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2010年11月 3日

カメの長老

 ある島に、ウサギとカメが住んでいました。ウサギはすばしこくて、走るのが得意で、いつも競走相手をさがしていました。カメはゆっくり動くのが好きで走るのは遅かったですが、自分のまわりのものによく気がついて、ていねいで、根気強いのでした。

 カメはそういう自分の性格が好きでした。自分の住んでいる島には、ステキなものが満ちあふれていて、それを毎日目にし、鼻先でつついて匂いをかぎ、あるいは手や足で触ってみることで、いつも新しい発見があるのでした。でも、このあいだウサギと話をしたとき、ウサギから「ノロマのおまえは鳥と関係ない」と言われたのが、くやしくて仕方がないのでした。鳥はカメの仲間の爬虫類から進化したから、カメにとっては“親戚”です。鳥とはまったく別の哺乳類のウサギに、そんなことを言われる筋合いはないと思いました。でも、ノロマという点では、自分がウサギより遅いのは確かでした。
 
 カメはある静かな秋の日に、ゆっくり歩いてカメの長老がいる森まで行きました。こんどウサギに「ノロマ」呼ばわりされたときに、どう言い返せばいいか、教えを請おうと思ったのです。
 
カメ--長老さま、長老さま。お願いがあってまいりました。
(岩のように大きいカメの長老は、木の根元に横たわったまま、目を瞑っている)
カメ--長老さま、起きてください。目を開けてください。教えていただきたいことがあるのです。
(カメの長老は片眼だけ開き、若いカメを見る)
長老--そんなに大きな声を出すものじゃない。私の耳はよく聞こえている!
カメ--ああ、これは失礼しました。眠っておられるのかと思いました。私に教えてください。
長老--何のことじゃ。
カメ--ウサギに何と言えばいいのでしょう?
長老--何があったのじゃ?
カメ--ウサギにノロマだと言われました。
長老--昔からそう言われておる。
カメ--でも、昔はウサギと競走して勝ちました。
長老--それは1回だけじゃ。
カメ--ノロマは、鳥とは関係ないと言われました。
長老--ノロマでも、鳥との関係はある。
カメ--そうですよね。私もそう思います。でも、どう関係があるのでしょう?
長老--鳥はいくら速く飛んでも、いずれもどってくる。カメは動かないから、その時すでに元の場所にいる。それを見て、鳥は安心するんじゃ。どちらが優れているかな?
カメ--ああ、そう考えれば、カメはいつも勝ってますね!
長老--勝ち負けのことではなく、どちらがエネルギーのムダが少ないかだ。
カメ--動かない分だけ、カメはムダをしてません。
長老--だから、鳥より長生きだし、ウサギよりも長生きだ。
カメ--ツルは千年、カメは万年ですからね!
(長老、甲羅を揺すって大いに笑う)
長老--アーハッハ、アーハッハ……。それは人間が作った架空の話だ。本当は、カメは150歳が最長記録だし、ツルはそれよりずっと短い。
カメ--へぇー、長老さまは何でもご存知なのですね。

 カメは、自分の体の倍ほどもある長老ガメを見上げ、その山のような甲羅の大きさが長老ガメの偉大さを表している、とつくづく思いました。
 
 谷口 雅宣

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