「生命は不死」は危険な教え?
9月27日には、福岡教区での生長の家講習会が行われ、光回線を使った4会場同時開催という形式で、合計1万人を超える大勢の受講者が参加してくださった。講習会では午前中の私の講話に対する質問を受け付けているが、今回は小学生から高齢者までのあらゆる年齢層の受講者から、質問用紙18枚が届けられ、とてもバラエティーに富んだ内容だった。が、時間の関係から、すべての質問にはお答えできなかった。そこで、未回答に終った質問の中から重要と思われるものを、本欄で取り上げて回答しよう。
久留米市に住む52歳の男性の受講者は、「人間の生命は不死」の考え方と「万教帰一」についての説明を聞いて次のような質問を寄せられた--
「生長の家の万教帰一というのは非常に感銘を受けるところですが、生き通しの命の教えは、イスラムテロ組織タリバンの“死して来世で幸福となる”という考え方で、死を恐れぬ危険があります。又これは、太平洋戦争の特攻隊の精神にもつながります。もっと命の重さ、人間のすばらしさ(仮の姿の現世でも)を教えるべきと思いますが、いかがでしょうか?」
上の質問には、この質問者の言いたいことが一部省略されているように思う。それを補うと、恐らくこういうことだ--すべての宗教の神髄は一つであるとする「万教帰一」の考え方には共鳴できるところはあるが、この「一つ」とされる共通の教えの中に「人間の生命は生き通しである」というものを含めるのは、危険だと思う。なぜなら、イスラーム過激派のメンバーは、現世を否定して来世の幸福を成就するために自爆テロを行うのだから、「生命は不死」の教えはそれを正当化してしまう。また、特攻隊の場合も、「生命(魂)の不死」を信じて「靖国神社で会おう!」と誓った若者が、現世を犠牲にして自殺攻撃に突き進んだのである。そういう現世軽視の考え方よりも、現世での生命尊重や、今生の人生のすばらしさを宗教は強調すべきと思うが、どう考えるか?
私は、「生命は不死」の教えが直ちに「自爆テロ」や「現世軽視」につながるとは思えない。それどころか、「生命は不死」という前提からは、いろいろな教えを導き出すことができるのだ。例えば、これに「因果の法則」を組み合わせて、現世で犯した罪は来世にも引き継がれるのだから、罪のない多くの人々を傷つけ、殺した悪業は、来世における幸福ではなく、悪果となって現れる、と説くことができる。また、すべての人々の「生命は不死」なのだから、今、目の前に“敵”として現れている人も、前世においては“味方”であったかもしれず、“恩人”だったかもしれない。だから、殺すなどもってのほかだ、とも説くことができる。さらに、「生命は不死」なのだから、現世においてすべてのものを得ようと焦る必要はない。自分のことだけでなく、他人のために何かすべきである、と諭すこともできるだろう。つまり、「生命は不死」の教えは、「現世軽視」や「他人軽視」の考え方と直接、論理的につながってはいないのである。
それがつながって見えるのは、なぜだろう? その理由は、現世を否定的にとらえるからだ。特に、目の前にいる“敵”が自分をはるかに凌駕する力をもっていると考える場合、現世軽視、現世否定の傾向が強まると思われる。自爆テロリストの場合は、敵が多く、汚辱したこの世界は否定すべきものだと考えて、テロ行為に走るのである。特別攻撃隊の場合も、戦局が日本に不利なことが明確になってから登場した戦法である。つまり、敵の力を思い知ってから、やむを得ないギリギリの戦法として採用された--ということは、現世を否定的にとらえて考えついた手段なのだ。
これに対し、生長の家の教えでは、現世を「現象世界」と呼んではいても、否定的にとらえないのである。それは「日時計主義」の言葉を思い出してもらえば明らかだろう。我々は、現世を「神の子の実相を表現する場」として極めて肯定的にとらえる。また、“悪”や“敵”は実相においては存在しないと考える。だから、現世において“悪”や“敵”が現れたように見えても、それらは「心の影である」として存在を否定してしまう。したがって、「生命は不死」の教えは、生長の家においては「自爆テロ」や「現世軽視」に結びつくことはないのである。
谷口 雅宣
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
今リアルタイムで起こっていることを、教えに照らしてどう考えるか?雅宣先生のご文章を理解し自分の中で消化したくて、ここぞと思うときは印刷しています。ところが何日の分を取りだそうと思っても、うまくそこだけ印刷できません。大変虫のよいお願いなのですが、その日の分を印刷できるようにはできないのでしょうか?
投稿: 高橋 久代 | 2009年9月29日 22:47
この質問者の誤解はこの御解答で本人が見ておられるかどうかは分かりませんが解けたものと思います、イスラム過激派の人達が何故自爆テロを繰り返すのか?の本当の理由(生命不死の教えが原因と言う単純なものではない)が分かればこの様な疑問は湧かないのではないかと考えます。
投稿: 尾窪勝磨 | 2009年9月30日 12:47
高橋さん、
質問の内容がいま一つ明らかでないのですが、「ある特定の日付のブログだけを印刷したい」ということでしょうか? もしそうなら、画面に一度、印刷したい日のブログを出し、そこの欄の下にある「コメント」の文字をクリックすれば、その日だけのブログがコメントと共に画面に表示されるはずです。その後に、ブラウザーの「印刷」機能を使うのではどうでしょうか?
投稿: 谷口 | 2009年9月30日 22:45
雅宣先生
「ある特定の日のブログを印刷したい」の質問をさせていただいた高橋です。コメントをクリックするなど全く思いもよりませんでした。実行してみたらできました。このような質問にもお答え下さいまして、本当にありがとうございます。
投稿: 高橋久代 | 2009年10月 1日 20:17
Ms. Takahashi,
It's my pleasure. Glad you succeeded.
投稿: 谷口 | 2009年10月 3日 22:50