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2010年12月25日

訪問者 (4)

導師--君もエジプトに長くいるから分かっていると思うが、中東の多くの人間は、西洋社会からの圧力を快く思っていない。自由な西洋社会に魅力を感じると同時に、自由が生む放埒の邪悪さを否定したいのだ。その矛盾した感情は、サダムやビンラーデンがいてもいなくても変わらない。西洋と中東社会の歴史的関係から来たものだ。
情報将校--それがある限り、テロは消えないというのか?
導師--そうは言っていない。テロを決意させるものは、サダムやビンラーデンではない可能性はあるということだ。
情報将校--アブダル……中東の一般市民は、自らテロリストなどにならない。彼らに歴史的な西洋コンプレックスがあったとしても、その心情をうまく操作して良心を沈黙させ、大量殺戮に導くためには、洗脳し、狂信を植えつける誰かがいなくてはならない。そいつが“悪の根源”だ。
導師--ジョン。私は政治的な、あるいは宗教的な指導者が、その国の市民の行動に大きな影響力をもつことを否定しない。いや、エジプトを含めた中東の多くの国では、政治家や宗教指導者は、アメリカやヨーロッパよりもはるかに大きな影響力を市民に対してもっているだろう。しかし、国民の中の少数がテロをやるという事実をもって、その国の指導者が“悪の根源”だとするのは短絡的すぎないか?
情報将校--私は、そんなことを言っていない。アブダル、こんな言い方をすると君は怒るかもしれないが、彼ら指導者は本質的にマキャヴェリストで、国民は教育を受けていないから、指導者の思い通りに動いてしまうのだ。
導師--それは、どういう意味だ?
情報将校--例外はもちろんあるが、多くの中東の政治家は、国民の中にある「反西洋」の感情を利用して、国の統一を図るという政策をとってきた。「外敵を作ることで内政を固める」という伝統的な政治手法だ。しかし、その一方で、国民の権利を、特に女性の権利を拒否してきた。その方が、統治しやすいからだ。彼らは古い社会秩序を護るために女性を虐げ、イスラエルと西洋という二大仮想敵国を利用してきた。その結果、国民の中には「反西洋であること」が正しく、望ましいと考える悪い伝統が育ってしまった。
導師--ちょっと待ってくれ、ジョン。君の言っていることは矛盾している。さっきまでサダムとビンラーデンだけが“悪の根源”だと言っていたのに、今度はイラク以外の国の指導者もマキャヴェリストで悪者だと言っているじゃないか?

 谷口 雅宣

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