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2009年9月 7日

「温暖化ガス25%減」を貫こう

 民主党の鳩山由紀夫代表が、日本の温室効果ガス排出を「1990年比で25%減」らすとの2020年までの中期目標を宣言した。この数字は、民主党の選挙公約にあったものと変わらないが、これを掲げる前提として「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意」を条件とした点で、より現実的となっている。分かりやすく言い直せば、「今後の交渉で、アメリカを初め、中国やインドなどの温暖化ガス主要排出国が、自ら意欲的な削減目標を設定した場合、日本もこのような規模で温暖化抑制に貢献する」という態度を明確にしたのだ。総選挙後、次期首相となる鳩山氏がこう宣言したことで、麻生首相が6月に表明した「2005年比15%減」(1990年比8%減)の政府目標は事実上、変更されたことになる。都内で行われた「朝日地球環境フォーラム2009」(朝日新聞社主催)での講演で発表したもの。

 私は、同代表が選挙公約通りに、野心的な温室効果ガス削減目標を明確化したことを大いに歓迎する。また、「政治の意思として、あらゆる政策を総動員して実現をめざす」との決意表明も清々しい。ただし、これはまだ“大きなアドバルーン”の段階であるから、それを現実の政策に反映させることは簡単でなく、経済界からの反対があり、時間もかかるに違いない。が、日本の首相(候補)としては近年に珍しい明確な態度表明であり、方向性も間違っていないから、国民として今後、このアドバルーンが落ちてしまわないように、温暖化ガス排出削減に引き続き努力していきたい。

 今回の総選挙のみならず、選挙公約というものは一般に“人気取り”を目的として実質を伴わないものが多い。だから、選挙後に政治・経済の現実に直面し、知らぬ間に“看板を下ろす”ことになったり、下ろさなくても“羊頭狗肉”の政策を実行したりするケースは少なくない。しかし、「地球温暖化抑制」の目標は、国民のためにも、国のためにも、国際平和のためにも、そして地球生命全体のためにも必要不可欠のものである。これが「家計」や「年間所得」や「景気」や「業界」のために、一時的にはマイナスの効果をもたらすことがあっても、国政の中心にある人は看板を掲げ続け、その示す方向に制度を改革し、人材や資源の再分配を行い、国民精神を鼓舞しながら進み続ける必要がある。鳩山氏がそのことを指して「あらゆる政策を総動員」すると言ったのならば、拍手を送りたいのである。また、この大きな目的達成のためには、人気取り政策の一部を(例えば、高速道路無料化政策を)下ろす勇気も必要である。

 『朝日新聞』は9月6日の第1面で、民主党の高速道路無料化の公約の元となったと思われる経済効果の試算が、国土交通省で2年前に行われていたことを報じている。その試算によると、経済効果は高速道路の渋滞増加などで年間「-2.1兆円」になるものの、一般道の渋滞緩和で「+4.8兆円」が見込まれ、差し引きで「2.7兆円」の経済効果が新たに生まれるという。しかし、CO2の排出量がどう変化するかは部分的試算しかしておらず、一般道の渋滞緩和により「1.8%(310万トン)減」という数字があるだけだ。しかし、政府が実際に行った休日の高速料金の「上限千円化」の経験から分かるように、高速道路上の渋滞によってもCO2の排出量が増えることは明白である。こういう細かい点も加えた本格的な試算を行うことにより、高速無料化によってCO2排出量の増加が予想されるならば(私はきっと増加すると思うが)、この時代遅れの人気取り政策をとり下げてほしいのである。国民もきっと納得してくれるに違いない。
 
 谷口 雅宣
 

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コメント

高速道路無料化を歓迎しそうな私たち主婦の友達の間でも、「無料化は絶対よくない。財源だって心配だし、せっかく安易に車にのることを控える風潮が定着しつつあるのに。」と話しています。高速道路無料化を取り下げても、きっと国民は納得すると思います。

投稿: 武内孝子 | 2009年9月 8日 21:23

 鳩山由紀夫氏には温室効果ガス削減のため最大限の努力を行っていただきたいと思います。
 またシロウト考えかも知れませんが、温室効果ガス削減のために寄与する企業が成長することで景気も多少良くなると思います。
 次に、高速無料化等の人気とり施策は止めるべきと私も思います。(高速を無料化してもそのシワ寄せは何処かに来ると考えられます)
 施策はデスクワークで考えて、かつ、それを実行する現場のこともよく検討して決定されるべきです。地球温暖化防止のための施策もそのような過程を経て決定されたと思いますが、何となくかけ声だけで終わっている部分もあると思います。(全部ではないですが)
 地球温暖化防止行動を執ることの重要性をよく認識させる手段として学校教育の場で教えることが多くの人々の意識改革を行う一助になると思います。
 

投稿: 志村 | 2009年9月 8日 21:35

私も高速道路無料化には反対です。せっかくCO2削減を打ち出してるのにそれに逆行する形になるからです。むしろ高速道路通行料金を高めに設定し、全国一律料金にした方がいいと思います。また優良ドライバーの人をに対して国をあげての優遇対策をした方がいいと思いますが………

投稿: mayumi | 2009年9月 9日 09:37

谷口 雅宣 先生

 私も、高速道路無料化の政策が取り下げられるなら、大いに納得できる国民の一人であります。
 民主党の鳩山由紀夫代表は、「政治の意思として、あらゆる政策を総動員して(温室効果ガス削減目標の)実現をめざす」と仰られました。果たして、高速道路無料化の政策が温室効果ガス削減の目標に一躍を担ってくれるのでしょうか。
 そのことについての私の思索を述べさせていただきます。
 私の所属している部署で業務として毎年8月に作成している地域別の人口数一覧表で分ったことなのですが、いわゆる都会と言われるところと地方の人口格差が年々広がっている傾向があります。原因としてはいろいろ考えられるのですが、新幹線や高速道路が発達してきたこともその理由の一つに挙げられるのではないかと思っております。
 高度経済成長の頃、当時、首相であった田中角栄氏は、“日本列島改造論”の名のもとに、地元である新潟を始め日本全国に、新幹線と道路を張り巡らせました。その後、インフラの整備は進み、目まぐるしい勢いで交通の便がよくなっていきました。
 たぶん地方の人にとっては新幹線と高速道路が出来れば地域が活性化すると希望をもっていたのでしょうが、結果として今現在、ストロー効果で衰退してしまっているという逆現象が起こっているようです。
 つまり、日本全土の新幹線と高速道路網が整備されたことで、逆に大都市への人口集中が加速されるようになってしまったようで、極端に言えば日本全土が東京などの大都市の郊外になってしまったといっても過言ではないと思うのです。
 ここ原宿(職場)を歩いていても分るのですが、街は若い人で溢れかえっているのに、一歩地方に行きますと駅前はシャッター通り化してしまって駅前商店街などは見る影もなく寂しいものです。買い物などは、郊外に出来た巨大ショッピングモールに車で行ったり、また、新幹線や高速道路を利用して東京に出てくるのでしょう。
 道路の整備など、効率さや便利さなどを追求したことが、返って地方の過疎化をもたらしてしまったのではないでしょうか。
 このうえに、高速道路を無料化してしまったら、この先どうなってしまうのでしょうか。こう考えると、高速道路の無料化は今、民主党が掲げている地方分権の政策にも反することになると思います。
 新幹線と高速道路は出来てしまっているので今更どうにもなりませんが、CO2排出量削減のためにも、地方分権の促進のためにも、今一度、高速道路の無料化の政策実現は考え直していただきたいところです。
 そのうえで次期政府に提案したいことは、車なしでも快適な生活が出来る環境にやさしい街づくりです。
 もうすでに欧米の各地で、LRT導入による地方再生が成功しているようで、その事例が載っているブログをリサーチしましたので、紹介させていただきます。

http://www.sunloft.co.jp/gallery/lrt/menu.htm

 最後に、先生のブログに対しての書き込みなのに、先生に対して投稿させていただいているのか、次期政府に対して提案しているのか、意図がはっきりしない文章になってしまいましたが、ご勘弁願いますm(_ _)m             楠本忠正拝

投稿: 楠本忠正 | 2009年9月 9日 14:08

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