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2011年5月10日

「めんどくさい」が世界を救う (6)

 私はしかし、ここで人類の将来について絶望的な見解を述べようとしているのではない。私は先に、「ネット社会の発達と音声・映像技術の進歩」に触れた時、これが環境からの直接的フィードバックの不足を「十分補える」という考えに否定的に反応した。ただし、それは全面否定ではない。人間が環境に対して全人格的な触れ合いをもてないことを、インターネットやハイビジョン放送は「十分補える」ものではない。が、不足分を「部分的に補う」ことはできると考える。そして、現にそのような事実が近年目撃され、あるいは多くの人々によって体験されている。

 今年の初めのエジプトでの反政府デモを皮切りに続いている、アラブ諸国でのいわゆる“ジャスミン革命”の動きは、インターネットや携帯電話の技術の進歩とその普及なくしては考えられない。数千キロ、数万キロも離れた土地の無名の人々が、同じアラブ系であるという理由だけで、他国の政治に重大な影響を与えるなどということは、国際政治の歴史ではかつてあり得なかったのではないか。それが大々的、連鎖的に起こり、今にいたっても継続している。その重要な原因の一つに、映像や音声情報の高品質化による生々しさ、テキストメッセージの即時性とリアリティー、フェイスブックなどのソーシャルメディアによる双方向、多方向の自在なコミュニケーションの普及があったことは、疑う余地がない。しかし、それによってこれらの民主化の動きが適切に組織され、政治的に効果的に--つまり、犠牲者を最小限に止めて--行われたかどうかは、まだ判断できないと思う。

 また、2010年1月に起こったハイチの大地震や、その後のチリ大地震でも、情報伝達や被災者救援の活動にインターネット技術が大いに役立ったことは確かである。同じことは、今年の東日本大震災についても言えることだ。が、災害当初の“初動的”な対応や救援の段階を過ぎて、中・長期的な視点に立った被災地復興をするためには、人が実際に現地に入って「環境からの直接的フィードバック」を受けながら対応し、対策を講じなければ判断を誤ることは必至だろう。

 このように考えてくれば、人間と自然とが調和し共存する世界を実現するためには、効率を優先した技術の開発や、音声・映像・通信手段の発達だけでは全く足りないのである。それらは目的達成に役立てることもできるし、その逆に目的の阻害要因にもなる。最も重要なことは、できるだけ多くの人間が、自然界と全人格的に触れ合う機会を増やすことである。効率面から見れば、その触れ合いは本質的に「めんどくさい」ことであり、「手間がかかる」ことであるかもしれない。が、それによって人間は言わば“完体”となる。人間が本来備えている多面的な能力が開発されるのである。そして、自然の一部として存在しながら、しかも自然を理性的に理解し、また感情的に共感しながら、自然を育て、自然に育てられ、自然と共に伸びる道が開けてくると私は考える。

 谷口 雅宣

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コメント

合掌ありがとうございます。

総裁先生のブログをいつも拝読させて頂いております。

私を含め多くの人は、何事に対しても楽な方へ楽な方へと考え行動してしまいます。

小さな事ですが、今の季節は草木がどんどん伸び、草取りが大変です。いつも「めんどくさい」なあと思いながら草取りをしていますが、先生のブログを読ませて頂き考えを改めました。こらからは「めんどくさい」と思わず草取りをしていきたいと思います。

しかし、生きていく中で一番「めんどくさい」と思うのは人間関係ではないでしょうか?人と人との関係、それぞれの人の性格、考え方、感情が入り混じっています。
時には、大自然の中に行って、ひっそりと生活したら楽だなあと思うことがあります。でも、色々の事情があり、そういう生活ができません。
現在は、休みの時に山や自然と触れ合い、まるで神様の手の中にいるような気持ちになり、リフレッシュしているような次第です。

一番「めんどくさい」人と人との交わりをどのようにしたら良いのでしょうか?

(今、世の中には迷っている人が多くいます。それは「うつ病」の人が多くなっていることでわかります。)

つたない文章で申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。      再拝
   

投稿: 田中輝代 | 2011年5月13日 12:09

田中さん、

>>一番「めんどくさい」人と人との交わりをどのようにしたら良いのでしょうか? <<

 ええと、私のこの6回シリーズの結論は、「めんどくさいことをめんどくさがらずに、ていねいに、感謝してやるところから、世界平和への道が開ける」ということでした。しかし、貴女は、それはできないとおっしゃるのですか?

 人間関係は確かに「めんどくさい」という側面はありますが、「だからやらない」ではなくて、「だからやる」というのが、私のこの文章の趣旨なのです。恋愛なんて、考え方しだいでは「めんどくさい」の最たるものではないでしょうか? でも、それをやって貴女は後悔していますか?

投稿: 谷口 | 2011年5月14日 22:59

合掌ありがとうございます。

 お忙しい中、私の質問にお答えくださりありがとうございます。

 総裁先生のご文章から先生が言われたいことを理解できなかったようです。総裁先生のご文章は私に読解力がないせいかとても難しく感じます。申し訳ございません。

 「めんどくさい」ことを「感謝してやる」ことにより、今まで見えなかったものが見え、心は楽しい方向に向かうのですね。
 言葉だけの感謝ではなく、全ての人に物に事に、心の底から感謝できるよう努力していきたいと思います。ありがとうございました。    再拝

投稿: 田中輝代 | 2011年5月15日 23:55

田中さん、

 難解な文章で申し訳ありません。

投稿: 谷口 | 2011年5月16日 12:58

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