« 岩手の講習会で、当惑… | トップページ | 情報の質について (2) »

2010年6月 7日

永続きする結婚とは…

 前回は、私たちの夫婦ゲンカのことを書いたが、アメリカで今、話題になっていることの1つが、ノーベル平和賞を受賞した元副大統領のアル・ゴア氏(Al Gore)とティッパー夫人(Tipper)との離婚である。アメリカでは離婚が“当り前”の観を呈している中で、この夫婦は仲睦まじいことで有名だったのに、ごく最近、40年間の結婚生活に終止符を打ったのである。だから、「あの2人がなぜ?」という驚きが話題の背景にある。そして、この2人と対照されているのが、ゴア氏が副大統領の時代の“上司”、ビル・クリントン元大統領とヒラリー・ローダム・クリントン氏(現国務長官)のカップルだ。ご存じのように、ビル・クリントン氏は大統領在任中にホワイトハウス研修生と“性的関係”があったというので、テレビの前で謝罪した。ヒラリー夫人はそんな夫を赦して離婚しなかった。この2人が今にいたるまで夫婦であるのに、あのゴア夫妻がなぜ?……というわけだ。
 
『ニューヨークタイムズ』の紙面では、2人の女性ライターが興味ある論評をしている。1つは、人生後期の離婚に関する著書があるディアドル・ベイヤー氏(Deirdre Bair)で、この人の意見をひと言でまとめれば、「離婚は必ずしも悪くはなく、本人の成長の機会になりえるのだから、ショックを受けずに、2人の新しい人生の幸福を祈りつつ、静かにしておいてあげよう」ということだ。もう1人は、コラムニストのタラ・パーカー=ポープ氏(Tara Parker-Pope)で、彼女は、夫婦の心の中の問題は外部の人からは分からないことを強調したあとで、永続きする結婚の“秘密”について、いくつかの研究結果をまとめている。

 まず、ベイヤー氏によると、彼女が結婚後、20~60年以上たって離婚した310人(男126人、女184人)にインタビューして驚いたのは、「結婚」という安全地帯から飛び出す人たちの勇気だったという。別れようとする人たちにとっては、離婚は「失敗」ではなく「機会」だったというのである。人間は結婚生活の中でも変わっていくものだが、それを相手に言うことを忘れる。そして、夫婦間のズレが時とともに拡がっていき、離婚に至ることが多い。つまり、「この古い環境で、この古い相手と一緒にはもう生きていけない」と感じるのだという。離婚者たちは、自分たちの決断は決して一時の感情によるのでなく、また離婚を後悔していないと主張する。彼らの決定に関するキーワードは、「自由」と「コントロール」--つまり、「自分の人生を自分の意思にしたがって生きたい」という強い思いが背景にあるという。もちろん、社会的、経済的条件も離婚の決定の背景にはある。中年以降に離婚する人の多くは、生活の変化に対応できるだけ経済的には自立している。また、寿命も長くなっていて、次の相手も、探せば見つかることが多いという。
 
 パーカー=ポープ氏は、これとは逆に、「離婚しない夫婦」の条件に多く触れている。彼女は、カリフォルニア大学サンタバーバラ校のビアンカ・アセヴェード博士(Bianca Acevedo)の研究から、永い間の夫婦の間でも愛情が冷めずにいる人が予想外に多いことを教えてくれる。具体的には、電話で調査した274人の永年の夫婦のうち40%は、愛情のレベルが高い数値を示したという。また、残りの60%も必ずしも「低い数値」だったのではなく、夫婦関係には満足しており、愛情は継続しているという。ただ、愛情の程度がそれほど“濃密”でないだけだ。では、夫婦関係を良好に保つにはどうしたらいいか? それは、「互いに努力すること」だという。これは、「夫婦の愛も、いつ壊れるかもしれない」と考えてビクビクするという意味ではなく、「関係を新生させる」ための努力をすることだ。ワシントン州オリンピア市にあるエバグリーン州立大学のステファニー・クーンツ教授(Stephanie Coontz)によると、「結婚自体に注意を向けず、互いが別々のことをしていながら結婚が永遠に続くわけがない」という。当り前といえば、当り前のことだ。だから、「2人で何か新しいことを継続してやる」ことをアドバイスする人もいる。
 
 パーカー=ポープ氏はまた、夫婦関係が成長しているかいないかを判定するために、便利な質問を3つ提示している:

 ①あなたの相手は、わくわくするような経験の原因にどの程度なっているか?
 ②相手を知ることが、あなたを人間としてどの程度成長させているか?
 ③過去1カ月間に、あなたはどの程度頻繁に結婚生活を退屈に思ったか?

 これらの質問に対して、自分の希望通りに答えられないならば、さっそく夫婦関係の“向上”と“新生”にむかって努力を始めた方がいいだろう。これは、私からのアドバイスでもある。
 
 谷口 雅宣

『ニューヨークタイムズ』誌=ゴア夫妻の40年の記録(写真14枚)

|

« 岩手の講習会で、当惑… | トップページ | 情報の質について (2) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 岩手の講習会で、当惑… | トップページ | 情報の質について (2) »