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2011年5月24日

孫氏のメガソーラー構想

 最近、ソフトバンクの孫正義社長が、スゴイことを言っているらしい。私が帯広市で読んだ5月22日付の『北海道新聞』には、同社長が埼玉県など全国10カ所に大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設を検討していて、計800億円規模の事業費を用意しているらしいと書いてあった。21日に埼玉県の上田知事が記者団の質問に応じて確認したところでは、同県の場合、ソフトバンク側が79億円、県側が1億円を出し、80億円の事業費でメガソーラーを建設する方向で調整を進めているという。
 
 この話は、『日本経済新聞』も2日後の記事で確認している。それによると、1カ所80億円で造るメガソーラーの容量は「20メガワット」。孫社長は、この構想を25日には東京で開かれる関東地方知事会議で、26日には大阪での関西広域連合委員会で知事らに説明する予定という。これに先立つ14日には、同社長はすでに東京都内で菅直人首相と会食して原発依存からの脱却を訴えていた。また23日には、参院行政監視委員会に参考人として出席して「自然エネルギーの活用で原発への依存度を下げるべきだ」と主張したという。
 
 これらの新聞情報を読む限りでは、孫社長のメガソーラーへの意欲は本物らしい。自然エネルギーへのシフトを主張する私としては、大変心強い味方を得た気持で、ありがたい限りだ。が、同社長の熱意はいったいどこから来るのだろうか?

 本欄では数回にわたり、「最近の企業は巨大化、グローバル化するにつれて、自身の活動から生じる外部性を内部化して成長してきた」ということを述べた。今回の大震災では、大津波の被害も重なって、被災地の携帯電話が数日間、ほとんど機能しなくなった。アイフォンなどの通信事業を行っているソフトバンクにとって、これは大変な“負の外部性”だったに違いない。しかし、今回の原発事故と携帯電話用回線の不通とは、さほど密接な関係があるとは思えない。関係があるとしたら、原発の機能停止によって電力不足が起こることで、携帯用回線が使えなくなる可能性が生じることぐらいだろうか。
 
 そういう“負の外部性”が予見できる原発だから、その役割を縮小して太陽光発電を推進すれば、日本全体の電力供給がより安定化する、と孫氏は考えたのだろうか? そして、そういう事業を地方自治体と共同で行っているのが「ソフトバンク」という会社だ、という点をマーケティング戦略に組み込めば、これは確かに「外部性を内部化」したことになるだろう。こういう点をねらって孫氏が動いている、と読むことはできるかもしれない。
 
 ついでに、もう一歩深読みしてみよう。今、原発事故との関連で、東京電力から送電部門を分離する話が、首相周辺から出ている。私は、この「発送電分離」は東電管内だけでなく、全国で実現してほしいと思っている。それによって、自然エネルギーを利用した中・小規模の発電事業がやりやすくなるからだ。ただし、自然エネルギーは--特に風力や太陽光は、発電量が天候に左右されて安定しない。これを補うために、「スマート・グリッド」という電力安定化の技術開発が進んでいる。孫氏は、この分野への新規参入を考えているのではないか? 全国に10カ所の発電所をもっていれば、それがやりやすくなる……そんな憶測が頭に上る。
 
 ともあれ、CO2の排出が減り、一企業の独占がなくなり、中央集中型支配が減り、地方分散型経済に近づくことは、日本の将来にとって良いことだから、私は孫氏の活動に期待せずにはいられないのである。
 
 谷口 雅宣

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コメント

総裁先生、

 私も孫社長の義援金の額にも驚き、震災後の言動に注目していました。
 USTREAMに4月22日に行われた「自由報道協会主催 孫 正義 記者会見」http://www.ustream.tv/recorded/14195781

の一部始終がアップされていました。それを見て、大きな感動を覚えました。
 孫社長は、震災までは原発に関して推進派でも反対派でもなかったそうですが、震災から1ヶ月の間に世界や日本の原発の現況を調べ、何が問題であるのかを示していました。そして、批判で終わるのではなく、これからどうすればよいのかということを提言されていました。その中で、電気が一番使われるのは昼間であり、そのピーク時間を太陽光発電で賄えばよいと発言されていました。太陽光発電に反対する人は太陽は雨の日や夜は使えない等批判しますが、その時は石油等で補えばよく、一番電気が必要なピーク時を太陽光で賄えばよいというものでした。これからも石油、原発に頼っていると石油、原発はコストが上がる一方なので電気料金もどんどん上がってくる、しかし、自然エネルギーのコストはこれから下がってくる、ということ等をデータを用いながら説明されていて、とても説得力がありました。それがメガソーラーにつながっていったのだと思いました。

 “知って行動しないのは、子や後世に対して罪だ”“損得勘定で言えば一杯損することあると思います。でも時として正義を通さなければならい時がある”“ソフトバンクという会社が本業でないことまで手を広げていいのかどうか、でも国難の時にそれを見過ごしていいのか”というような内容の言葉が印象に残りました。

 孫社長の真摯な生き方、また覚悟を感じました。

 また、『週刊ポスト』(2011.5.6/13)に『孫正義独占インタビュー90分「私欲に非ず」』という記事がありました。インタビュー記事なので週刊誌でも本人の意志だろうと思い買って読みました。震災後の迅速な行動の理由を聞かれたことに対して、孫社長は、海に向かって「お母さん、お母さん」と叫んでいる小学5,6年生の女の子を見て涙が止まらなかったそうです。そして、自分の非力さに腹が立って悔しくて仕方がなかった、人生観が変わるぐらいのショックだったということを言われており、こちらの記事にも感動いたしました。

投稿: 田中道浩 | 2011年5月25日 13:31

谷口雅宣先生

 本当に嬉しい限りです。自然エネルギーが本格的に原発に取って変わる時期が近づいたのですね。それにしても今回の震災で如何に東京電力が政治家、プラントメーカー、マスコミを抱き込んで本来で無い事をやっていたかという事が浮き彫りにされましたね。

投稿: 堀 浩二 | 2011年5月25日 13:42

総裁先生、ありがとうございます。

さて、携帯電話の使用と電力消費の関係について、私見を述べさせていただきます。

私の場合、携帯電話の使用に対する依存度は、けっこう高いものだろうと思っています。
その理由(根拠)は、携帯電話を使用したメールやネットの利用が多く、パケット使用料無料の料金設定も相まって、毎月のパケット使用量が料金換算で約13万円分(昨年12月~今月までの平均値)となっているからです。
また、携帯電話によるパケットの使用については、同時に個人が使用する電波の通信料に比例し、これらが全ての携帯電話所有者によって無作為に使用された場合、携帯電話の各メーカーが国から許可されている電波の使用料が、あっという間にパンクしてしまうため、各メーカーごとに各所有者に対して使用量実績に応じた次回使用量に対する制限をかける対策により、緊急時の回線確保が図られているようで、私もこの制限を毎月受けているような使用状況(使用環境)にあります。
上記については、国(総務省)が進めている「テレビのアナログ電波を、デジタル化させる政策」の完全な移行により、緩和されることがすでに報じられているので、今後は改善されていくことでしょう…。

さらに、携帯電話について簡単に説明させていただきますと、この端末は無線免許がいらない小電力無線機の一種であるため、端末自体が電波を発するとともに電池を消耗します。
そのため、私のように電波の使用頻度が多ければ、それに比例して電池の消耗は著しくなりますし、電波環境によっては消耗度がさらに増すこともあります。

以上のことから、携帯電話と電力の関係は、けっこう密接な問題だと思います。
その上で、ソフトバンクの孫社長のこのたびの発言などは、とても喜ばしいことであり、勇気ある決断の上での素晴らしい行動だと思います。

感謝礼拝

投稿: 阿部裕一 | 2011年5月25日 13:42

個人的には孫さんの方向は素晴らしいし、頼もしいし、心の中で快哉を叫んでるんですが、送電を既存電力会社が独占している限り、孫さんがどれだけ安価で素晴らしい電気を作っても流してもらえないかも知れません。

発送電分離のためには電気事業法の大改正が必要なんでしょうが、電力業界の労組は反対するような気がします。そうだとしたら民主党は動きずらいような、、、。

孫さんがそちらのロビー戦略も用意していることを期待します。

投稿: 辻井映貴 | 2011年5月25日 19:07

 総裁谷口雅宣先生
合掌 有難うございます。 このたびの大震災にあ
   たり、太陽光発電が本格的化するような様
   相があり、それに対して孫さんの存在を知り
   太陽光発電の大なる力となれば総裁先生の深
   い思いと共に、世界の国々の考えも大きく変
   化していくことになるよう希望しています。  
   ますます祈りを深め奪わない生活の実現に
   努めてまいります。因みに慣れない電動自
   転車を五日前から20キロ範囲使用することで
   少なからず、喜びを感じております。
                  感謝合掌
                足立冨代拝  
   
   

  

投稿: 足立冨代 | 2011年5月25日 23:52

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