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2009年7月11日

外交機密の報道姿勢

 6月30日7月3日の本欄に、戦後日本の外交政策の“柱”の1つとされてきた「非核3原則」なるものが、実は「2原則」だったという元外務事務次官の証言について書いた。私の論旨は「施行から30年もたったのだから、いいかげんに本当のことを言おう」というものである。『産経新聞』は、2日の「産経抄」で「外交にウソはつきもので、正直すぎては国が滅びる」という粗雑な議論を展開し、本件を無視しようとしたかに見えた。が、このところ反省もあったのか、“後追い取材”をしてくれている。
 
『産経』は10日付の紙面で、9日に都内で開かれた討論会での自民党の山崎拓氏(外交調査会会長)の発言を、記事にした。同氏は、核搭載の米艦船の日本への寄港について「北朝鮮の核開発を阻止し、朝鮮半島の非核化を実現する上で、米国の核抑止力として、そのような行動は容認されてしかるべきだ」と述べたそうだ。これは、「非核3原則」のうち「持ち込ませず」という(有名無実の)看板をもう降ろそうという意見である。まあ、山崎氏の持論なのだろうが、自民党の外交調査会長としては、むしろ「前からある核持ち込みの密約は、もう大っぴらにされてしかるべきだ」ぐらいの発言をしてほしかった。

 同紙はさらに11日の紙面で、自民党の河野太郎氏(衆院外務委員長)が問題発言をした元外務事務次官(村田良平氏)から聞き取り調査を行ったことを報じている。それによると、河野氏は「村田氏の証言から密約はあったと判断した」という。そして、「外務委員会では今後“密約はない”との答弁の繰り返しは認めない」と、政府の答弁の撤回を求める意向を示したらしい。村田氏の証言の内容は、河野氏が週明けにも詳しく発表するようだが、記事によると、それは『産経』以外の各紙がすでに報道したものと変わらないようだ。この記事を書いたことで、『産経』は本件について事実上、各紙と同一レベルに並んだことになる。『朝日』の“後追い”をするのは、さぞ口惜しかったろう。
 
 一方、本件で先を走る『朝日』は、10日の紙面でさらに衝撃的なことを報じた。それは、問題の核持ち込みの“密約”と関連した文書を、外務省幹部が2001年の情報公開法施行前に廃棄するように指示していた、というのである。この記事の取材源は「複数の元政府高官」と「元外務省幹部」であり、それぞれが匿名を条件に証言したという。ただ、この情報の確度は100%とは言えず、証言のしかたも「……と聞いている」という伝聞の形式であったり、「破棄された可能性が高い」とか「極秘に保管されている可能性は残っていると思う」という表現で証言されている。
 
 さらに『朝日』は11日の社会面と社説でもこの件を取り上げ、これらの外務省幹部の行為は、日本の外交史の検証を不可能にする背信的行為であり、民主主義の基本を無視していると批判している。社説から正確に引用すると--

「国益がからむ外国政府との交渉で密約が必要だったとしても、それは後年、国民に公開し、妥当性について説明するのが政府の責任であるはずだ」
「主権者である国民に対して、政府が重大な事実を隠し、その証拠も処分してしまう。これではとても民主主義とは言えないではないか」

Nonukes  私は、この2点について全く同感である。これらの点で『産経』が政府や外務省に対して何の発言もしないことは、『朝日』に抜かれた口惜しさを考慮しても、ジャーナリズムとしては奇異な態度だと私は思う。
 
 今日は、生長の家の講習会のために鳥取県米子市に来ているが、夕方、宿舎のホテルの近くにある米子市役所付近を散歩した。土曜日だから役所は閉まっており、人影はほとんどなかった。と、静まり返ったその正面広場に高々と立っている看板が目についた。「非核平和宣言都市 米子市」と縦に大きく書いてある。これと似た宣言をしている都市や県が日本にはもっとあるが、今回の“非核2原則の密約”のことを思うと、民主主義は「宣言だけでは守れない」ことを強く感じるのである。
 
 谷口 雅宣

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コメント

 非核2原則の密約が暴露されつつあるのは良いことと思います。
 そのことが国民間において徹底的に議論され現時点において日本国に相応しい形が定着するのが良いと思います。
 本当のことが国民に伝えられていないということは、戦争中と同じ体質がややあるのではないか、と思いました。
 タテマエと本音が違うという状態に、もうそろそろ終止符をうつべきと思います。
 

投稿: 志村 | 2009年7月12日 22:29

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