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2010年11月17日

ハナミズキとイチョウ (2)

Gingkotree  秋になると、赤くなり黄色くなった木々の葉は、枝からハラハラと落ちていきます。人の目には、葉が落ちるのは、雨や風や乾燥などで、木々がやむを得ずにそうするように見えるでしょう。もっともっと枝に付けておいてほしいのに、寒さや冷たさがむりやりに、葉を木々から奪い取る……でも、本当はそうではないのです。木々は、ちゃんと考えて、適当な時期に適当な数の葉を、枝から放すのです。風に吹かれて飛ばされてしまうのではなく、本当は自分で選んだ葉を、風に乗せて送り出すのです。
 
 何のためだか分かりますか? それは、近くの木とお話するためです。もちろん人間とは違いますから、言葉を使っての話ではありません。色と音と、触覚を使うのです。サクラの葉が紅葉すると、あんなに多くの色を葉の表面に浮き出させるのは、このためです。サクラは、とってもおしゃべりなのです。いろんなことが言いたくて、いろんな色を発色し、その葉が別の木の葉と触れ合うとき、メッセージを伝えます--
 
カサカサ、コソコソ
サクサク、サカサカ
 
 サクラの葉の縁が、どうしてギザギザなのか知ってましたか? あれは、音がよく出るためです。それに、せっかく触れた別の葉と、離れたくないからです。ギザギザを相手のギザギザにひっかけて、もっと話がしたいのです。
 
シキシキ、スクスク
サキサキ、ソコソコ

 幹線道路の入口に立つイチョウが黄葉すると、北風に乗せて葉をサカサカと送ってきます。ハナミズキは、それがイチョウの好意のしるしだと知っていました。でも、扇形のイチョウの葉は、なかなか風に乗りにくいのでした。イチョウの木から5~6メートル飛ぶと、そこに落ちてクルクル回転します。その上を自動車が走ると、湿ったタイヤがイチョウの葉を道路に貼りつけてしまいます。また時々、とんがった女の人のハイヒールが、その葉を裂いていきます。裂かれても、砕かれても、イチョウの葉は風を使って、ハナミズキの立っている場所へ、少しずつ、少しずつ、近づいてくるのでした。
 
 ハナミズキはそれを見ながら、一所懸命に葉を落とすのでした。自分の紅い葉で、傷ついたイチョウの葉を護ってあげたい。砕かれるのを防いであげたい。そうすれば、自分の葉の下で、イチョウはまだ話ができる。自分の葉と触れ合いながら……。
 
シキシキ、シャカシャカ
チチチチ、キキキキ

 木々はこうして自分の“分身”を空に放ち、地に撒布して、互いに話をするのでした。

 谷口 雅宣

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コメント

季節柄、枝から葉が落ちた木を見ると、何となく寂しい気持ちになりますが、樹木は葉を散らせることによってお互いに心を通わせていたのですね!すごく温かい気持ちになりました。

動物と動物、動物と植物の物語はたくさんあっても、植物と植物という人物(?)設定は珍しいなぁと思いながら読ませていただきました。

投稿: 加藤裕之 | 2010年11月19日 00:12

 合掌 ありがとうございます。
感動しました!
植物への見方がゴロッと変わりそうです。
先生の感性の豊かさにもマイリマシタ。
気付かされ、教えられることに感謝します。
 私は、出講で理念(現れている底にある根本的なもの)を説明するのに、朝顔の話をします。
「種も双葉も花も朽ちた姿も、見える姿は変わって見えても、皆、素晴しいその生命の表現をしていること、それもずっと以前から延々とつながっている。どれも感動ものです。」
 動物と植物、見た目は違っても共通した素晴しいものがいっぱいあるとは、なんとすごいことか。
最近、長い目で見れば、鉱物も生き物じゃないか、と思うことがあります。
浦尾拝

投稿: 浦尾 道夫 | 2010年11月19日 01:11

総裁先生おはようございます。

何て美しいお話なんでしょう!!


紅葉する一葉一葉の個性美にうっとりはしていましたが、あらためて人間からの見方だなあと思いました。


木々の声を聴いてみたくなりました。


毎朝家の前の花水木の葉をせっせと掃き清めていて良かったかしら…??


今朝は聴いてみます。(笑)


ありがとうございました。

投稿: 宮池 香扶里 | 2010年11月19日 06:27

合掌ありがとうございます

ハナミズキをみているととても心が和みます。
ハナミズキは、約100年前、平和の使者として当時の東京市長がワシントンに桜を送り、その返礼とし日本にやってきましたと言われています。
また、一青窈さんの「ハナミズキ」という歌は、アメリカの9.11の事件後、平和を訴えたくて作られた曲だそうです。

ハナミズキは日米間で大きな関わりをもっており、また平和の象徴でもあるのですね。


今日も眼を閉じるとやさしい木々の声が聞こえてきます。

投稿: 平野明日香 | 2010年11月19日 07:06

合掌ありがとうございます。

ハナミズキやイチョウが葉っぱでお話するなんて、考えたこともありませんでした。感動しました。

ハナミズキとイチョウだけではありませんね。人間もいろいろな植物とお話ができますね。そう思いました。

私もお話してみます。きっと答えてくれますね。

ステキなお話をありがとうございました。

投稿: 松本桂子 | 2010年11月19日 10:35

合掌、ありがとうございます。
拝読させていただき、しみじみと、余韻が残っています。紅葉をこのように考えたことは、ありませんでした。驚きとともに、先生のお優しさに感動しています。
どうもありがとうございました!

投稿: 小林光子 | 2010年11月19日 12:34

立派な真っ黄色いイチョウの木ですね!

このような真っ黄色のイチョウの木を見ると、僕の通っていた小学校の校庭脇に植えてあったのを思い出し、とても懐かしい気分になります。

私は、どちらかと言えば、花より団子系なのですが、たまには、こういう身近な自然に心を奪われてみるのも良いですね…。笑

投稿: 阿部 裕一 | 2010年11月20日 19:38

皆さん、コメントありがとうございます。

この短編は、本部会館の前に立っているイチョウとハナミズキを見て発想しました。それで、“モデル”たちを写真に撮って貼りつけておきました。彼らのおかげです……。感謝、合掌。

投稿: 谷口 | 2010年11月20日 22:26

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