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2009年12月15日

日米間の“疑念”を払拭せよ

 最近、沖縄の米軍普天間基地の移設問題をめぐる日米の“不協和音”が、妙な方向へ迷走していかないか気になっている。今日の新聞記事では、政府は移設先の決定を来年に延ばす決定をした一方で、すでに日米で合意ずみの移設関連費用を、来年度予算に計上することを決めた。つまり、「移転はするぞ」という意気込みは見せるが、「移転先は分からない」と言っているのだ。これに対して、米国務省の報道官は、合意済みのキャンプ・シュワブ沿岸部への移設が「最善だ」と、従来からの見解を繰り返しただけだ。

 私は、外交政策と国内政策とは基本的に分けて考える必要があると思う。しかし、今の民主党政権は、「国内政策の反映として外交を考える」という立場のように見える。「見える」と書いたのは、「本当のところはよく分からないが……」というニュアンスを表現したいからだ。正直言って、鳩山首相の外交方針は非常にわかりにくい。「よく分からない」と言ってしまった方がいいかもしれない。

 私はかつて9月2日の本欄などで、鳩山氏の英文の論文が本人に無断でダイジェスト版となって米国に流れ、「新首相は反米ではないか?」との不安が広がったことを取り上げた。そして、ダイジェスト版でない本文を読んで反米ではないと考えた。また、その後の日米首脳会談では、「日米同盟は日本外交の基盤」だと言い、オバマ大統領に「私を信頼してほしい」(Trust me.)と言った首相を評価していた。しかし、最近の首相周辺の動きを見ていると、中国への大量の政治家の“集団巡礼”など、アメリカ大統領の信頼を裏切るような言動が散見されるのである。また、首相の言うことが、その通りにならないことが繰り返されている。つまり、言行の不一致が目立ってきた。

“駆け出し内閣”であるうえ、閣内に“非武装中立”の社民党を抱えていたり、民主党内に“左”も“右”もいる現状から考えて、ある程度の言動の揺れは予想できるし、理解もできる。しかし、自らが「外交の基盤」と言った日米関係について、明確な方針表明がない中で右往左往しているように見え、まことに心もとないのである。特に最近は、“中国カード”を使ってアメリカから譲歩を引き出そうとしているように見えるのは、もし日米同盟が外交の基盤だと本当に考えているのなら、あってはならないことである。外交では「○○のように見える」ということは大変重要なことで、仮に「本当はそうでなく、□□である」という隠れた事情があったとしても、世界は外見上の「○○」にしたがって動いていくことが多いのだ。

 今日付の『日本経済新聞』は「揺れる日米安保」という企画記事の「上」として、鳩山氏が「常時駐留なき日米安保を考えている」という意味のことを書いている。また、同じ日の『産経新聞』は、民主党の山岡賢次・国対委員長が日米関係の最近のゴタゴタに関連して「そのためにもまず、日中関係を強固にし、正三角形が築けるよう米国の問題を解決していくのが現実的プロセスだ」と言ったと伝えている。この“正三角形論”は意味がよく分からない。この記事によると、それは小沢一郎氏の持論だそうで、同氏は2006年に民放テレビで「日米中は正三角形になって、頂点、扇の要に日本がいる関係でないといけない」と言ったという。もしこの意味が、日米中はそれぞれが等距離で外交をすべきという意味ならば、「日本外交の基盤は日米安保」などと言ってはいけないはずだ。

 とにかく、今、日米間には“疑念”の雲が盛り上がりつつある。これを吹き飛ばすことができなければ、鳩山外交はきっと失敗するだろう。もし「正三角形論」を首相が支持しているならば、その内容を詳しく国民とアメリカに説明すべきである。もし支持していないなら、「私は正三角形論に反対だ」とハッキリ言い、小沢氏などの同論支持者とは袂を分かつべきだ。外交は国家の存立に関わる重要事で、一人の政治家が選挙に落ちたり、政権交替があるのとはわけが違う。国民全体の運命がかかっていることを、隠したり、ゴマカシたりする人物を国民は支持しないだろう。“核持ち込み密約”を解明しようとしている人間には、それがよく分かっているはずだ。

 谷口 雅宣

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コメント

谷口雅宣先生

 昨今の政治情勢に関して、明確な論説、誠に有り難うございました。私は中国に関しては日本は仲良くして行くべきだと思っておりますので小沢氏の中国訪問に関しては別段批判はしておりませんでしたが、先生のご指摘の様に鳩山首相が日米同盟を基軸にするとオバマ大統領に対して明言している事を考えると確かに良くないですね。
 小沢氏は豪腕の政治家で私は評価して来ましたが、先生の推測通り、中国というカードを使って、普天間問題を日本側に有利に動かそうという考えがあるなら、まずいですね。今回の天皇陛下と中国の副主席との会談も何かこの間の北京訪問の際の胡錦涛主席が小沢チルドレンと全員握手して一人一人写真に収まった事の返礼と考えているとするならばやはり天皇陛下を自分の計画に利用した事になり、とても良くないと思います。

 鳩山首相は小沢氏とは思い切って手を切った方が良いのかも分からないですね。

投稿: 堀 浩二 | 2009年12月16日 14:37

谷口 雅宣 先生

 自民党55年体制からの政権交代を果たし、国民の希望と期待により選ばれた民主党政権も100日程が過ぎましたが、段々と「○○のように見える」という、ハッキリと分らないことが多くなってきました。確かに政治ともなると、国のビジョンを実現するためにはしたたかな国政や外交も大切なのですが、私にはなんだかさっぱりと分らなくなってきました。
民主党政権がやるべき事は、自民党政権では出来なかった事をやるはずではなかったのではないでしょうか。「コンクリートから人へ」とスローガンを掲げ、独立法人や特殊法人への官僚の天下り問題、無駄な公共事業問題、長い政権によって出来上がってしまった癒着や利権問題、二重行政問題などに、メスを入れるはずではなかったのではないでしょうか?
 事業仕分けをしたはいいのですが、スーパーコンピューター、芸術、スポーツ、教育と、日本の未来に貢献する分野ばっかりの予算が削られてしまったように思われ、どのように仕分けされているのか、少なくとも私には全く見えてこなかったです。
 さて、普天間基地の移設問題ですが、武力をもってロシア(旧ソ連)や中国を日米欧で封じ込めてゆくという冷戦時代も終わりを告げた今、普天間基地をどこに移設するかという小手先の問題に振り回されている場合でなく、もっと抜本的に日米安保問題を見直す必要性があると思うのです。今の鳩山首相の外交は、来年度予算に計上することを決めたから「移転はするぞ」と云っているように見えてしまいます。
 ぶれる鳩山外交はこのことだけに収まらず、最近は“中国カード”を使い始めています。この外交はきっと誰の目にも明らかなように、外務省を越え、宮内庁を越え、内閣すらも越えての小沢一郎・民主党幹事長の外交のように見えてしまいます。
 当面、党務に専念するはずであった同幹事長は、鳩山・総理大臣を差し置いて、早々に国政の表舞台に立って仕切り始めました。
 外交や政策運営は内閣総理大臣の仕事であり、党の幹事長の仕事ではありません。600人の大訪中団自体は例年の事らしいですが、中国や韓国に国際公約をしてくるとは一体どういうことなのでしょうか?
 先生がブログで説明されておられます“日米中の正三角形”外交を推し進めてゆくためなのでしょうか?外交には確かにしたたかさは必要ですが、権力の二重構造はいただけません。
 私には、本当に「○○のように見える」外交としか映りません。
 民主党政権よ!!もっと、ハッキリとして下さいm(_ _)m     楠本忠正拝

投稿: 楠本忠正 | 2009年12月16日 21:21

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