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2010年10月 9日

ミツバチはなぜ減少する? (3)

 何年か前に、私はアメリカなどでミツバチが減っているという話を本欄で書いたことがある。2007年の3月2日11月6日だった。この現象は、「群棲崩壊障害」(colony collapse disorder, CCD)と呼ばれていて、最初の正式な報告は2006年だったが、散発的なケースは2004年ごろから起こっていたらしい。原因としては、農薬や遺伝子組み換え食品などが取り沙汰されていたいたが、どうもそうではなく、2007年10月に科学誌『Science』に掲載された論文は、イスラエル産のウイルスの感染によるものと推定したが、確定してはいなかった。ところが、このほど米陸軍とモンタナ大学の研究チームが発表したところでは、菌類とウイルスが協働して及ぼした現象だという。7日付の『ニューヨークタイムズ』(電子版)が伝えている。
 
 CCDが起こる詳しいメカニズムはまだ分かっていない。しかし、“下手人”として疑われているこの菌類とウイルスは2つとも、涼しくて、湿気の多い天候の時に繁殖し、ハチの腹の中で“悪さ”をするという。だから、ハチの体内の栄養素が影響を受けるのかもしれない。CCDの原因究明で難しいのは、ミツバチたちは巣の中などの特定の場所で集団で死ぬのではなく、どこかへ散り散りに飛んでいって、孤立状態で死んでしまうことだ。こういう場合、ハチの死には数多くの原因が考えられるから、いろいろな場所から死骸を集めて調べても、そこから特定の原因を絞り込むことは難しいのである。ところが、モンタナ大学と陸軍のエッジウッド生物・化学センターの研究者たちが調べたところ、CCDの被害に遭ったミツバチのコロニーには、例外なく同じ菌類とウイルスの組み合わせが発見されたというのである。また、この菌類だけ、あるいはウイルス単独では、ミツバチに致命的な影響を与えないが、2つが組み合わさると死は確実になるらしい。
 
 この菌類は「N. ceranae」といい、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究で、すでにCCDの原因の一部だろうと言われていた。またウイルスは、何種類もに“嫌疑”がかけられていた。が、軍で開発された生物兵器の探索用のソフトウエアによって今回、それらとは別のウイルスが“犯人”として特定されたという。では、ミツバチたちはなぜ、死ぬ前に巣から飛び立っていくのか?--1つの説明は、菌類とウイルスによってミツバチの記憶が阻害され、巣へ帰還できなくなるというもの。もう1つの説明は、ミツバチの脳が一種の“狂乱状態”を起こすというものだ。いずれにせよ、2006年以降、アメリカではCCDによってミツバチのコロニーの20~60%が消滅してしまったというから、早く原因を確定してほしい。
 
 日本は、食品の原料や動物の餌などとして、アメリカから大量の穀物や果実を輸入しているから、決して“人ごと”ではない。世界の食糧難が予測されている中、植物の授粉に不可欠な役割を果たしているハチのありがたさを、改めて噛みしめる機会としたい。

 谷口 雅宣
 

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