変化を眺めてみたが、これは、現在のローマ教皇庁は核兵器拡散問題や地球環境問題などへの取り組みに不熱心だと言いたかったからではない。それとは逆に、ベネディクト16世は、2005年4月に前任者のヨハネ・パウロ2世からカトリック教会を引き継いで以来、地球温暖化問題への取り組みを熱心に進めているのだ。

 私は、その取り組みの全貌を知らないが、時おり報道されるニュースの中から、例えば2007年9月4日の本欄では、ヴァチカンが通常業務の一部を“炭素ゼロ”にするために植林地を購入したことや、2010年1月18日には、ヴァチカン駐在の100人近くの各国大使を集めた場で、前年末の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)が不調に終わったことを教皇自身が批判したことなどを読者に伝えてきた。このような側面に注目して、今の教皇のことを“緑の教皇”(Green Pope)と呼ぶ人もいるらしい。

 その“緑の教皇”が語った言葉を記録した本がある。それを読むと、現在の教皇庁の環境問題についての考え方がよく分かる。この本は、『Ten Commandments for The Environment』(環境のための10の戒律)という題で、「Pope Benedict XVI speaks out for Creation and Justice」(教皇ベネディクト16世、神の創造と正義のために語る)という副題がついている。2009年の出版で、ウーディーン・コーニグ=ブリッカー(Woodeene Koenig-Bricker)という人の著作の形になっているが、「引用はすべてヴァチカンの公式ウェブサイトから」と書いてあるし、著作権表示の中に「(c)Libereria Editrice Vaticana」という表記も加えているから、恐らくヴァチカン公認の出版物だろう。

 タイトルにある「10の戒律」とは、明らかにモーゼの十戒(the Ten Commandments)を意識した表現である。たぶん教会としては、この本にそれだけの重みをもたせたいのだろう。その“環境のための十戒”を以下に列挙しよう--
 
1.自然は利用せよ、ただし悪用するな (Use, Don't Abuse)
2.人間は神より少し劣る ( Little Less Than a God)
3.地球はすべてのためにあり、すべては地球のためにある (One for All, All for One)
4.技術は人のために使え、ただし被造物を敬いながら (It's Not a Brave New World)
5.自然は神にあらず、神からの賜物である (Gaia Isn't God)
6.進歩の代価を考えよ (What Price Progress?)
7.物資は隅々に行き渡らせよ (Flowing Like a River)
8.環境への責任を法とせよ (We're All in The Same Boat)
9.欲望の奴隷となるな (Discipline Is Not A Four-Letter Word)
10.“神の賜物”として自然に対せよ (It's All Gift)

 谷口 雅宣

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コメント

レイチェルカーソン著の『沈黙の春』の中で、『人間も自然の一部である』を見つけて嬉しくなりました。1962年に出版されていたのですね。先見性にも驚きました。本物の生き方はいつの時代も同じなのだと思いました。

投稿: 渡辺 | 2011年6月30日 04:00

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