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2010年10月16日

自然に“触れる”ということ

 13日の本欄でキノコを採った話を書いたが、今年は全国的にキノコの“当たり年”ではないか、と秘かに思っている。というのも、私の山梨の山荘周辺にボコボコと出ていただけでなく、町の市場にも数多くの種が並んでいたし、少し離れた「美しの森」という広い斜面にも多種が出ており、14日の朝のNHKラジオでは「マツタケを6本採った」という岡山県の人の話をしていた。また、東京の自宅の庭のケヤキの根元からもナメコのようなキノコの群生が2回出ただけでなく、つい最近はモクレンの木からも、これまで見たことがない「イチョウタケ」らしい大型のキノコが顔を出していたからだ。これだけのサンプル数で「全国」を語るのは早いかもしれないが、そう考えると納得できる周辺情報もあるのだ。
 
 今日(16日)の『朝日新聞』は来春の樹木からの花粉の飛散量が、今年の10倍になるかもしれないと警告している。その理由は、「今年6~8月の平均気温は統計を取り始めた1898年以降最も高く、スギ、ヒノキの花芽の育ちが良い」からだという。前日に日本気象協会が発表した情報にもとづくらしい。そのこととキノコとの関係は定かではないが、八ヶ岳南麓の清里で夏を過ごしたという人に聞いたら、今夏の山は雨続きで、最近になってようやく青空が出だしたというのだ。この降水量の増大と長期にわたる高温続きが山地の植物を成長させただけでなく、キノコなどの菌類の成長にも一役買ったとは考えられないだろうか。もしそうだとすると、地球温暖化の影響は必ずしも“悪く”はない、との結論に急ぎやすい。
 
 だが、同じ日の『朝日』の「天声人語」には、キノコだけでなく、クマも“当たり年”らしいと書いてある。すでに報道されているように、クマたちは福井のデイケア施設や山形の中学校で人に被害を及ぼしているだけでなく、他の地方でも出没が増えているため、捕獲数は2006年以来の約5千頭に達する可能性を記事は示唆している。クマの出没の原因に関しては「ドングリの不作」説がよく言われるが、今年はそうでないかもしれない。というのは、私の山荘では、夜寝ていても、ドングリが屋根に落ちてコロコロと転がる音が盛んに聞こえたし、地面には落ちたドングリがゴロゴロしていたからだ。また、「天声人語」は、写真家の宮崎学氏の『となりのツキノワグマ』(新樹社)をもとにして、「クマの数は増えている」という説を掲げている。数が増えれば、民家の周辺に現れる確率も増えるということだ。
 
 それによると、宮崎氏はもう35年ほど前から、中央アルプスの獣道などに自動撮影装置をつけたカメラを仕掛けて動物写真を撮ってきたが、1982年からの3年間で1頭しか写らなかったクマが、2005年には1カ月で10頭も写ったというのである。だから、同氏は「人知れず、うんと増えているというのが定点観測の実感です。山で増えれば、里に下りる数も増す」と言っている。同じ日の『福井新聞』にも、福井県大野市が「クマ出没対策本部」なるものを前日に設置して、クマ対策に全庁体制で当たることを決めたことが書いてある。それによると、同市での15日までのクマ出没件数は77件で、この数は、2006年の386件(10月末まで)、2004年の203件(同)に次いで多いという。捕獲数は10頭で、うち2頭は射殺、8頭は放したという。

 こんな話を聞くと、私もそのうち“クマとの遭遇”を経験することを考慮しなければならないかもしれない。山荘周辺では、私はすでにイノシシ、シカ、キツネ、キジに遭っていて、雪の中にノウサギの足跡も発見している。また、だいぶ前のことだが、山荘のデッキ付近にウサギの片耳が落ちていたこともあるから、猛禽類も棲んでいるはずだ。となると、クマとの出遭いも覚悟しておいた方がいいのだろう。自然に“触れる”ということは、人間にとってリラックスできることだけではないのだとつくづく思う。
 
 谷口 雅宣

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コメント

 クマとの遭遇対策について
 現実的には、網を張る等のクマをよせつけない対策が必要であると思います。
 次に、クマは餌を求めて出没して来るわけですから、
クマが常時住んでいる居住空間に豊かに餌がある状態をつくってあげれば、例えば、トウモロコシ畑のトウモロコシを食い荒らすことも無いわけです。
 以上、シロウト考えかも知れませんが、そのように思います。

投稿: 志村 宗春 | 2010年10月18日 01:12

長野の祖母宅でもマツタケが大量に採れたとのことで、27年の人生の中で初めて大阪にお裾分けが到着しました。何と10本!!!焼いてお塩で有難くいただき、秋の味覚を満喫しました。

投稿: 白谷陽子 | 2010年10月18日 20:57

谷口雅宣先生

 今年の青森の夏は異常に暑かったです。
 10月17日の『東奥日報』によりますと、陸奥湾で養殖されているホタテ貝について、養殖始まって以来の大量のへい死が予想されているそうです。
 原因は海水温が例年より数度も高く推移してきているからで、稚貝の成長も悪いそうです。
 中には3年かかって育ててきた貝が全滅したところもあるそうです。
 10月に入っても海水温が高く養殖かごの引き揚げが遅れており、日を追うごとにへい死率は高まっているそうです。
 青森では温暖化の負の問題が出てきています。

投稿: 田中道浩 | 2010年10月18日 20:58

合掌 ありがとうございます

 いつも素晴らしいご指導をありがとうございます。
主人は光実で、一応環境プランナーの資格を持っておりますが、
今、山の動物達が、畑や里に出没している原因の一つは、
山犬を駆除したことによるのではないか、と申しておりました。

私ども30代の人間が子供だったころ、里と山の中間に、山犬が徘徊している状態が普通だったと思います。
それよりも以前は、家庭の犬は、放し飼いで、エサだけやる状態だったと祖母に聞いたことがあります。
犬達は、民家と山を自由に行き来していたことになります。

人間達は、かわいいからという単純な理由で、犬に餌をやっていたのかもしれませんが、
この、賢く、人間によく懐き、ききわけのいい性質の動物が、
人間と野生動物の中間に位置していたことは、適度なクッション材的役割をよく果たしていてくれていたのかも知れないと思いました。

山犬・野犬・野良犬という生態系の一角を崩してしまった結果、
畑・里は、かつてなかった悲惨な状態に陥っているのかもしれません。
猪一匹でも出ると、一夜にして、それまでの風景が一変します。
私共の田舎でも、まさかこんなことをと、あっけにとられるばかりで、どんなに人間が知恵をひねっても、野生の力には敵わない状態です。


狼の絶滅が一因とも言われていますが、
私ども関西の低い山では、狼が居たということを聞いたことがありません。
でも、山犬は、沢山いました。

それが一掃され、沢山殺されて行きました。
今現在も、各地の保健所では、飼いきれなくなったペットが殺され続けているということで、里親探しの案内をよく見かけます。

犬、猫が沢山子孫を産むという性質なのは、
やはり意味があってのことかも知れないと思いました。


           兵庫教区 松尾拝

投稿: 松尾 | 2010年10月19日 21:12

皆さん、
 いろいろとアドバイス、よいニュース、原因分析などを教えていただき、ありがとうございます。今朝の新聞には、北海道の町中の舗装道路をヒグマが2頭歩いている写真が載っていましたネ。温暖化が進行すると、こういう人間と猛獣との“触れ合い”が増えてくるのでしょうか? それとも、人間はクマを絶滅させるのでしょうか? 名古屋での生物多様性会議の行方が気になります。

投稿: 谷口 | 2010年10月19日 23:54

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