« 鳩山論文の不思議 (2) | トップページ | 「温暖化ガス25%減」を貫こう »

2009年9月 4日

アメリカは意外と冷静

 前回も触れたように、次期首相の鳩山由紀夫氏の署名入り“寄稿文”が注目されているが、これに対する冷静な見方もアメリカにはある。4日付の『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』(IHT)は、鳩山-オバマ電話会談を取り上げ、鳩山氏が「我々は日米同盟が日本の外交政策の基盤(foundation)であることを再確認した」と述べたと伝えた。この記事には、縦15cm、横22.5cmの大きな写真がついていて、そこでは鳩山氏がアメリカのジョン・ルース駐日大使と立った姿勢で語り合っている。2人の間にはアメフト選手が被るヘルメットがあって、その説明には「2人が持つのは両者がともに学んだスタンフォード大学のフットボール用のもの」とある。この会談は鳩山-オバマ電話会談の数時間後に行われたらしく、ここでも鳩山氏は「日米同盟は日本の外交政策の基本(basis)」だと伝えたという。

 また、アメリカの時事週刊誌『Newsweek』は、ウェブサイト限定の記事を2日付で掲載し、それに「恐怖は無用。日米摩擦の可能性は興奮しすぎ」という題をつけて問題の沈静化を図っている。この記事では、「鳩山氏は過激派などでは全くない」とし、騒動のもととなった論文は「もっと長い日本語の論文から大意を無視して引用したもの」だと述べ、論文の目的は「グローバリゼーションの闇部に目を向けさせるためで、その全体を否定することではない」ときちんと解説している。そして、日本語の原文には「今日我々は経済のグローバル化を避けることはできない」と書いてある、と付け加えている。
 
 さらにこの記事は、鳩山氏は決して「反米」ではないとし、同氏が若い頃、学者を目指しながら政治に魅力を感じたのは、スタンフォード大学の学生だった1976年の独立記念日(つまり、独立200年祭)に、アメリカの愛国心の高揚に触れてからだと説明している。また、鳩山氏は1998年に、ある会合で自分は「アメリカの大ファンだ」と言ったとも書いている。そして最近でも、同氏はオバマ氏に早期から注目し、自分の今回の選挙でもオバマ流の「チェンジ!」を強調し、選挙で大勝直後には、オバマ大統領に従って地球規模の「対話と協力」を進めたいと述べた、などと随分詳しく解説している。
 
 また、鳩山氏が「反米」ではなくても、「より対等な」対米関係を目指している点についても、同誌は表現が抽象的で不明確であることから誤解が生じているとする。私もこの件は、『Voice』9月号の鳩山論文をきちんと読めば、同氏のスタンスは明確だと思う。そこには、こう書いてある--
 
「もちろん、日米安保体制は、今後も日本外交の基軸でありつづけるし、それは紛れもなく重要な日本外交の柱である。同時にわれわれは、アジアに位置する国家としてのアイデンティティを忘れてはならないだろう。経済成長の活力に溢れ、ますます緊密に結びつきつつある東アジア地域を、わが国が生きていく基本的な生活空間と捉えて、この地域に安定した経済協力と安全保障の枠組みを創る努力を続けなくてはならない」(p.139)

 『Newsweek』の記事では、これに関して民主党政権の外相候補とされている岡田克也氏の言葉を引用し、この「対等」の意味を次のように解説する--

「通商・経済面での交渉では、日米間では長らく対等の関係が続いていて、双方が率直な意見表明を行ってきた。しかし、安全保障の面では、そうでない」。だから、民主党は日米同盟を重視する点は変わらないが、それと同時に、日本がアメリカの“膝の上の犬”(lapdog)であり続けることを欲しないのだ。

 この“膝の上の犬”が何を意味するかというと、それはイラク戦争の盲目的追認であり、米海兵隊8千人のグァムへの移転に、日本の納税者が60億ドル(5,700億円)を支払う合意などを指す、としている。そして、選挙公約は結局、国内向けだから、北朝鮮の核外交や中国の軍備増強などの厳しい国際関係の現実に直面すれば、民主党政権も“理想”を“現実”に合わせる方針転換を余儀なくされるだろう、と記事を締めくくっている。私も、そうなると思うのだ。
 
 谷口 雅宣

 

|

« 鳩山論文の不思議 (2) | トップページ | 「温暖化ガス25%減」を貫こう »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 鳩山論文の不思議 (2) | トップページ | 「温暖化ガス25%減」を貫こう »