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2010年2月11日

建国神話のメッセージを読む

 今日は建国記念の日だったので、東京・原宿の生長の家本部会館では午前10時から「建国記念の日祝賀式」が執り行われた。私はそこで、概略以下のような話をした--

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 皆さん、本日は日本国のお誕生日である建国記念の日、誠におめでとうございます。

 この日は皆さんもご存じのように、『古事記』や『日本書紀』にある日本建国の神話にもとづいて定められた記念日です。建国の日を神話にもとづいて定めている国は世界でも珍しく、日本と韓国ぐらいであります。このことは毎年、申し上げているのですが、大抵の国は近代の民主主義革命が行われた日や、第二次大戦後に植民地解放が行われたときをもって“建国の日”としているのです。これだと建国記念日を正確に定めることが可能ですが、神話にもとづく場合はそれが難しいので、日本では記紀に書かれた日をそのまま「建国の日」ではなく「建国記念の日」として祝うことになっています。これはきわめて合理的なのであります。

 日本の国のように、建国が神話の昔に遡る場合、建国記念日で問題にすべきことは、神話に描かれた出来事が歴史的事実であるかどうかではなく、神話に表現されている建国の「理念」や「理想」と、現代の日本と日本人の生活や考え方の関係でしょう。これについては、私は(2006年以降)過去何年かにわたって、この記念日でお話し申し上げてきた通りです。繰り返しにはなりますが、重要なことなので、今日は以前とは少し別の角度からお話ししましょう。
 
 日本の初代天皇となられたカムヤマトイワレヒコノミコトは、国家統一のため軍を率いて、今の南九州から北上して奈良の橿原の地まで行軍します。これを「神武東征」と呼んでいます。この行程は何年も、一説によっては十数年にも及ぶのですが、最後に、大和地方で強力な抵抗に遭います。この敵軍の大将が長髄彦(ながすねひこ)で、この軍隊との戦闘では大変な苦戦となり、兄の五瀬命(いつせのみこと)が命を落とします。そこで、いったん退却して自ら反省して分かったことは、自分は太陽神である天照大御神の子孫でありながら、太陽の方向に向かって軍を進めることは間違っているということです。だから、紀伊半島を南に迂回し、熊野から大和へ向うことを決め、再び進軍します。ここに1つのメッセージがありました。それは「神の御心に反して行動してはならない」ということです。
 
 このあとも一行は様々な抵抗に遭ったり、困難に遭遇します。が、そのつど、ヤタガラスに道案内をしてもらったり、抵抗勢力の一方が味方になったり、金色のトビが現れて敵軍の戦意をくじいたり、長髄彦が自分の主君に見限られたりして、ついに国家統一を成しとげる。ここに描かれている神武天皇は、単に武力や知恵が優れているだけの“英雄”ではありません。武力では劣り、権謀術数を使わなくても、行った先の土地の人々から認められ、動物にも助けられる。そういう「正統性」がなければならない。これが、神武東征の神話の中にあるもう1つのメッセージです。ちなみに、日本建国の神話には、ヤタガラスと金色のトビという2種類の鳥が出てきますが、神話学では、「鳥と」いうものは、天と地との間、あるいは自然界と人間界の間をとりもつ生物として位置づけられています。つまり、神からのメッセンジャーです。だから、神武天皇は日本統一に当たって神からのメッセージに従った、ということがこの神話には描かれている。
 
 皆さんは、ヨーロッパの歴史を勉強したときに「王権神授説」という言葉を学んだと思います。これは、王権--君主の政治権力は、神から授かったものという考え方です。個人が自分の野心や利益追求のために政治権力をもつということは、正統性が欠けるということで昔から認められなかったのです。だから、「神からいただいた権力である」ということが必要だった。これと同じ考えが、日本の建国神話の中には埋め込まれているのです。それだけではありません。王権神授説が「人間社会を支配する正統性」を示すものであるならば、自然と人間との関係ではどうなのでしょう。これについても、日本の建国神話は興味ある符号に満ちています。
 
 神武天皇の曾祖父、ニニギノミコトは、天上から日向の地に降臨して、コノハナノサクヤヒメと結婚し、海幸・山幸の2人の兄弟をもうけます。ここに「海」と「山」という自然界の2つの代表が登場します。祖父の山幸は、海の神の娘で、ワニに変身することができるトヨタマヒメと結婚し、ウガヤフキアエズノミコトをもうけます。ここでは、海と山とが混合して一体になっています。そして、ウガヤフキアエズとトヨタマヒメの妹のタマヨリヒメとの間に生まれたのが、神武天皇でした。つまり、「天」と「海」と「山」という自然界の3要素を引き継いで生まれたのです。今日は、時間の関係で詳しいことは申し上げられませんが、神武東征の物語の中には、天を象徴する「鳥」だけでなく、海からの協力によっても東征軍が難を逃れるというエピソードが出てきます。こういう種類の人間が、神の御心にしたがうことで人間社会での支配権を得るのが正当である--これが、日本の建国神話の中に埋め込まれたメッセージであると考えられます。

 こういうように考えてみますと、現在、日本の政治権力を握っている人物が、なぜ人気がないのかがよく分かるではありませんか。日本人は、昔から、国の頂点に立つべき人間像をしっかりともっているのです。それは、古くは建国神話の中に記されている。単に金持ちであるとか、多くの政治家を従えているとか、権謀術数に優れているだけでは、日本人は満足しないのです。そういう意味で、この21世紀初頭の時代にも、日本の建国神話から学ぶことはまだ数多くあるのです。私たちは今、民主主義の時代を生きていますから、神話時代のような国をつくることはできません。また、そんな国をつくるべきではないでしょう。しかし、「建国の理想」や「建国の理念」は現代においても大いに通用するものであり、追求すべきものです。そのためには、私たち国民の一人一人がまず、この神武建国の神話に表現された「神の御心にしたがった生き方」を実践することです。また、「海」と「山」に代表される自然界を大切にした生き方を希求すべきです。そして、この理想に少しでも近い政策を掲げ、実行する政治家を選挙によって選ぶのです。
 
 一昨日、この生長の家本部では“森の中のオフィス”に関する説明会がありました。生長の家が、国際本部を八ヶ岳南麓の“森の中”に移転するということは、すでに『聖使命』新聞などで発表されています。この決定が“自然と共に伸びる運動”の一環であることは皆さんもご存じの通りです。今日の話を聞いていただけば、「人類は自然と共に伸びるべし」ということが日本建国の理想の中にも含まれることを、皆さんはご理解いただけたと思います。そういう理念や理想を建国の文書に掲げている国は、世界広しといえども、わが国以外にはないのではないでしょうか。このことを多くの人々に伝え、“自然と共に伸びる運動”の実現に向かって邁進していきましょう。ご清聴、ありがとうございました。
 
 谷口 雅宣

【参考文献】
○中沢新一著『人類最古の哲学』(講談社選書メチエ、2002年)
○大林太良他編『世界神話事典』(角川選書、2005年)

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コメント

合掌有難うございます。建国記念の日にあたり 「建国の
理念、理想」と私達の生活や考え方の関係について とても解りやすく ご教示いただきまして有難うございました。教化部での祝賀式でも日本書紀 まきの三 を参列者で聞いた後 教化部長先生が 解説して下さり 又講師会長が昨年の雅宣先生の 建国記念日のメッセージについて話された事とも相まって 本当によう~く理解できました。有難うございました。今更ながらNIPPONの素晴らしさ 有難さを 感じ、想いました。 閑話休題 森の中のオフィスの発表 有難うございました。ブログに続き 聖使命新聞での発表に
ワクワクしています。「いつかその地に行く日があるかもネ」「長生きしなくちゃネ」(大笑い おおわらい)と あらかん の私達はとっても大喜びしています。ますます好い事がやってくる 日時計主義で 進んで参ります。桝谷拝

投稿: 桝谷栄子 | 2010年2月12日 09:41

谷口雅宣先生

 毎年、先生の建国記念日のお言葉を拝読するのはとても楽しみしています。本年も誠に素晴らしいお言葉有り難うございました。
 神意に従うという事が理想であり、それが日本建国の理念の基礎になっているのですね。それが又、生長の家の目的と合致している事がとても素晴らしいし、有り難い事だと思います。

投稿: 堀 浩二 | 2010年2月12日 11:03

桝谷さん、
 ご声援に感謝します。ところで、私も「あらかん」ですから、あなたと同様、長生きしなければなりません。(笑)

堀さん、
 神奈川県も自然と共に発展しますよ! 禁煙条例、期待しています。

投稿: 谷口 | 2010年2月12日 16:15

ありがとうございます。
2月11日は母の誕生日です。僕にとっては建国記念日と母の誕生日で2倍嬉しい日です!

投稿: 奥田 健介 | 2010年2月13日 08:42

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