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2009年12月 4日

デンマークの電気自動車

 7日からコペンハーゲンで地球温暖化抑制のための気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)が開かれるが、その開催国・デンマークは、温暖化対策に熱心なEUの中でも、先進的な努力をしている国である。昨年12月8日の本欄では、同国に電気自動車を本格導入するための実験が行われていることを伝えたが、3日の『ヘラルド朝日』紙は、COP15を前に、その現状について同国も「苦戦している」という内容の報告をしている。

 デンマークは、米カリフォルニアのベンチャー企業「ベタープレイス」(Better Place)と組んで、電気自動車の普及に必要な充電設備等のインフラ整備を進めている。現在の蓄電技術では、車載用のリチウムイオン電池による1回の充電で「160km」までしか走れない。しかし、ベタープレイスは、この距離制限を克服するために、充電スタンドでの電池交換方式を進めている。つまり、車載の電池とフル充電した電池とをこのスタンドで交換することで、電気自動車の走行距離を短時間で、事実上無限大にまで伸ばそうというわけだ。この試みが困難に面しているというのだ。

 上記の記事によると、デンマーク政府はこのプロジェクトのために、電気自動車にかかる税金を、1台4万ドルまで無税にする措置をとっている。また、コペンハーゲンの中心街では、電気自動車の駐車料金はゼロにしているという。こういう優遇措置があっても、市民の間には懐疑的な意見が多いらしい。というのは、充電スタンドの有無によって、自分の行動が制約されるという心理的不安がまだ大きいからだという。

 デンマークのエネルギーは、すでに2割が風力によって供給されているが、同国政府は、全国に充電スタンドを設置するだけでなく、それらのスタンドに必要な電気を風力で供給することを考えている。これによって、車の使用が少ない夜間に風力で充電するという“炭素ゼロ”の理想的なパターンができ上がる。が、そのスタンドの設置が思うように進んでいない。

 昨年の1月、ベタープレイスのCEO、シャイ・アガシー氏(Shai Agassi)は、2010年には充電スタンドを10万カ所にし、電気自動車は6~7千台になると予測していたが、現時点では同社製の車は1台も走っておらず、スタンドの数は55カ所に止まっているという。主な原因は、スタンドの建設コストらしい。1カ所の建設費は100万ドルに近く、さらに車種ごとに異なる電池を用意しなければならないからだ。つまり、車載用充電地の規格がまだ不統一なのだ。同社の方式に沿った電気自動車を製造するとしているのは、今のところルノー=ニッサン社だけらしい。そして、同国で登録済みの電気自動車の数は、まだ500台に満たないという。

 こういう話を聞いていると、かつてのカセット式ビデオテープの規格不統一を思い出す。ベータ方式とVHS方式をめぐって日本のメーカーが突っ張り合いをしたため、世界中が2つの規格併存となり、やがてVHSが勝利した。ビデオテープならば単なる企業間のシェア争いですむが、地球全体の緊急要請である温暖化抑制のための新技術が、企業間競走によって普及が妨げられることは、決して好ましいことではない。世界の自動車メーカーは何とか努力して、早期に充電池の規格統一をなしとげてほしい。
 
 谷口 雅宣

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