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2011年1月11日

ローマ法王新年のメッセージ

 東京にあるローマ法王庁大使館から教皇ベネディクト16世の元旦のメッセージ「平和への道としての信教の自由」(Religious Freedom,The Path to Peace)を郵送していただいた。信教の自由の価値を強調し、それを妨げる勢力に反対し、それを奪われている信徒に対して信仰を守るよう激励する内容だ。この種の正式メッセージが私宛に届くのは初めてだったので、注意して読ませていただいた。英文のメッセージに、カトリック中央協議会事務局による日本語訳がついている。が、かなり難解な文章だった。カトリックで使われる用語に私自身が不慣れであるためかもしれないが、扱われている主題が生長の家が目指すものとも大いに関係しているので、本欄で紹介すべきと思う内容について少し書いてみよう。
 
 ローマ法王庁は1月1日を「世界平和の日」として、この日に向けて毎年メッセージを出しているようだが、今回のメッセージの日付は昨年の12月8日だ。このタイミングで「信教の自由」に関して教皇が危機感を抱いていたと思われることは、2つある--①イラクを含む中東でのキリスト教徒の迫害、②中国政府によるカトリック教徒の支配。実際、昨年のクリスマスに際してベネディクト16世が発したメッセージには、この2つが含まれていた。12月27日付の『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』によると、教皇は2003年のイラク戦争開始時点から、中東地域にいるキリスト教徒の窮状について特に心配していたらしい。この地域では、イラク戦争を“キリスト教国のイスラームに対する攻撃”と捉える見方が支配的だったからだ。そして、この問題は、昨年10月に行われた世界代表司教会議(シノドス)でも話し合われたという。
 
 12月24~26日の上掲紙によると、イラクでは、テロへの恐怖から昨年のクリスマスには公的な祝祭が一切行われなかったらしい。祝祭だけでなく、サンタクロースの恰好をすることもやめるように通達が出された。なぜなら、10月31日には首都バグダッドのキリスト教会で68人が殺され、その後も同教会近郊のキリスト教徒居住地は爆弾攻撃にさらされたし、アルカイダ系の過激派からの脅迫もあったからという。その結果、イラクにいた約千組のキリスト教徒の家族が国外へ脱出したらしい。
 
 これに加えて、中国とバチカンとの関係は悪化している。1月8日の『朝日新聞』には、昨年11月に、中国政府の息がかかったカトリック団体が教皇の意向を無視して司教を任命したこと、また12月の上旬には、北京市内の老舗ホテルで中国カトリック教会(天主教)の人事などを決める最高議決機関が、政府によって秘密裏に開かれたことなどが書いてある。ベネディクト16世はこれらに抗議して、クリスマスのメッセージでは、中国国内の信徒を特定して、「彼らの信教の自由と良心の上に科せられた制限や重圧に負けない」よう激励している。中国国家宗教局の統計では、同国内のカトリック教徒数は約400万人らしいが、非公認の教会を含めるとその数は1200万人になるという推計もある。
 
 さらに、今年に入ってからは、エジプトでキリスト教徒への攻撃があった。これはまだ、読者の記憶に新しいかもしれない。攻撃に遭ったキリスト教徒は「コプト教徒」と呼ばれ、1月1日の未明に、エジプト北部の地中海を臨む都市、アレクサンドリアで、新年のミサが行われていた教会前で爆発が起こり、23人が死亡し、100人近くが負傷した。この攻撃に先立って、イラクのアルカイダ系組織の警告があった。12月23日の『トリビューン』紙によると、アルカイダのイラク前線組織である「イラク・イスラム国」(The Islamic State of Iraq)は、ウェブサイトを通じて、エジプトのコプト教会に捕らえられた女性2人を解放しないかぎり、イラクでのキリスト教徒の攻撃を続けると宣言した。この脅迫は、エジプトにいるイスラーム過激派が、それ以前にコプト教会に対して同じ非難をしたことを受けたものだ。が、コプト教会ではその事実はないと否定している。
 
 コプト教会は、紀元1世紀ごろからエジプトで独自の教義を発展させたキリスト教の一派だから、カトリック教会には所属しない。しかし、エジプトの人口(約8300万人)の1割を占めると言われるから、教皇ベネディクト16世の新年のメッセージにある「信教の自由」への心配には、これらのキリスト教徒の窮状が含まれていることが十分考えられるのである。このような背景を知って今回のメッセージを読むと、教皇の危機感が理解できるのである。
 
 谷口 雅宣 

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