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2010年12月23日

訪問者 (2)

導師--ジョン。私はアメリカの外交政策を論評するつもりはない。それは、ジャーナリストや政治家がする仕事で、すでにいろいろの立場からたくさんの論評が出ている。でも、アメリカの外交政策を執行する立場にあるあなたのような高官が、善悪の見境がつかなくなるというのは、大変な問題だ。エジプト人を含めた大勢の中東の人間が、君の国の巨大な影響力にさらされているからだ。自分の仕事に疑念があるなら、職を辞すという選択肢はあるのだろう?
情報将校--それは……ある。が、辞めてしまえば、自分が善行だと信じてやった多くの行為の取り返しがつかない。
導師--でも、ジョン、君は上司の命令に従っただけではないのか?
情報将校--ずっと、そう考えてきた。私は情報を上に伝え、彼らが判断を下す。その際、私は将校の立場から意見を付すことをしてきた。その意見が間違っていた場合、責任の一端は私にもある。
導師--それはそうだが、そういう情報の誤りがあっても、政策決定者は最終的な責任を負うはずだ。なぜなら、彼らは、情報が間違う可能性も予期して判断するのが、仕事だからだ。
情報将校--法的には、確かにその通りだ。が、私が悩んでいるのは、人間としての倫理の問題なんだ……。
導師--というと……?
情報将校--「コラテラル・ダメージ」という言葉があるだろう?
導師--ああ、ある。懐かしい言葉……戦略論の授業で習った。軍事攻撃によって一般市民が受ける被害のことだね。
情報将校--そう。それを最小限に収めながら目的を達するのが、我々の目標だ。ところが、市民への被害がどんどん広がっている。
導師--何のことを言っているんだ?
情報将校--我々にとっては、ビンラーデンとサッダームが攻撃目標だった。それ以外は、本当に悪いヤツはいないと考えた。
導師--ジョン、君はイラク戦争の作戦に関わったのか?
情報将校--それを聞かないでくれ。言っただろう、答えられない質問なんだ。
導師--わかった……。
情報将校--ビンラーデンは、信念と財力とカリスマをもった指導者だが、意図が我々とまったく相容れない。アメリカ社会を破壊することが目的だ。サッダームは、中東に覇権を確立して石油を支配し、我々の同盟国・イスラエルの殲滅をねらっていた。
導師--それとは違う評価もあるが……。まあ、先を続けたまえ。

 谷口 雅宣

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