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2010年9月24日

スーパー・サーモン解禁か?

 遺伝子組み換えによって通常の倍の速さで成長するサケが、まもなく市場に登場するかもしれない。アメリカの食品医薬品管理局(FDA)の諮問委員会が20日に会合を開き、普通以上の成長ホルモンを分泌するように遺伝子を組み替えた大西洋サケ(Atlantic salmon)は、健康にも環境にも安全であるという結論に達したようだ、と22日付の『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』が伝えた。ただし、アレルギー反応を起こす可能性については、結論がまだ出ていないようだ。この結論が正式なものとなれば、このサケは、アメリカの食卓に最初に導入される遺伝子組み換え動物になるという。同委員会では、消費者団体や環境団体の代表は組み換えサケは認可すべきでないと証言した。このサケが認可されるならば、環境への害が少ない糞を排泄するブタなど、他の組み換え動物の認可にも道が開かれる可能性があるという。また、このサケと同様、成長期間の短縮を目的とした遺伝子組み換えが研究されている魚は、今世界に18種あるというから、養殖魚類一般への遺伝子組み換えの道が開かれるかもしれない。

 同紙の記事によると、この“スーパー・サーモン”はチヌーク・サーモンのもつ成長ホルモン産生遺伝子と、別の魚(ocean pout)がもつ氷結防止遺伝子を組み込んであるという。これにより、通常のサケは冬季に成長ホルモンを産生しないところを、冬季にも成長を続けるため、通常の倍の速度で大きくなるという。開発したのは、マサチューセッツ州に本拠を置くバイテク企業アクア・バウンティー・テクノロジーズ社(AquaBounty Technologies)で、同社は、このサケが認可されれば、自然の海産資源を破壊することなく世界の食糧需要を満たすことができるとしている。また、このサケをアメリカ内陸部で養殖することにより、チリやノルウェーから空輸するより安価に大西洋サケを提供することができるという。
 
 遺伝子組み換え種の生物がもつ問題の1つは、自然界にある近似種と交雑することで、環境へ予想外の影響を与える危険性だ。これに対して同社は、このサケを内陸部の隔離された施設で養殖し、もしそこから逃げ出した場合も、周囲の環境がサケの生存に適しない塩水や温水であるような地域で育てるとしている。また、養殖を行うほとんどを繁殖力のない雌のサケとするから、自然界で交雑することはないという。同社の株価は、FDAの承認が得られるとの期待から、今年に入って3倍以上になっているらしい。

 この記事を読んで、私はかつて小説に書いた遺伝子組み換えニジマスのことを思い出した。また、このサケにはどんな飼料が与えられるのか、と考えた。穀物飼料が使われるならば、人間の食糧との競合は防げない。さらに考えたのは、「自然界から厳重に隔離して育てなければならないもの」を、人間は食料とすべきかということだ。これは自然観、人間観と深くかかわる問題で、人間を自然の一部と考える私は、肯定的に答えることはできない。アメリカという国は、これまでの遺伝子組み換え作物の利用状況などから考えて人間至上主義的だから、“スーパー・サーモン”の承認は時間の問題のような気がしている。
 
 なお、遺伝子組み換えニジマスを扱った小説は「銀化」と「銀化2」という2本の短篇で、『神を演じる人々』という短編集に収録されている。この機会に興味をもった読者のために、私の電子本サイトに2本を1本にまとめて登録した。
 
 谷口 雅宣

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コメント

「神を演じる人々」久しぶりに読ませて頂きました。“飛翔”は印象に残っていましたが、“銀化”は記憶に残ってなかったので。まさに、同じ話ですね。驚きました。
世界中の人々は、本当に、ここまでして食べたいと思っているのでしょうか?
きゅうりが採れればきゅうりを食べ、茄子が採れれば茄子を食べ、今は南瓜があるので、南瓜を食べています。南瓜を3個頂きましたから、しばらく南瓜が続きます。私はこう言う自然な食事が幸せで満足です。

ええと、キング.サーモンですか、生態系が心配です。

投稿: 水野奈美 | 2010年9月25日 20:10

水野さん、

>>きゅうりが採れればきゅうりを食べ、茄子が採れれば茄子を食べ、今は南瓜があるので、南瓜を食べています。南瓜を3個頂きましたから、しばらく南瓜が続きます。私はこう言う自然な食事が幸せで満足です。<<

 こういう心境に多くの人々がなることができたら、食糧問題はずいぶん軽減すると思うのですが……。「欲望」というのは、コワイものですね。尖閣列島にも向けられていますが……。

投稿: 谷口 | 2010年9月25日 22:41

谷口雅宣先生

青年会事務課の岡田です。
私は食品の流通会社に勤めておりました。


既にご存知かもしれませんが、先生が「銀化」で書かれていたようなことは既に起こっているようです。WWFのHPにも掲載されていました。なぜか“養殖魚が逃げ出して“いるようです。もちろん遺伝子組み換えではありませんが。

また、餌についてですが養殖業者に話を聞いたところ、主にサバ、アジ、イワシを与えるようです。海の資源(魚)が減ってきたため、最近では穀物を普通に与えていると聞きました。穀物とは大豆、小麦などでとうもろこしについては聞きませんでした。また、消費者の嗜好により与える餌も変わるようです。トロッとした脂の乗った魚が求められれば餌にイカの油を混ぜる…など。

その方の養殖場も知床の、人よりも熊が多い山奥にありました。

投稿: 岡田慎太郎 | 2010年9月26日 08:30

岡田さん、
 なかなか興味ある情報、ありがとうございます。
 養殖魚を食べることは、ウシやブタを食べるよりはよほどいいのですが、大量生産で大量消費を狙うという考え方があると、難しい問題が出てくるみたいですね。

 それにしても、クマは養殖場に来ないのですかね?(笑)

投稿: 谷口 | 2010年9月27日 15:55

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