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2010年1月28日

サイバー戦争は始まっている

 ネット情報に詳しい読者は、最近、米検索大手のグーグル社が中国と問題を起こしていることをご存じだろう。それに関して、アメリカのクリントン国務長官が21日に、中国に対して厳しい発言をしたことも報道された。それでは、オバマ政権が台湾に対して、ミサイル防衛システムを含む高度な防衛機器を輸出する考えを表明していることは、ご存じだろうか。私は、この3つの事実のうち、最初の2つが密接に関係していることは知っていたが、3番目の事実との関係を深く考えたことはなかった。しかし、27日付の『ヘラルド朝日』紙に載ったデイビッド・サンガー記者ら3人の手による解説記事を読んで、現代の安全保障の最前線が“テロとの戦争”や核拡散だけでなく、インターネットを経由した“サイバー攻撃”とその抑止問題にあることを改めて知った。そして、今回のグーグルの問題が、単に一私企業の経営問題ではなく、「サイバー攻撃の抑止」という軍事・外交の問題でもあることを知った。

 『 ウォール・ストリート・ジャーナル』などによると、グーグルは1月12日、自社が運営するGメール・システムが中国本土からのサイバー攻撃によって被害を受けていることをブログで明らかにし、「発見された攻撃や監視と、ウェブでの自由な発言への制限を強めるここ1年の動きが相まった結果、中国での事業の存続可能性を見直さなくてはならないとの結論に至った」と発表した。また、同社が中国政府との間で合意していた“自主規制”は、もはや実行しないことを宣言した。13日配信のロイター電によると、この“自主規制”とは、グーグルの中国ウェブサイト「Google.cn」での検索結果に対する検閲のことだ。グーグルの発表は、最悪の場合、巨大な中国市場からの撤退もやむを得ないと考えた同社の重要な決断だ。同社がどんな攻撃に晒されたのかというと、中国からGメール・システムを利用している反体制派の活動家のアカウント2件に、何者かが侵入を試みたということらしい。
 
 これに対し、中国政府は14日、外務省報道官が「中国のネットは開放的で、外国企業が中国で法律に基づき事業を展開することを歓迎する」と述べただけだった。ところが、欧米メディアがこの問題を盛んに報道したことで、中国国内の関心が高まり、中国政府の態度はしだいに硬化した。特に21日、クリントン国務長官がインターネットの自由について行った演説の中で中国の検閲を批判したことで、米中の国際問題に発展しつつある。27日付の『産経新聞』は同長官の演説の該当部分を掲載しているが、その内容が、中国政府の国家統治の考えと大きく異なるため、中国の反発が拡大したと思われる。2、3箇所、引用してみよう--
 
「グーグルが関係する最近の状況は、大きな関心を集めた。そしてわれわれは、グーグルの(中国撤退も辞さないとの)発表にまで至ったサイバー空間上の侵入行為について、中国当局が徹底的な調査を行うことを期待する。また、調査とその結果が透明性のあるものであることを望む」。

「中国では現在、たくさんの人々がインターネットにつながっている。しかし、情報への自由なアクセスを制限したり、ネット利用者の基本的な権利を侵害したりする国々は、次の世紀の進歩から自身を遮断する危険をおかすことになる」。

「情報の自由は、世界の進歩の基盤となる平和と安全を支えるものである。歴史的にみると、情報へのアクセスの非対称性は、国家間紛争の主因の一つだ。深刻な見解の相違や物騒な事件に直面したとき、その問題をめぐって対立する立場の人々が、同じひとまとまりの事実と意見を入手する手段を持つのは、決定的に重要なことなのだ」。

 これらの演説の背後にある個人の自由と民主主義尊重の考え方が、中国共産党の一党独裁を国是とする政治哲学と基本的に異なることは、誰の目にも明らかだろう。そんなことをアメリカ政府が知らないはずがない。にもかかわらず、この時期にそれを国務長官の対中演説として発表することの意味は、どこにあるのか。上記の記事を読むまで、私にはそれが分からなかった。
 
 谷口 雅宣

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