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2011年1月 8日

「SNS」という国

「SNS」という言葉が脚光を浴びている。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(social networking service)という英語の頭文字を取ったもので、日本語では「交流サイト」とか「人脈サイト」などと訳されることが多い。生長の家では3年前、前生長の家総裁、谷口清超先生が逝去された際、アメリカの大手SNS「フェースブック」(Facebook)上に清超先生への感謝の言葉を登録するために、「谷口清超先生、ありがとうございます!」(2008年10月30日本欄 )というサイトを作ったのが、初期の利用だった。その後、2009年1月には、同じフェースブック上に英語でネット誌友会をする「生長の家ブッククラブ」というグループを作って活動した。(2009年1月25日本欄参照 )また2009年には、日本語、ポルトガル語、英語の3カ国語による非公開の作業グループを同サイト上に作って、日本、ブラジル、アメリカの3カ国の幹部によって、その年の「世界平和のための生長の家教修会」の準備をした。
 
 これらの活動によってSNSの効用が明らかになったので、2009年の11月には、生長の家独自の交流サイト「ポスティングジョイ」(postingjoy)を発足させ、ネットを通じて“喜び”を広める活動を開始し、約1年後の昨年10月には、この活動をさらに世界に広げようと、ポスティングジョイの「ポルトガル語版」と「英語版」のサイトを立ち上げたのだった。(10月7日本欄)今日現在、同サイトの日本語メンバーは2008人だが、ポ語メンバーは356人、英語メンバーは41人である。
 
 これに対して、世界の人々のSNS利用は爆発的に伸びている。『日本経済新聞』は年初からSNSの急成長を特集記事で伝えているが、その中で、アメリカの著名投資家、ジョン・ドーア氏(John Doerr)の言葉を引用して、SNSは80年代のパソコン、90年代半ばのインターネットに次ぐ「第3の波」だと形容している。なぜなら、ミニブログのツイッターの利用者は2億人になり、フェースブックの会員にいたっては5億人にも膨れあがっているからだ。「5億人」という規模は、中国の人口(約13億5千万人)、インドの人口(約12億人)に次ぐ人数だから、世界第3位の“人の集団”がネット内の1サービス上で常時活動していることになる。さらに、フェースブック外のネット利用者も含めた“ネット人口”は、今や「20億人」に上ると推定されている。これらの人々は基本的に教育があり、パソコンを使える“中産階級のインテリ集団”だから、それを無視した活動は、政治的にも、経済的にも、また宗教運動としても、今後は世界から取り残されていくことになるだろう。

 この中で日本のSNSを見てみると、その違いに気がつく。1月7日付の『日経』の記事では、2009年時点での日本のネット利用者数は、総務省の統計で9408万人にもなるが、SNSの利用者は携帯電話経由が多く、携帯向けSNSサイト利用者数が約4500万人。パソコン向け大手の「ミクシイ」利用者は2千万人以上という。つまり、携帯偏重の傾向がある。しかも、自分の実名を使うことが少ない。というよりは、日本のSNSの“仕様”として仮名を使うことになっている。これに対して、フェースブックやリンクトイン(LinkedIn)などアメリカ発祥の大手SNSは実名が原則だ。この違いは重要だと思う。
 
 本欄の読者はご存じと思うが、私は本欄へのコメントの書き込みを実名でお願いしている。何らかの事情で実名でのコメントが難しい場合は、個人的にメールで実名を教えていただいた場合は、コメントを公開する場合がある。なぜなら、ネット上での仮名を使った発言は基本的に無責任だからだ。これは、匿名での手紙の内容に信憑性がないのと同じである。また、顔を隠して人と話をすることで、信用など得られないのと同じである。それが社会の常識であるはずなのに、日本のSNSでは、常識がまだ通用しない。それは恐らく、わが国ではネットが一種の“社会からの逃避場”とされている要素がまだ強いからだろう。

 これに対して実名で書き込む情報は、信用を得やすい。信用される情報は、正しく使えば社会を動かす力をもっている。例えば、昨年来、大規模リコールでブランド・イメージが傷ついたトヨタ自動車は、フェースブックを使って利用者の好意的な声を拾ったところ、1万人以上の参加を得て、その一部をテレビCMに流してイメージ挽回を図った。また、コーヒーチェーン最大手のスターバックスは、同じフェースブック上に設けたファンページを通じて、約千九百万人にメッセージを伝えているし、スポーツ用品大手のナイキも、ファンページに350万人の“ファン”を抱えて、消費者との直接交流を図っている。

 日本人の中にも実名で自分を語る利用者は増えつつあり、7日の『日経』の記事は、フェースブックの日本からの登録者数が200万人を超えたと推測している。このような流れもあるため、私も最近、フェースブック上に「生長の家総裁」(Seicho-No-Ie President)のファンページを立ち上げた。英語のページでまだ参加者は少ないが、ネット社会における“パイロット・オフィス”のつもりである。興味のある読者は、覗きにきてほしい。
 
 谷口 雅宣

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コメント

新しい このような試みを歓迎します。世界中を視野に入れた画期的事ですね瞬時に情報を共有できてまた 自分も参加できるなんて 夢みたいです。

投稿: 大田 佳子 | 2011年1月10日 23:55

 ありがとうございます。
先日TVでもこの話題の特集があり、拝見しました。
映画でも「ソーシャル・ネットワーク」(邦題)と言う題名で公開されるそうです。
 この特集の中で、フェイスブックジャパンの担当者は、3年位で、5,000万人が目標だと言われていました。
 総裁先生のこの文章と、TVの特集で、ネット上で何が起こっているのか理解した気がします。
ありがとうございます。

投稿: 国枝基広 | 2011年1月11日 15:31

確かに日本では仮名でのSNSは気軽に書き込みできるという点もあるが、その反面、誹謗、中傷の場となりかねないと思います。だから実名での投稿を原則とした方が信頼性、安心感があって良いと思います。

投稿: 本田 真弓 | 2011年1月11日 22:52

この記事へのコメントは終了しました。

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