« 『産経新聞』は大丈夫か? | トップページ | キノコの神さま (3) »

2009年9月25日

キノコの神さま (2)

 そんな時に、いつものようにキノコを探して林の中を歩いていた泰二は、直径40センチほどの、少し潰れた半球形の岩が足元にあるのに気がついた。角度を変えて見ると、ナポレオンの被っていた帽子のようにも見える。そして、何よりもキノコの傘のように見えるのである。もちろん、そんな巨大なキノコなど地上に存在しないだろう。が、ある程度の大きさがないと「神さま」という感じがしないから、キノコの神さまとして拝むにはもってこいの大きさだ、と彼は思った。

Mushgod01  そう思いついた泰二の目は、その巨大キノコの傘を載せる“軸”になるような岩をもう探していた。するとすぐそばに、角が丸まった台形の岩があり、傘が載りそうである。抱え上げてみると、ちゃんと載った。しかし、キノコというよりは、ナポレオン帽を被った子どものようだ。が、それもいいではないか、と泰二は思った。イグチ科のキノコの中には、軸の太いヤマドリタケとか、アカジコウなどがあるし、フウセンタケやオオツガタケ、それにイタリア料理で有名なポルチーニ茸も軸が太いのが特徴だ。
「よし、これでキノコの神さまになる!」
 と泰二は思った。
 距離をおいてそれを眺めてみると、コミカルでなかなかいい。キノコは、このコミカルな点が魅力の1つなのだ。が、何か片側に傾いているような気がする。バランスをとるためには、“相棒”を脇に添えるのはどうだろうか……。
 
 泰二は、周囲の林の中を歩き回った。すると、ナポレオン帽よりサイズはひと回り小さいが、円盤状の小岩を見つけることができた。八ヶ岳南麓のこの付近の林は、成層火山として形成された地質時代からの岩石が、案外多く表土からも顔を出している。その中には、角張った形のものも多くあるのである。だから、泰二が円盤状の岩を支える“軸”用の岩を見つけ出すのに、そう長くはかからなかった。ただ、持ち上げて運べる大きさではなかったから、林の中の斜面を転がすようにして運ぶのに少し苦労した。
 
 こうして、泰二の山荘の裏山には2体の「キノコの神さま」が立った。たわいのない“大人の遊び”のようであったが、彼の心の中には、自分と山の自然とを結びつける“錘”が1つできたような気がした。そして何となく、10月には周囲にたくさんキノコが出て、収穫できるような感じがしてくるのだった。
「それは迷信だぞ……」
 と、泰二の中の“科学者”は注意を喚起するのだが、もう一人の泰二は、「楽しい迷信じゃないか」と答えて譲ろうとしなかった。
 
 谷口 雅宣
 

|

« 『産経新聞』は大丈夫か? | トップページ | キノコの神さま (3) »

コメント

ありがとうございます。もっと続くのでしょうか。楽しみにしています。(*≧m≦*)

投稿: 奥田 健介 | 2009年9月27日 15:14

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 『産経新聞』は大丈夫か? | トップページ | キノコの神さま (3) »