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2010年1月22日

“森の中のオフィス”について (3)

 生長の家の国際本部が“森の中”に移転した後、日本全国や海外の諸地域ではどのような運動を展開するかという戦略や運動論が最初に示されたのは、昨年4月に決まった「“森の中のオフィス”の具体的計画」という文書である。そこに掲げられた7項目を20日の本欄で列挙したが、今回はそのうち運動戦略に該当する前半3項目に注目しよう。残りの4項目は、どちらかというと技術的なものだ。
 
 ①“自然と共に伸びる”生き方を推進する宗教的基盤の確立
 ②地球環境、生物多様性、生命倫理等の分野での意見表明の拡充と宗教間協力
 ③国際平和信仰運動の後継者の養成

 第1の項目は、教義と実践の両面で、自然と人間の共存を推進させようというものだ。そのためには、まず教義面で「自然と人間との共存共栄を担保する信仰や思想」の構築が必要である。また実践面では、「自然の恵みへの感謝、自然との一体感等を文化活動として表現」することを掲げている。
 
 教義面においては、神道を伝統とする日本で生まれた生長の家が「万教帰一」の考えを掲げている点を、この文書は「ユニークな位置にある」と評価している。その意味は、世界の多数を占めるキリスト教やイスラームが、過去において「自然を人間に従属させ、支配する考え方」を主流としてきた中で、今後必要となる教義上の“方向転換”を行う場合、「万教帰一」の考え方が有効な思想的枠組み(intellectual framework)になるということだろう。万教帰一的な考え方としては、キリスト教にはジョン・ヒック(John Hick)が掲げる宗教多元主義(religious pluralism)などがすでにある。また、本欄でも何回か触れたように、キリスト教には自然一般を“神の被造物”として尊重する考えがあり、今のローマ教皇、ベネディクト16世も近年、地球温暖化を抑制するためにそれを意識したコメントを多く出している。そういう環境意識の基礎となる教義を明確にし、各宗教共通の基盤として互いに認知することができれば、信仰者の間に温暖化抑制のための共通した運動を盛り上げていく可能性が開ける。また、このための実践としては、自然の恵みを讃え、表現する芸術・文化活動を推進していくということだ。表現芸術の分野では、言語や文化を超えた交流や理解が可能だからだ。
 
 第2の項目は、「意見表明の拡充」と「宗教間協力」という2語にポイントがある。地球環境、生物多様性、生命倫理等の分野での意見表明自体は、私がすでに本欄などを通じて行ってきたことだ。それを「拡充」するという意味は、生長の家総裁だけがこれを行うのではなく、教化・講師部や各本部講師がそれを積極的に頻繁に行い、意見表明の「質を高め」「層を厚くすること」にポイントがある。この動きは、一部講師の間ですでにブログなどを使って開始されている。今後は、より多くの講師の参画によって、これらの分野における知識を深め、得意分野を定め、表現力の向上を目指すことになる。
 
「宗教間協力」については、あまり説明を要しないだろう。その言葉のごとく、生長の家以外の宗教とも対話を深め、上記の分野などで共通の認識に達した場合は、相互に協力する態勢を築くことを目指していく。幸い、1月18日の本欄に書いたように、仏教教団の1つである立正佼成会とは環境マネジメントの分野での協力関係ができつつある。また、2007年に国際教修会をニューヨークで開いた際は、エジプト人のイスラーム法学者から絶大な協力をいただいた。今後も、この種の協力関係をできるところから実現していくことで、幅広い知見を得、認識を深め、社会への影響力を保持していくことを志したい。
 
 3番目の「国際平和信仰運動の後継者の養成」の項目では、グローバル社会における諸問題に対処できるように、「日本国内はもとより、世界各国において運動の担い手となる後継者を養成するために、海外の同信の幹部・信徒、さらには教育機関などとの連携も視野に入れ、“森の中のオフィス”を中心拠点とした幹部候補生の短期または中期にわたる交換留学制度を設け」ることが謳われている。

 谷口 雅宣

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コメント

最後の段落にあります「教育機関などとの連携」ですが、国内では具体的にどのようなことをすることになりますでしょうか。

投稿: 横山浩雅 | 2010年1月24日 14:31

横山さん、

 「教育機関などとの連携」は「視野に入れる」段階ですから、「可能性を探る」というような意味だと思います。つまり、具体的な方策はまだ決まっていません。しかし、可能性というだけで考えれば、交換留学の制度は基本的に教育機関と教育機関との間の学生の「交換」ですから、宗教法人が単独でできるものではありません。したがって、どこかの教育機関と相談し、合意したうえでの制度ということでしょう。
 今日(24日)のブログにもありますが、生長の家の養心女子学園は教育機関の1つですから、こことの関係でそれが実現する可能性もあると思います。

投稿: 谷口 | 2010年1月24日 17:22

総裁先生 合掌ありがとうございます。

森の中のオフィスの件 ありがとうございます。

ワクワクしております。 宇治別格本山での献労を思い

出しました。 15分位したら声が出なくなり、どうし

ようと思ったとき、すべてのものに感謝することをおも

出だして「ありがとうございます」を言いつづけたこと

を・・・・・・・。
 


投稿: 山本 順子 | 2010年1月26日 19:58

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