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2009年12月10日

グラフィティのこと

Graffiti_bra2  私は今夏、ブラジルのサンパウロ市に行ったとき、その街の真ん中に、道路脇の塀やビルの壁などに、巨大なグラフィティがいくつも描かれているのを見て、驚いた。それを写真に撮って本欄(7月28日)で紹介したこともある。グラフィティが珍しかったからではなく、何か“懐かしい”思いがしたのであり、そんなものを地球の反対側で今ごろ見るなど、予想もしていなかったからだ。私が学生の頃の1970年代には、東京にも、ニューヨークにもグラフィティは多く描かれていた。特に、ニューヨークの地下鉄の車体のグラフィティは、若い私に強烈な印象を与えた。

Nyc0923  私は当時、マンハッタンの西120丁目あたりの学生寮に住んでいて、116丁目にあるコロンビア大学に通っていた。ダウンタウンから地下鉄に乗ってこの寮へ帰るためには、西125丁目の駅で降りるのが一番近いのだが、この駅は地下にはなく、高架橋の上にあった。つまり、地下の路線をアップタウンに向かって北上する地下鉄は、この駅の手前で地下から姿を現し、道路の高さを超えて、さらに地上数メートルの高さにある125丁目の駅ホームに入るのである。この過程で、坂を上ることが得意でない地下鉄は、急にスピードを落とし、キイキイ、ガタガタと苦しげに車体を軋ませながら、ゆっくりと駅に入る。その時、グラフィティが塗りたくられた車体を白日の下に晒すのだった。

 その西125丁目の駅が、ハーレムの入口に当たっていた。そこから東に延びる黒人街は、今はだいぶ安全になったようだが、当時は「あまり行くな」と言われていた。実際、在学中、私は必要がない限り、その駅から東側へ行くことを避けていた。そういう“不気味”な印象と、“秩序への反抗”を思わせる地下鉄のグラフィティのイメージが、青年時代の私の中では重なっていた。手っとり早く言えば、グラフィティは一種の“禁断の芸術”であり、“近づくな!”という警告の印。さらには、“不可解なアメリカ”の象徴のようにも感じられたのである。

Nyc0919  それが今夏、ブラジルへ行って30年ぶりに“再会”を果たし、その帰途にニューヨークに寄った際にも、また出会った。そのときの印象は、若い当時のものとは少し違っていた。それは“禁断の芸術”なんかではなく、何か懐かしい、当たり前のポップアートだと感じた。もちろん、このアートが反社会性を含むときは好ましいとは言えないが、許された場所で、他人の財産を無断で汚したりしない場合は、面白い表現手段だと感じたのである。その時に撮影したグラフィティの写真を何枚か、ここに掲げてある。
 
 谷口 雅宣

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コメント

合掌、ありがとうございます

NYの本場のグラフィティをまだ見たことはないのですが

HIPHOP系のダンスを習いに行った時、HIPHOPカルチャーの一つであるグラフィティを初めて目の当たりにしました

それは銀座の画廊であったTOMI-Eさんというアーティストさんのhttp://www.tomi-e.jp/index.html
個展だったのですが、壁一面に描かれたグラフィティは、アーティストのパワーが溢れていて、言い様のない感動を覚えました

そして、ライブパフォーマンスとして、真っ白の大きなキャンパスにスプレー缶を持ってその場で躊躇なく勢いで描いていく姿はものすごい迫力がありました

グラフィティは、単なる落書きと片付けられてしまうこともありますが、プロの描く作品は、芯がありとても惹きつける魅力があると思いました。

岩井陽子拝

投稿: 岩井陽子 | 2009年12月11日 19:23

合掌有難うございます。落書きには何か郷愁のようなものを感じてしまいます。それにしても 兎に角文句なしに 上手い!ざぶとん1枚 と声をかけたくなるものがあります、、。雅宣先生が一緒に写ってある作品? 大きな目玉のような 魚のようなのは 全然違和感がなく スーッと溶け込んでいて 「うん マッチしてる 親和律!」と思ったのは 色でした。先生のシャツがピンクとブルーのチェックで 絵も全く桃色系と青色系で統一されていて美が感じられました。TPOが必要でしょうが 表現できるって ワンダフル。桝谷拝

投稿: 桝谷栄子 | 2009年12月11日 22:34

岩井さん、

 面白い作品が満載されたサイトを紹介いただき、ありがとうございます。日本でも“作品”として認められていること、知りませんでした。私の写真は、最初のがブラジルのもので、あと2つはNYで撮ったものです。

桝谷さん、

 あの“目玉”の作品ですが、私も自分の服の色によく合うと思って、妻に撮ってもらいました。

投稿: 谷口 | 2009年12月12日 10:08

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