アラブ諸国が揺れている (3)
前回(2月1日)、この題で書いてから3週間で、チュニジアに始まった“ジャスミン革命”はエジプトの政権を倒し、バーレーンに政変を起こし、その隣国・リビアを2分させている。エジプトとは対照的にリビアでは、長期独裁を続けてきたカダフィ大佐が「最期まで戦う」と宣言し、自国民を空爆するなどの暴挙に出ているため、犠牲者増大が止まらないという悲惨な状態が続いている。旧宗主国・イタリアの外相によると、リビアでのこれまでの死者は「約1千人」に上るらしい。このカダフィ氏の暴挙には、政権中枢の人々もさすがに嫌気がさし、一部の将校や軍の離反、海外駐在外交官の辞任表明があり、欧米諸国は自国民を避難させるために軍用機を派遣するなど、“内戦状態”と呼べる情勢だ。
これに伴って、石油価格の上昇が顕著である。これは前回の予想通りだ。特にリビアは、石油の埋蔵量が「世界8位」と言われているため、この地の混乱が長期化するとの予想から、原油高騰が続いている。日本への影響について、24日付の『日本経済新聞』は「政情不安がリビア以外の産油国にも拡大すると、原油輸入の9割を中東に頼る日本の調達に支障が出る恐れもあり、政府・日銀は国内景気への影響に警戒を強めている」として、アラブや北アフリカの“革命の連鎖”に懸念を示している。同紙によると、欧州市場の北海ブレント原油は1月末、2年4カ月ぶりに1バレル100ドル台に乗せ、2月23日には110ドル台に上昇した。また、ニューヨーク市場のWTIも、この日、1バレル98ドル台になった。さらに、中東産ドバイ原油は24日午前、東京スポット市場の4月渡しで109ドルになったという。
この中東の“民主革命”に関連して、アメリカが外交政策を転換する可能性について本欄(2月14日)に書いた。革命後の新政権の行方を、あくまでもアラブ諸国の自己決定に委ねるとすれば既定方針(イラクやアフガニスタンからの撤退)通りであろうが、新政権へ影響力を行使する態度を表明すれば、方針転換の可能性が生まれる。この微妙な問題に、1つ答えが出たようだ。それは、オバマ大統領が23日、対リビア制裁のために「あらゆる選択肢」を検討するよう関係省庁に指示したことを明らかにしたからだ。この際、同大統領はカダフィ氏の行動について「言語道断(outrageous)で容認できない(unacceptable)」と強く非難した。これは事実上、リビアの反政府勢力への支持表明である。支持した後に撤退することは難しい。次の動きは、バーレーンの米軍基地の増強になるのだろうか。
ところで、こんな時に歩を合わせたように、22日、ニュージーランドの南島で大地震が起こり、クライストチャーチ市などで多くの建物が損壊・崩壊した。日本人の語学留学生を含む多くの人々が犠牲になったことは、誠に残念であり胸が痛む。関係者の皆さんに心からお見舞い申し上げます。
谷口 雅宣
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コメント
ありがとうございます。
函館教区青年会の奥田健介です。
いつも先生のブログ楽しみです。
ちなみに野鳥はそのまま霊界に飛んでいくのは
野鳥にGPSをつければわかりますよね!父のアイデアです。
投稿: 奥田健介 | 2011年2月25日 17:39