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2010年5月23日

コーヒーカップの“実相”

 今日は愛媛県下の4会場を高速回線で結んで生長の家講習会が開催され、昨年3月に行われた前回の講習会を一割強上回る6,092人が受講してくださった。朝から雨が降っていたため受講者の出足が鈍るかと思ったが、同教区の中村徳久・教化部長によると「予定されていた運動会などが中止となり、雨が降ったことがプラスに作用したかもしれない」という。もちろん、天候だけが増加要因ではない。県下の各組織の人たちが熱意をもって友人、知人、そして見知らぬ人にも講習会の受講を勧めてくださったおかげである。会場が1箇所増えたことも、推進活動に勢いを与えてくれたに違いない。相愛会・白鳩会・青年会の3組織ともに増加したことも特筆に値する。この場を借りて、関係者の皆々様に心から御礼申し上げます。
 
 ところで、今日の『愛媛新聞』の第1面で、作家の吉村萬壱氏が「怖いコーヒーカップ」という題で興味ある文章を書いていた。それはコーヒーカップの「実相」についてである。吉村氏によれば、コーヒーカップの実相は恐怖すべきものかもしれないというのである。氏の説明を聞いてみよう--
 
「目の前のコーヒーカップは、実は大変な量の情報をもっているはずです。その表面には微細な凹凸が広がり、無数の光が反射しています。実際に人間の知覚は、意識されないだけで、それらのおびただしい情報を把握しているそうです。(…中略…)しかし大多数の平凡な人間にとって、コーヒーカップはコーヒーカップにすぎません。いくら目をこらしても、それ以外の像は出てきません。これが人間の発達させた“脳力”なのです。もし人が常にコーヒーカップの“実相”を見なければならないとしたら、たかがコーヒーカップといえども意味不明の光の洪水と化し、理解できない恐怖の対象になってしまうでしょう。そんな無際限な認識能力では日常生活はとても営めません。余分な情報を捨てなければ、世界は理解不可能なのです」。

 私はこれを読んで、「人間は同じ言葉を使っても、まったく違う意味のことを言うのだなぁ」という感慨を深くしたのである。上に引用した吉村氏の文章の前半には、私はまったく同感である。が、後半の文章についてはいろいろ言いたいことがある。まず、第一にここに書かれた「実相」の意味は、生長の家で言う「実相」とはまったく違う。普通のコーヒーカップの表面を例えば虫眼鏡で拡大し、細かく観察することで得られる刺激のことを、吉村氏はコーヒーカップの“実相”と呼んでいるようである。あるいは、虫眼鏡ではホンモノは見れないから、電子顕微鏡を使ってその表面を細かく観察することで、人間の眼がとらえる刺激を“実相”と呼んでいるのかもしれない。が、いずれの場合であっても、結局は人間のもつ「視神経」という感覚器官を経由して得られる情報のことだから、これらは生長の家で「現象」と呼んでいるものに該当する。

『甘露の法雨』にあるこの言葉を思い出していただきたい--「感覚にて視得るものは、すべて心の影にして第一義的実在にあらず」

 また同氏は、上記の文章を読む限り、コーヒーカップの“実相”はただ1つしかない、と考えておられるらしい。だから、「常にコーヒーカップの“実相”を見なければならないとしたら」という表現が使われているのだと思う。しかし、氏の論法にしたがって考えれば、ある特定のコーヒーカップについて、それを肉眼だけで見る場合、虫眼鏡を使って見る場合、電子顕微鏡を使って見る場合、さらに素粒子レベルで見る場合(もしそんなことができるとしたらの話だが)では、見え方が違ってくるはずである。氏は、どのレベルの見え方が“実相”だというのだろうか? それとも、どのレベルでも“実相”だと言うのか? もし後者が氏の答えだとしたら、実相が何種類もあることになるから、言葉の矛盾は否めない。まあ、氏は作家であるから、私が宗教の立場からあまりウルサイことを言っても仕方がない。氏は作家としてのご自分の考えにもとづいて言葉を定義し、自由に使われていい。宗教家が文句を言う筋合いのものではないだろう。
 
 しかし、本欄の読者に気づいてほしいのは、同じ「実相」という言葉でも、それを誰が使うかによって意味がずいぶん異なることがあるという点である。これと同じことが、「神」や「罪」や「霊」や「救い」……などについても言える。だから、表面上の類似点を見て、中身も同じだろうと考えると間違うことがあるのである。最近は「コトバの力」とか「心の法則」など、生長の家で昔から使っている言葉を正面に掲げた書物が出回っているようである。教えをしっかり理解したうえで研究される分はいいが、理解が不十分の場合、生長の家でないものを生長の家だと誤解する危険があることを留意されたい。

 谷口 雅宣

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