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2011年2月25日

ある日、デンマークを超えて

Nighttree  水曜日は、我々夫婦にとって“ウィークエンド”に当たる。前回のウィークエンドは、代官山でゆっくり過ごした。そこに中庭から立派なケヤキが聳えるヨーロッパ風のレストランがあり、「一度夕食を一緒に……」などと話していたのだった。道路側が軽食レストラン、ケヤキを挟んだ奥の方が高級レストランになっている。後者は、1万円以上のディナーしかないので我々の性分に合わない。で、手前の道路側の店の窓際に席を取って、ゆっくり食事をした。そして食後には、その立派なケヤキの写真を撮った後に、周辺を散歩した。

 沿道の建物の何軒か先に、デンマーク大使館がある。「Royal Denmark Embassy」という文字を読まなければ、そこが大使館だと気づかないほど、ものものしくなく、明るい色の普通の建物である。
 
 その前を通ったとき、妻がこう言った。

「ああ、デンマークに行きたい!」

 私は、そんな気持にはならなかった。デンマークがどんなところだか、よく知らないからだ。もちろん“情報”としての知識はある程度ある。その国が北欧の一国であり、北海をはさんでノルウェーやフィンランドと向かい合っている……という地理は頭に上ってくる。また、「ダニッシュ・ペーストリー」という艶やかな菓子パン、そして有名な海辺の人魚像……それくらいは知っているが、しかし「ああ、行きたい」とは思わなかった。

 ところが妻は、そう行った後に、
「チボリ庭園」
「ディアガルテン」
「オーデンセ」
「ダンスク」
「トラファルゲ」
「……」
 などと、私の知らない横文字を連発するのである。

 彼女が「ああ、行きたい」と思うのは、もちろん彼女がデンマークに行ったことがあるからだ。航空会社の客室乗務員だったから、何も不思議な気持ではない。それに彼女は料理好きで、食器にも造詣が深い。かの国には「ロイヤル・コペンハーゲン」という高級食器のブランドがあり、それを現地調達していたほどだ。聞いてみると、約10年の仕事の中で5~6回当地に滞在しているという。だから、彼女の「行きたい」という思いは、私がもし「行きたい」と思ったとしても、それとは全く質が違うのだ。いろいろな体験をした思い出がまだ生き生きと残っているから、彼女はそう言うのである。
 
 私はその時、この2人の違いから得た、まったく別のことを考えていた。それは、人間が古くからもつ不思議な性向についてである。

 谷口 雅宣

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