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2009年10月12日

グーグルのブック検索 (2)

 グーグル自身は、著作(権)者のこういう心配を意識していて、そうならない方法をいろいろ工夫しているようではある。例えば、現在の日本語のグーグル「ブック検索」では、スキャンした本の全部ではなく、一部が表示される。また、著作(権)者が同意しない本については、検索してもまったく表示されないか、あるいは表示される箇所がきわめて限定的だ。そして、検索ページには、次のような説明文も出る--
 
「図書館プロジェクトでブック検索に登録された書籍の場合は、著作権の状況によって閲覧できる範囲が決められています。Google では、著作権法および著者の多大な努力を尊重しています。著作権が失効しており、著作権保護の対象とならない場合は、書籍全体をブラウズしたり、ダウンロードして読んだりすることができます。著作権で保護されており、出版社または著者がパートナー プログラムに参加していない場合は、図書カード カタログのように、書籍の基本情報と、場合によっては書籍の抜粋、つまり検索キーワードの前後の文章が表示されます。」

 それは確かにその通りなのだが、これは前回の本欄で触れたアメリカでの“和解”が成立する前の、旧バージョンでのサービスのことだ。今後、日本も含めて世界的に実施される新バージョンの「ブック検索」では、1冊の本の全文検索が基本となるだろう。この場合、著作(権)者は、グーグルの新サービスに「登録しない」ことも選べる。が、現在のようにインターネット検索サービスがグーグルによって寡占状態にある場合、そこに登録しないことは、著作物や著作者が世界的に認知されないことになる。だから、著作(権)者は、自分の著作物が事実上、世界的に葬り去られるか、それともグーグルを信頼して全内容の同一性や権利保全の完全性を任せるか、の二者択一を迫られることになるのではないか。
 
 こういうサービスが、国際機関のような公的な機関がやるのであれば、それはむしろ望ましいことだ。が、ご存じのように、グーグルはアメリカの一私企業であり、現に自ら手掛けた検索サービスから莫大な広告収入を得ている。そして、広告の値段は、検索の結果、パソコンの画面に表示される該当書籍の順位と関連させて決まるのである。そういう私企業1社に、全世界の書籍の全文検索と表示順位の決定を任せてしまうリスクは、相当大きいと思う。ここのところが、私にとって最もひっかかる点だ。
 
 グーグルの共同設立者の1人であるセルゲイ・ブリン氏(Sergey Brin)は、10~11日付の『ヘラルド朝日』紙に論説を寄せて、同社のブック検索の目的について述べている。それによると、このサービスの最大の目的は、図書館や古本屋の本棚に埋もれてしまっている絶版本などの古い書籍を、全世界の読書人の前に提供するとともに、それらの書籍の権利者に対して相応の対価を支払うことだという。私は、この目的については異議を差し挟まない。私の心配は、上にも書いたように、この業界で事実上、独占的力をもつ一私企業が、世界中の全書籍の内容を入手し、それを全世界に提供する際に、公平中立の立場からできるとは考えられないという点である。
 
 ブリン氏は、グーグルがこの分野で成功すれば、他社が市場に参入して競争が行われること、また、著作(権)者はグーグルへの書籍の登録をいつでも取り消すことができることなどを挙げて、自らの目的の正当性を訴えている。が、これらの主張は、本質的には「競争によって市場が選択するものが残る」という自由競争の論理であり、公平性への疑問に対する反論になっていない。インターネット検索の市場がグーグルにきわめて有利な方向に“歪んでいる”現状にあっては、公平性を保証するための説得力ある方策を提示してほしい。

 谷口 雅宣

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コメント

合掌ありがとうございます。

グーグルは公平性において、第三者の公的機関の介入を受けた方が良いかもしれませんね。
彼らはすばらしい技術集団ですが、
正しく用いる、ということについては議論を待たず、サービスインした後に関係諸団体との調整を取る、という方法をとっているように思います。
まぁインターネットにおいてはそれもひとつの方法かもしれませんが。

私のようなサービス利用者は、二次利用に対するモラル向上が求められると思いました。
手軽に入る情報は、
そのぶん「軽く」扱ってしまう傾向がありますので、
こういったサービスを利用する際には、
心して、間違いのないように利用していきたいと思いました。


グーグルブック検索の和解案を受けて、国会図書館も書籍の電子配信を考えているという記事がありました。下記にリンクを張っておきます。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0910/15/news020.html

投稿: 古谷伸 | 2009年10月15日 15:13

古谷さん、
 コメント、ありがとうございます。今後、利用者には便利になる代りに、著作権者には厳しい時代になるかもしれませんね。それから、国会図書館の情報にも感謝します。

投稿: 谷口 | 2009年10月15日 17:53

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