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2010年5月 6日

人間は倫理的存在

 5月4日の本欄に書いたように、私は今回の生長の家の幹部研鑽会などの講話で、人間に“生来の善性”があることを示す一例としてミラーニューロンのことを取り上げた。人間が生物種として、この「他者の心や感情を映し出す神経細胞群」を最も発達させているとしたら、それを充分に使った生き方が人類の生存に有利に働いてきたということだろう。すると、昔から巷で使われている「生存競争」という言葉が、この世の現実を示すものとして、はたして正確であるかどうか疑わしくなってくる。

 この言葉を辞書で引くと、「自分の方が長く生き延びようとして、弱い他の生物をおしのけるために起こる競争」(三省堂『新明解国語辞典』、1989年)という意味が出てくる。また、『広辞苑』第1版(岩波書店、1955年)では、同じ言葉をこう定義する--(struggle for existence の加藤弘之による訳語)生活体がその生存を全うする為に、相互に競争し、その結果、適者は残存し、不適者は淘汰せられる現象」。『新潮国語辞典』(新潮社、1965年)の定義も『広辞苑』に近く、「生物体が生存してゆくために相互に競争し合い、その結果として適者が残存し、不適者は淘汰される現象」とある。どの定義にも「競争」という言葉が出てくるが、人間が「他者の意図や感情を慮る」のは、競争に勝つためだけではないという点が見落とされている。
 
 英語では、これと似た現象を表すのに「survival of the fittest」(適者生存)という言葉があり、これだと「競争」しなくても、生存に適する考え方や行動をとる者は「適者」となるから、ミラーニューロンの発見後も通用するだろう。が、「生存競争」という言葉は、現実世界(現象界)の生物界の生き様を精確に描くものとはもはや言えないだろう。人間社会では、強い者に対して自らを主張して挑戦していく者は、英雄視されることがある。しかし、そういう人物はしばしば生存を全うしないことは、坂本龍馬などの“維新の志士”の例を見てもわかる。また、動物界にあっても、恐竜の絶滅後に哺乳動物が地上を圧倒するに至った理由は、「生存競争による」と言うよりは、「天変地異による」と言った方がいいだろう。
 
 そこで、この“生来の善性”の話を少し延長してみよう。つまり、人間は幼い時から倫理感や、倫理基準のようなものをもっているかどうかという話だ。常識的な考えは、赤ちゃんには倫理感や倫理基準はないから、大人がそれを教え、成長後に正しい社会生活ができるようにしてあげるのが教育の大きな目的の1つ--というものではないだろうか。我々は普通、生れたばかりの赤ちゃんは基本的に“エゴイスト”だから、親や教師の役目は、彼らに「人を思いやる心」(エンパシー)や「罪の意識」や「羞恥心」などを教えて、自分本位の考えや行動を抑圧して、これらのより“高度な”社会原則を優先させることだ--そう考えるのではないだろうか。
 
 ところが、イエール大学の心理学教授、ポール・ブルーム博士(Paul Bloom)は、5月9日付の『ニューヨークタイムズ・マガジン』に載る予定のエッセーで、赤ちゃんには“生来の倫理感”があると書いている。それは、同博士の個人的意見ではなく、そういう倫理感の存在を示す証拠が、赤ちゃんの心の研究から次第に増えつつあるというのだ。同博士の言葉を借りれば、「よく工夫された実験のおかげで、1歳の赤ちゃんにも、倫理的判断や倫理感の萌芽があることがわかる」というのである。しかし、だからと言って、子供に倫理・道徳の教育が不要だというのではないらしい。子供が社会と接触することは大変重要だが、それは幼い子に善悪の区別ができないからではなく、幼い子がもつ生来の倫理感が、我々の大人社会が期待しているものと、重要な点で多少違うからだという。
 
 もっと詳しい話を知りたいが、記事にはそれがないのは残念だ。
 
 谷口 雅宣
 

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コメント

「生存競争」というコトバは、唯物論的な発想だと思いました。

神様を語りつつも、生存競争の英雄を夢みていた、自分に気がつかせていただきました。

これからは、「大調和生存」していきたいと思いました。

いつも、誰かを誹謗中傷したり、小手先で人々を誘導することなく、誠実に真剣に生長の家の真理を、論理的にご説明くださること、感謝いたします。

投稿: kaze | 2010年5月 8日 22:40

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