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2010年2月20日

バイオガソリンは“環境配慮”か?

 最近私は、めっきり自分の車を運転することが少なくなった。妻がブログで書いているが、18日の休日にほぼ3週間ぶりにハンドルを握って、バッテリーの過放電を防いだほどだ。休日には外出しているのだから、「忙しすぎて」ということではない。それよりも、むしろ車の運転にともなう諸々の繁雑なこと--CO2の排出、運動不足、狭い路地での出し入れ、行った先の駐車場と駐車料金、行き先選びの小回りのきかなさ等々--が頭に浮かび、つい別の方法を採用してしまうのだ。都会では、それができるのが有り難い。便利だから、近場でたいていの用は足りてしまうし、少し足を延ばす際にも、地下鉄とJRでほとんどの場所へ行ける。それに冬季は、積雪を考えて山梨の山荘へも行きづらいのである。

 こんな不熱心なドライバーだったから、私は普通のスタンドで入れるガソリンが「バイオガソリン」になっていることを知らなかった。スタンドには目立った表示はなかったから、レシートを見て初めて気がついたのだ。ガソリンと混合するバイオエタノールについては、過去の本欄でいろいろ書いてきた。そして、私がたどりついた結論は、「食料と競合するものは使わない」ということだった。今使われているバイオエタノールは、小麦やトウモロコシ、あるいはサトウキビを原料にしているから、それを使うことは間接的に人の食料を奪うことになる、と考えられる。だから、そのレシートを見て不本意な思いがしたのである。「ナチュラル」と表示された食品を買ったのに、後から添加物入りだと知ったような気分である。販売店は、せめて利用者が選択できるような売り方をしてほしい。が、この選択肢は今後、幅が狭くなりそうである。

 18日付の『日本経済新聞』は、新日本石油が2010年度中に3つの製油所で新たに「バイオガソリン」の生産を始め、これによって「同社製ガソリンの過半がバイオ型になる見通し」と報じている。取り扱うスタンド数は、全国で約2千店になるという。関東地区では、横浜市の同社根岸製油所がバイオガソリンを生産しているが、これを大分製油所、大阪製油所、水島製油所(倉敷市)へ拡大し、これら4製油所で生産されるガソリンの全量が“バイオ型”になるらしい。そして、バイオガソリンだけを売る販売店に「環境配慮」というお墨付きを出すという。

 しかし、「ちょっと待ってほしい」と私は言いたい。このバイオガソリンなるものが本当の意味で「環境配慮」であるのかどうかは、かなり議論の余地があると思う。だいたい、植物性油の含有量は「0.4%」という少量なのだ。CO2の排出削減を本気でやるつもりならば、ブラジルで行っているような「20%」とか「50%」とか「100%」のバイオエタノール混合油を生産・販売すべきと思う。しかし、その方法は採用せずに、「日本独自の規格」として植物油を少量混ぜたものを“バイオガソリン”として売るらしい。私は、ブラジルの大統領が数年前、エタノールの売り込みのために来日したのを覚えている。それは輸入せずに、日本で通用するものだけを流通させようという考えのようだ。何かウサン臭いではないか。これはあくまで憶測だが、きっと国内の自動車メーカーとの関係から編み出した規格だ。ブラジルやアメリカでは、もう何年も前から車はエタノールで走っている。だから、ブラジル産やアメリカ産のエタノールを輸入すれば、ノウハウのない国内メーカーが打撃を受けると考えてのことか、あるいはもっと別の理由か?
 
 19日の『日経』には、大手商社の双日が、ブラジルでのバイオエタノール事業を拡大することを報じている。同社が3分の1を所有するエタノール・メーカーが、ブラジル大手メーカーと事業を統合し、その統合会社が2012年までに年300万キロリットルを生産して、欧米や日本へ輸出するらしい。この規模は、現在のブラジル最大手の生産能力を上回るという。これが実現すると、日本国内では“バイオ型”ガソリンの規格が2つになる恐れがある。新日本石油などは、そうさせないために今から手を打っているのかもしれない。
 
 しかし、いずれの規格が日本での主流となっても、「食料と競合する燃料」であることに変わりはない。ブラジルの場合心配なのは、それに加えてアマゾンの森林破壊が進まないかということだ。だから私は、地球環境や食糧問題をこれ以上深刻化させないために、“ガソリンのバイオ化”よりも、一気に電気自動車へ移行する戦略の方が優れていると思うのだ。
 
 谷口 雅宣

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コメント

ありがとうございます。

「バイオガソリン」について学ぶことができました。

「知ってるか知らないか」によって、大きくこれからの自己の選択や行動に差が出る知識だと感じました。

投稿: 松尾 | 2010年2月20日 23:17

ありがとうございます。
少し前にジャパンエナジーと新日本石油が統合するというニュースを聞きました。それにともなってのこのニュース。新日本石油の一人勝ちになる可能性もあります。
雅宣先生の「一気に電気自動車へ移行する戦略の方が優れていると思うのだ。」という意見も、もっともだと思いますし、早くガソリンスタンドにも急速充電装置の設置をして欲しいです。

投稿: 国枝基広 | 2010年2月21日 15:11

松尾さん、
 「環境配慮」とか「環境に優しい」というキャッチフレーズに惑わされてはいけませんね。GMの「ハマー」というトンデモ自動車が、日本で“エコカー”の認定を受けたなんて話もあるくらいですから。

国枝さん、
 急速充電装置は、早く本部に導入したいです。加えて、飛田給道場、東京第一、東京第二……などに導入すれば、“炭素ゼロ”で自動車を使うことも夢ではありませんね。

投稿: 谷口 | 2010年2月21日 21:53

合掌 ありがとうございます
 私は長年、自動車メーカー日野自動車でエンジンの研究を行ってきた者です。研究の中では、ハイブリット車を世界で始めて実用化したのもその一つです。しかし多くの研究時間を割いてきたのが低公害の代替燃料でした。水素燃料エンジンもその一つでした。これは未だ実用化されていませんが、水素をどこから得るかが課題でした。バイオ燃料も30年位前から研究しましたが、当時は食料と競合するとは思ってもいませんでした。 最近ではユーグレナと言う藻の一種ですが、これが樹木よりも多くのCO2を吸収し燃料にもなるものが東大で実用化されつつあります。このユーグレナはNASAでも衛星内のCO2を吸収しながら栄養価の高い食料にもなるというコンセプトで研究されています。私はこの方向が一つの有望な解決法になるように思います。

投稿: 茂森 政 | 2010年4月 6日 01:02

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