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2011年5月26日

菅首相の“新”エネルギー政策を歓迎する

 今朝(26日)の新聞各紙は、OECD(経済協力開発機構)の設立50周年記念行事での菅直人首相のエネルギー政策見直し演説について、大きく報じた。東日本大震災の経験から学び、日本の発電量全体に占める再生可能の自然エネルギーの割合を「2020年代のできるだけ早い時期に20%にする」という中期目標を発表するというのだ。これは国際会議の場での意見表明だから、数値目標をともなった事実上の国際公約と言える。日本の自然エネルギーの利用割合は2009年時点で約9%というから、これを10年間で倍増以上させる考えだ。また、この9%の大半は水力発電によっていて、大型ダム建設が困難な現状では、今後の増加分のほとんどは風力や太陽光などの再生可能エネルギーで賄わねばならない。
 
 昨年6月に策定した政府のエネルギー基本計画では、総電力に占める自然エネルギーの割合は「2030年までに20%」とされていた。同時に、原子力発電の割合は「50%以上」となっていたので、私にとっては大変遺憾だった。原発は、人間至上主義の“権化”のようなものであり、しかも世代間倫理を軽視しているからだ。それが、大震災と福島第一原発の事故を経験したことで、今回の大幅方針転換となった。今後の原発の増設はほとんど不可能だろうから、日本は自然エネルギーの目標割合「20%」を達成するために、経済も産業も政治も、様々な新規分野に本気になって取り組んでいかなければならない。日本経済は、いよいよ「自然と共に伸びる」形で進んでいかねばならないのだ。
 
 前回の本欄で触れた孫正義氏のメガソーラー構想についても、今日の各紙は“後追い”記事を書いている。それを読むと、菅首相と孫氏が何か仲良く連携しているように感じるのは、私だけだろうか。『日本経済新聞』によると、孫氏が率いるソフトバンクは19の地方自治体と組んで「自然エネルギー協議会」という政策協議会を今年7月上旬に結成するという。この協議会は、再生可能の自然エネルギーの利用普及に向けて政策提言をまとめる場で、ソフトバンクは1カ所あたり2万キロワット程度の太陽光発電所の建設に出資するらしい。『日経』の表現では、「電力不足への懸念が広がる中、同社が主導して電力会社に依存しない仕組み作りを目指す」という。
 
 具体的には、農地転用への規制緩和を提言し、全国の休耕田や耕作放棄地に太陽光発電所を建設することを考えているようだ。また、風力や地熱の利用も視野に入れているという。この協議会に参加を表明している自治体は、北海道、秋田、埼玉、神奈川、山梨、長野、静岡、愛知、福井、三重、岡山、広島、香川、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎の19だが、『朝日新聞』によると、大阪や兵庫など7府県を抱える「関西広域連合」も参加を検討しているという。また『日経』は26日の夕刊で、鳥取県の平井伸治知事が、孫氏の計画に参加する意思を表明したことを伝えた。孫氏の計算では、全国の休耕田や耕作放棄地の合計は54万ヘクタールだが、この2割で太陽光発電を行えば5千万キロワットの電力供給が実現するから、「今夏のピーク時の東京電力の供給能力に匹敵する」のだそうだ。
 
 ところで、生長の家の国際本部が2年後に移転する予定の山梨県北杜市には、すでにメガソーラーの施設がある。北杜市はこの分野では先進的で、2006年度から長坂町夏秋および塚川地区(秋田工業団地とその周辺)のおよそ10ヘクタールの土地に、NTTファシリティーズなどと共同で、電機各社の太陽光発電パネルを大量に並べた2メガワット(2000kW)級の大規模太陽光発電システムを構築し、「大規模電力供給用太陽光発電系統安定化等実証研究北杜サイト」として、系統連系時に電力系統側へ悪影響を及ぼさないシステムの開発を目指した実証研究を行ってきた。この研究は今年3月で終了し、4月からは北杜市営の「北杜サイト太陽光発電所」として新たにスタートしている。
 
 このような動きをさらに前進させるために、生長の家も“地域貢献”を含めた努力を続けていく考えである。
 
 谷口 雅宣

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コメント

谷口雅宣先生

 今回の菅首相の英断、本当に有り難い限りです。孫社長とも時期を同じくして自然エネルギーへの舵取りが大いになされて行く訳でいよいよ、日本から世界に向けて自然と共に伸びる動きが発進されて行く様相は期待に胸が膨らみます。

投稿: 堀 浩二 | 2011年5月27日 10:56

総裁先生はもうご存じのことと思われますが、念のためご報告させていただきます。

「NTTファシリティーズ」という会社が、北杜市で「Fソーラーテクノパーク(仮称)」という大規模な太陽光発電施設の運用を、2011年度内に開始するそうです。

 これは、現在ある「北杜サイト太陽光発電所」(2MW)とは別に、最先端の太陽光発電システムのノウハウを蓄積するための「世界的な実証サイト」を目指したもので、2011年度に構築する規模は240kW。その後、設備を拡張し、最終的なシステム規模は2MW程度を目指しているとのこと。

ニュースリリース

 これによると、「北杜市と連携し、地域社会における環境教育の場としても活用する」とのことなので、生長の家“森の中のオフィス”との密接な連携なども考えられます。

 また「蓄電池付太陽光発電システム構築サービスの提供体制を強化し、停電・災害時にも安定した電力を供給できるシステムを提案」するそうなので、生長の家との連携を通して北杜市にいち早く日本版スマートグリッドが実現するかもしれません。

投稿: 久都間 繁 | 2011年6月 4日 11:46

ニュースリリースのリンク先が外れていました。失礼いたしました。

こちらです http://www.ntt-f.co.jp/news/heisei23/h23-0510.html

投稿: 久都間 繁 | 2011年6月 5日 11:26

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