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2009年6月 5日

環境対応車の行方

 アメリカの“ビッグ3”の凋落を目の前にしている今、ガソリンやLPGなどの化石燃料で走る自動車の将来は見えたと言える。では、次世代の自動車の主力は何か? これに答えるのは難しい。なぜなら、「次世代」という言葉の意味する期間をどうとらえるかで、正解が変わる可能性があるからだ。恐らく「10年先」「20年先」「50年先」で、主力となるテクノロジーは大いに違ってくる。その動向は、科学技術の進展と密接に関係しているから、私のような素人には予測不可能である。そこで本欄では、「次世代」をとりあえず「10年先」と考え、自動車の技術が「どこへ向かうか」ではなく、「どこへ向かうべきか」と考えた場合の“希望的予測”を述べようと思う。
 
 私はこの場合、①電気自動車、②ハイブリッド車、③燃料電池車、というランクづけをしたい。「どこへ向かうか」と考えた場合、①と②は入れ替わると思う。が、私は、「どこへ向かうべきか」という視点から、電気自動車の開発を大いに希望するのである。理由は、電気自動車は、化石燃料を主体とした現在の自動車燃料のインフラを大きく変更する可能性があるため、人類の化石燃料依存からの脱却を加速させるのに対し、ハイブリッド車の蔓延は、化石燃料のインフラ維持を正当化するため、地球温暖化の抑制という点では効果が劣ると思うからである。
 
 むずかしい書き方をしてしまったので、具体的に説明しよう。本欄の読者ならば、現在の自動車ユーザーの好みが、GM車のような大型大馬力のものから日本車のような小型低燃費のものにシフトしている点は、すでにご存じだろう。“石油ピーク説”を支持している私としては、ガソリンの値段が将来急速に下がることはないと考えるので、自動車ユーザーの「小型低燃費志向」も当分変わらないと考える。このことは、現在のハイブリッド車人気が有力に示している。5月12日の『日経』は、軽自動車を除く国内の乗用車販売に占める環境対応車の比率が、今年度にも1割を超すと予測した。実際、ホンダのハイブリッド車の国内販売台数は、今年度は前年度比の5倍もあり、トヨタのハイブリッド車も約5割増が見込まれている。
 
 6月に入ってから、新聞各社はたて続けに“次世代”志向の環境対応車の販売計画を伝えている。まず、トップランナーのトヨタは、本欄では(2006年2月3日6月14日などで)と「充電式ハイブリッド車」呼んできたプラグインハイブリッド車(PHV)を今年末にリース販売すると発表した(4日付『産経』『朝日』など)。これに対し、電気自動車で先行する三菱自動車は、「プラグイン電気自動車(PEV)」と称する車種を、2013年までに国内で発売すると発表した。PHVとPEVの共通点は、ガソリンエンジンと電気モーターを1基ずつ搭載し、家庭用電源から充電できることだが、相違点はPHVがガソリンエンジンを動力として使うのに対し、PEVはこれを発電用に特化している点だ。小さい体躯なのに動力源を2つも搭載する理由は、現在電気容量で最高水準にあるリチウムイオン電池をもってしても、1回の充電で160kmほどしか走れないからだ。その不足分を、PHVはガソリンエンジンで直接補い、PEVはガソリンエンジンで発電することで間接的に補うという戦略である。
 
 これに対して、4日付の『産経』によると、日産自動車が来年から発売するという電気自動車(EV)は、この「充電容量の不足」の問題を画期的な方法でクリアすることを目指している。それは、電気自動車に対して現行のガソリンスタンドの役割をする充電スタンドを各地に設け、電気の残量が少なくなったEVの電池をフル充電のものと交換するシステムである。これだと、ガソリン車の給油に必要な時間と同程度の時間で電池交換ができるという。このシステムについては、昨年12月8日の本欄で少し紹介したが、米カリフォルニア州のベンチャー企業が普及を進めているもので、すでにポルトガルやイスラエルなどで実証実験が行われている。国内では、この4月から横浜市で実証実験が始まっているから、日産は来年からの販売が可能と踏んだようだ。
 
 上に書いたように、ハイブリッド方式の自動車は、PHVもPEVも化石燃料への依存を払拭できない。これらは、1台の車に2系統の動力を積むという技術的な複雑さを伴うから、居住性や運搬重量、コストの点で1系統の動力車より不利である。この点、電気モーターしか使わないEVは、シンプルな構造が保証されるから低コスト化が期待でき、不要な1系統分の容積を居住性と運搬重量に振り向けることができる。しかし、問題は電池交換のためのインフラ整備である。これを「不利」と見るか「有利」と見るかは意見の分かれるところだろう。が、私は、短期的には不利であっても、中・長期的には社会全体にとって有利だと考える。そういう意味で、今回の日産の決断を私は大いに応援したい気持である。

 私が電気自動車の将来性を買う理由は、もう1つある。それは今後、蓄電池の技術が進歩することで、2系統の動力を組み合わせて使うハイブリッド技術は不要になると思うからだ。現在のリチウムイオン電池の性能で、EVは160km走るというが、これは直線距離で東京から静岡市、諏訪市、黒磯市までだ。5月20日の『朝日』によると、日立製作所はこのほど、従来型の1.7倍の出力をもつリチウムイオン電池を開発し、2013年から量産する予定だという。この新型電池だと、単純計算では1回の充電で東京から名古屋、新潟、仙台まで行けそうだから、大抵の用途はこれで済んでしまう。だから、PHVもPEVも、あと4~5年で競争力を失う可能性があるのである。それなら、インフラ整備に多少時間とコストがかかっても、電気自動車の開発に注力するのが得策だと私は思う。
 
 谷口 雅宣

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コメント

私は今ホンダライフという軽自動車に乗っていますが、将来電気自動車タイプの軽自動車が気軽に乗れる時代が早くくればとってもいいことだと思います。また、自動車ではないが、SoftBanの携帯電話でシャープから今年の夏に太陽電池パネルを使用しての充電ができるものが発売されます。今の携帯電話の契約期間が終わったらその携帯に買い替えたいと思ってます。

投稿: 本田真弓 | 2009年6月 6日 11:41

 合掌
 ≪インフラ整備に多少時間とコストがかかっても、電気自動車の開発に注力するのが得策≫
 という意見に賛成です。
 時間がかかっても何等かのリスクを負っても良いものを選択する、という気持ちに多くの人々がなればこのことはすんなりと受け入れられると思います。が、とにかく良い結果を早く得たいと思っている人々も世間にはあると思います。その気持ちも何となくわかるような気がします。
 今、世の中では早く結果を得たいと思っている人が多いのではないかと思います。結果が早く出るものもありますが、長い年月を掛けて結果が現れるものもあります。
 短絡的に物事を考えず中長期的に物事を考えて行動する人が増えればよいと思います。

投稿: 志村 宗春 | 2009年6月 6日 17:27

私は電気自動車の時代は50-100年先と全く根拠無く言っていましたが携帯電話時代到来の予測同様にあっと言う間に来る様な予感がしています、やはり万物の動きは紆余曲折しながらも調和と生長と繁栄と進歩に向かって動いていると確信致します、もし生きていましたら今のパジェロイオが2年半ですから7-8年後にハイブリッとではなく電気自動車を狙っています、現在三菱のアイ・ミーブ(一回の充電で走行距離は160KM、時速130KM、ガソリン3分の1の費用)が補助金を受けて320万前後ですから秒進分歩の科学技術の進歩を考えれば価格、充電時間、走行距離、費用の面で飛躍的な発展を遂げるものと素人ながら変に確信しているのです、只究極のエコカーとは言いましてもまだまだ夢は水(水素を燃料に変え廃棄は酸素のみ)で走ったり、ソーラーのみで走る事が出来れば言う事は有りませんがこれは夢の又夢でしょう(ソーラーは可能かも)、又現在報道は一切ありませんが家庭での充電とソーラーの組み合わせも面白い!と勝手に考えて面白がっています。

投稿: 尾窪勝磨 | 2009年6月 6日 21:21

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