緑の聖書
先日行われた生長の家教修会で、私は参加者に『The Green Bible』(=写真)というのを紹介した。これは、直訳すれば『緑の聖書』である。英語圏では、「green」という言葉を「環境に配慮した」という意味で使うことは読者もご存じだろう。「グリーン・ビジネス」と言えば、環境保全や二酸化炭素を減らしたり出さない機器や製品、サービスを提供するビジネスを言い、そういう製品やサービスを選んで買うことを「グリーン調達」と言う。それでは「グリーン・バイブル」とは、環境に負荷をかけない材料で造った聖書だろうか? 確かに、この本のトビラ裏にはそういうことが書いてある――「本文用紙は10%の再生紙を使い、大豆原料のインクで印刷し、表紙は100%の天然コットン製で、環境に配慮した環境で育てられた綿を使っている」そうだ。しかし、この本が「グリーン」だという本当の意味は、このような"外装"にあるのではない。本の中身――つまり、聖書の言葉そのものが、実は環境に配慮し、神の被造物である自然を大切にせよとのメッセージに満ちている、と訴えているのである。
読者は、英語の聖書を開いたことがあるだろうか? 英語の聖書にはいろいろな種類があるが、中には、イエスの言葉だけを目立つように赤色で印刷してあるものもある。私がもっている英文聖書の1つが、それである。有名な「Kind James Version」(欽定訳)の聖書で、ページのサンプルをここに掲げよう。これは、新約聖書の『マタイによる福音書』の第7章から第8章を含んだページである。こうすると、どれがイエスの言葉であるかがすぐにわかる。『The Green Bible』(2008年刊)ではこれに倣い、自然に関する教えが書 かれた箇所がすべて緑色で印刷されているのだ。サンプル・ページをご覧に入れよう。ここには旧約聖書の『創世記』第2章から第3章が含まれている。第2章には天地創造のことが書かれているから、ほとんどが緑一色である。第3章では、エデンの楽園からの人間の追放物語が書かれていて、半分ぐらいが緑色だ。このようにして、旧約と新約の聖書の全体が2色刷りになっている。それだけでなく、巻末には自然や環境と関係のあるキーワード--例えば、土地、山、月、草、雨、種、空、星……--ごとに、それが出てくる聖書の箇所が示された索引までついている。
この本の編纂者の意図は明確である。それは、「環境への配慮をもって聖書の言葉を読もう」ということだ。事実、この聖書の本文が始まる前に、何人かが解説文を書いているが、その中の1つには「Reading the Bible through a Green Lens」(緑のレンズを通して聖書を読む)という題がついている。それを書いているのはカルヴァン・ドウィット(Calvin B. DeWitt)というウィスコンシン大学の環境学の教授だ。もちろんキリスト教徒である。このドウィット教授の解説文は、キリスト教徒が環境問題の解決に取り組もうとする際に直面する6項目の疑問点についての"模範解答集"のような体裁になっている--
① この世界は私の魂が留まる家ではなく、一時的な滞在場所だ。
② キリスト教徒でなくても、環境問題に取り組んでいる人は大勢いる。
③ 過激な運動や危機感をあおるようなことはしたくない。
④ 神は、被造物に対して我々がしたいことをする権利を与えてくださった。
⑤ 環境より人間が大切だ。
⑥ 私は、一部の環境運動家や科学者が「こうなる」と言っていることを信じない。
これらの疑問の中には、生長の家の信仰者が抱きがちなものも含まれていると思うので、いくつかの項目についてドウィット教授の解答を紹介しよう。
谷口 雅宣
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