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2010年7月12日

イメージショウはもうやめよう

 参議院議員選挙の結果、民主党が敗北し、自民党の復調とみんなの党の躍進が明らかになった。これまでの民主党の“業績”を見ていれば仕方ないことであり、今後かえってよい結果につながると私は思う。昨年の8月31日の本欄で、私は「民主党政権の誕生を歓迎する」と書いたが、そこにある日本政治への期待は今も少しも変わらないので、以下に一部を引用する--
 
「私は日本に2大政党制が到来することを待ち望んでいる。そういう意味では、野に下る自民党は崩壊してしまわずに、イギリスの保守党やアメリカの共和党のように、“自由尊重”と“現実主義”の立場から政策を提言し続けてほしいし、民主党は、イギリスの労働党やアメリカの民主党のように、“平等”と“理想主義”の価値を政策に反映させてほしい。まあ、これは英米の例にあえてなぞらえて書いたのだが、日本には日本独自の価値観の組み合わせがあってもいいし、またそうあるべきだろう。とにかく、現状のように、民主党も自民党も内部に“右”から“左”までの考えが混在している状態では、“どっちが政権を取っても同じ”という印象はぬぐい切れず、これが国民の間の政治不信と政治への無関心の原因となっている。今回の大変化を好機として、両党はぜひ政策論争を深めて、政治的に健全で、国民にとって有意義な“対立軸”を固めていってほしいのである」。

 今回の選挙結果は、鳩山氏から首相の座を譲り受けた菅首相が、選挙直前になって「消費税10%」を言い出すような“策に溺れる”態度に、多くの国民がイエローカードを渡す決断をしたと言える。これに加えて、堅実な自民党の選挙戦術が“小沢流”の豪腕戦術を上回った。つまり、民主党の驕りに国民が「ノー」の票を投じたということだろう。私が言っている“小沢流”とは、民主党が改選数2議席以上の複数区のほとんどで、2人の候補者を立てたことだ。これに対し、自民党は複数区では共倒れを防ぐために候補者を1人に絞り、1人区での勝利を狙う戦術をとった。危機感がそうさせたのだろう。その結果はご存じのように、参院の議席数で「民主-10」「自民+13」「みんな+9」「公明-2」となった。これにより、参院と衆院とで与野党の議席に“ねじれ現象”が生じたから、これからの政治運営は遅々としたものとなるだろう。その中で、今回躍進をとげた「みんなの党」が立ち回って“政界再編”をねらう……そんな構図が見えてくる。

 私は上に引用したように、日本の政治に“イメージショウ”ではなく、優先順位を明確にした“政策論争”を早く持ち込んでほしいのである。「みんなの党」というのは、党名からして政策がない。だから、どんな政策でもその時々の“風向き”に応じて取捨選択することが可能で、責任ある政党にはなり得ないと思っている。ところで、『ニューヨークタイムズ』紙の国際版である『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』は今日付の紙面で参院選の結果を報じているが、そこではみんなの党のことを「Your Party」と英語表記していて、その党名の前に「oddly named」という形容詞句を入れている。これは「奇妙な名前の」というほどの意味だ。これから推測すると、「みんなの党」の正式英語名が「Your Party」なのだろう。ということは、渡辺党首は「あなたの党」という意味でこの名称を使っているということになる。私は、こちらの党名の方がわかりやすいと思う。「あなたのための政策をやります」という意味に取れるからだ。しかし、「みんな」では、考え方の違う人間が大勢いるだろうから、それらすべてを満足させる政策などありえない。ということは、「無政策の党」あるいは「無策の党」になってしまう。いずれにせよ、この奇妙な党名は“イメージショウ”の延長線にあるとしか思えないし、その“煙幕”の背後には政治的野心が丸見えである。“政界再編”と”権力奪取“のためだけの政治家集団は、今の日本が必要としているとは思えないのである。

 谷口 雅宣

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コメント

谷口雅宣先生

 現在の日本の政界に関する状況を明確にお示し下さり誠に有り難うございました。

 ところで民主党に関しては私は自民党より有能で国民の事を良く考えて政治家が多いと判断していますが、左翼的な人もいる印象がしていて、今回の選挙は本当に困りました。

 で、みんなの党ですがこれが英語名がYour Partyとは驚きです。私はみんなの党っていう党名が最初から変だなと思っておりました。ご指摘の様に何か軸が無いというか。それが党利党略、政治的野心が背後にあるらしいという事で腑に落ちました。

投稿: 堀 浩二 | 2010年7月14日 12:24

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