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2009年7月 3日

7月2日の「産経抄」

 6月30日の本欄で、自民党政府の長年の重要政策とされてきた「非核3原則」なるものが、実は「2原則」に過ぎなかったとの新聞各紙の報道を取り上げ、「ウソをつくのはもうやめよう」と書いたが、2日の『産経新聞』は、国家の機密保護のためにはウソもやむを得ないし、「正義は国を滅ぼす」と「産経抄」で述べている。まさか本欄に向かっての発言ではないだろうが、ジャーナリズムに籍を置いたものとしては看過できないので、ひと言述べさせていただく。
 
 外交に機密事項があるのは当り前、と私は書いた。しかし、そのことと、政府が「機密事項はない」と国民に向かってウソをつき続けることとは、まったく性質が違う。今回の問題は、元外務次官が「核持ち込みの密約があった」と認めたこと自体がニュースなのではなく、(これは私の考えだが)現在の内閣官房長官が「密約はないというのが歴代の政府の立場なので、ないというほか仕方がない」などと、バカなウソをつき続けていることなのだ。しかし、「産経抄」はこう書くのだーー
 
▼密約の存在を否定する政府を、「嘘つき」と非難するのはたやすい。しかし、国家の安全保障に関するやむを得ない機密は、どこの国にも存在する。それを一切認めないという姿勢は、山本(夏彦)の代表的な名言につながる。「正義は国を滅ぼす」▼

 何か支離滅裂な論理のように、私には感じられる。自民党政府は、1967年12月に「非核3原則」を方針として発表し、それを“堅持”するのが日本の外交政策だ、と今日まで言い続けているのだ。冷戦時代においては、日本は国家防衛の基本戦略として「アメリカの核の傘に依存する」との方針を掲げ、国民の大半もそれを支持していた。が、冷戦後の現在は、ソ連の後継国であるロシアや、中国の持つ核兵器よりも、北朝鮮やその他のテロ集団がもつ核兵器の方が日本の安全にとってより大きな脅威なのである。そういう大きな時代の変化、国際情勢の変化の中で、大方の専門家がウソだと分かっている「非核3原則」なるものを堅持し続けることは政治家として「愚か」であると同時に、国民に対して「不誠実」であり、「国益」にも反する、と私は思う。
 
 また、上に「産経抄」から引用したような言葉は、政府の高官の発言ならいい。なぜなら、この文は事実上、「核の持ち込みがあるかどうかは機密事項である」と言っているのだから、「機密事項はある」ことを認めているのだ。しかし、官房長官は今回も「機密(密約)はない」と発言し、ウソを重ねた。この場合、「機密がある」というのが真実であり、「機密はない」というのはウソである。これらのことを全く問題にしないで「取るに足らない出来事」と評価するのは、ジャーナリズムとしての役割を忘却した態度ではないだろうか。歴代の政府が採用してきた外交方針を、単に「外交には機密がある」という理由だけで擁護し続けることがジャーナリズムの使命ではあるまい。

 外交や国際政治には、国民の目から一時的に隠さなければならないことはある。が、30年もの間隠すことがあってはならない。そういう隠蔽体質の権力が長く政権の座にあるときに、「真実を言え」というのがジャーナリストであり、言わないときには自ら危険を冒してでも「真実を報道する」のがジャーナリストである。28年前、私にそれを教えてくれた『産経新聞』が、今日まるで“御用新聞”のようなことを書くのが悲しくてならない。
 
 谷口 雅宣

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コメント

単純に良く分からない事があります、
元外務次官が何故今頃あんな発言をしたのか?内閣官房長官は何故否定しながら否定になっていない様な発言をするのか?認めたらどうなるのか?非核三原則は「国益」に反するのか?等々です、
もし現在非核二原則が国際社会にとっても日本にとっても様々な観点から「良し」とするものであれば(いくら否定されても事実上非核二原則を確信していますが)密約有無の平行論議を避けて大きな時代の変化、国際情勢の変化から非核二原則に外交政策を変換する!と発表すればウソを言い続けなくてもよいのだからその方が良いと思うのですがどんなものでしょうか、、、、。

投稿: 尾窪勝磨 | 2009年7月 4日 12:23

谷口雅宣総裁先生

ありがとうございます。

私はご指摘の「産経抄」を読みました際、「あれ?総裁先生のブログへの返事なのかな??」と一瞬思いました(笑)

>>外交や国際政治には、国民の目から一時的に隠さなければならないことはある。が、30年もの間隠すことがあってはならない。そういう隠蔽体質の権力が長く政権の座にあるときに、「真実を言え」というのがジャーナリストであり、言わないときには自ら危険を冒してでも「真実を報道する」のがジャーナリストである。

全くその通りだと考えます。

投稿: 長瀬 祐一郎 | 2009年7月 4日 13:19

ありがとうございます。


先生はもと新聞記者だけあって鋭い見方をされるようですね。(もし大人なら誰でも気づくことなら僕の勉強不足です。すみません)

いつもいろんなこと教えてくださり、先生にはとても感謝しています。

なお、先生に公約(?)した観たいといってた仮面ライダーの映画は今日、観て来ました。web版日時計日記に詳しく書きました。もちろん、先生がごらんになられたら「ええっ!」とおもわれるような作品かもしれませんが僕は面白かったです。

投稿: 奥田 健介 | 2009年7月 4日 15:55

尾窪さん、

 よい質問をしてくださいました。

>>元外務次官が何故今頃あんな発言をしたのか?内閣官房長官は何故否定しながら否定になっていない様な発言をするのか?認めたらどうなるのか?非核三原則は「国益」に反するのか? <<

 私の“憶測”はすでに書きました。繰り返すと、
①元外務次官は非核3原則は、もう国益に反すると判断したので、あえて発言したのだと私は思います。

②官房長官は、単純に「勇気がない」のだと思います。この内閣支持率の低さの中で、東京都議会選挙を目前に控え、民主党の有利が言われている中で、「これまでの自民党の政策はウソでした」などと発表すれば、選挙での敗北は確実でしょう。党益のために国益を後回しにしているのでしょう。

③私は、今日の国際情勢の中では国益とのズレが出てきていると考えます。
 

投稿: 谷口 | 2009年7月 4日 20:18

谷口雅宣総裁様
ご返答有難う御座います、
1、元外務次官は我が身を顧みず、我が身を捨てて国の為を思って発言したのであれば非核三原則と言う建前が如何に国益を損なうものであるか!と言う事を具体的に説いて貰いたい、ジャーナリストもその点を報道して欲しい、でないと一般人としましては判断しようがないのです。
2、党利党略、自己保身ではなく、只勇気がなく単純に大混乱で渦中の人になりたくないだけなのでしょうか、、もし党益の為に認められないのであれば改正するまで「密約はない!」と断言する方が良いのではないか、そして非核二原則が国益に叶うと思っておられるなら早い時機に理由を述べて外交方針の変換を発表した方がすっきりするのではないか!と考えますが、、、それとも非核三原則が国益に叶っていると考えられておられるのでしょうか、ならばそれを主張実行して欲しい!しかしそう単純なものではないのでしょう、、、それならばあやふやな答弁で憶測させる様な事は誤解に誤解を呼ぶ事になり、ますます信頼を失う事になるのではないかと思います。
3、まだこの点(国益か否か)が基礎的知識不足でよく分かりません、課題です(泣)。

投稿: 尾窪勝磨 | 2009年7月 5日 00:49

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